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フサフサ、モフモフ


(とりあえず、エノーミの家まで行くぞ)

「はい、了解です。それでなんですけどアクナさんはエノーミさんと知り合いなんですか?」

(そうだ。奴とはもう古い付き合いになるな。もう出会ってから300年は経つかもしれん)

 

 300年……。桁が違う。さすが異世界。さすがエルフ。さすが虎……? 

 そういえば、忘れていたけどアクナさんは虎ではないよな。きっと…。確かに外見は虎だけど、明らかにシッポが二股だし。それに人の言葉をしゃべることが出来て私は虎ですと言われても……ね~。困るわ~。



「一つだけ質問してもいいですか?」

(ああ。そう、かしこまらなくても良い。別に何でも聞いてよいぞ。なんなら我が夫との馴れ初めなど話してやろうか)



 うわ~…聞いてないし。それにアンタはどこの親父だよ。オレのアクナさん好感度レベルが急降下して行くのを感じる。それに女性だったのか。夫って言ったからそういうことだろう。いろいろと幻滅せざるを得ない。

まさか、アクナさんからこんなおやじ発言が飛び出すとは。いやおばさん発言か。ちょっとショック。今まで敬語で話していたが、これからはもっとフランクに話して行こう。オレは決意した。



「まあ、それはまたの機会でお願いします」

(なんだ、つまらんの~)


 アクナさんは本当に話す気でいたのか、たいそう残念そうに答えた。

 うわっ。あぶねー。なんとなくアクナさんのイメージが自分の中で固まってきた。けっこうめんどくさい人だ。



「それで話を戻しますけど、アクナさんは一体どういう存在なんですか? 魔物には見えないし、見た目からしてきっとすごい存在ではあると思うんですけど…」

(そうか~。コタローは我のことを知らないのだったな)


 なにかもったいぶったような口調である。正直めんどくさい。


 くそ。アクナさんめ、きっとオレのことを動揺させようとしているんだな。その手には乗ってたまるか。



「で、どうなんですか?」


 きっと、ホワイト何チャラとか、ダブルテイル何チャラとかそういう名前だろう。厨二病全開の名前が浮かんでくる。アクナさんへのイメージが一気に自分の考えを適当にしていく。



(我はな…………この世界の神だ)

「そうですか。神ですか。わかりました」

(……驚かんのか?)

「甘いですね」

 

 フッフッフ。アクナさんの驚いている表情が実に心地いい。そこのきみ~。オレがホワイト何チャラとか適当そうなものをイメージしていると思ったら大間違いだ。そんな典型的な主人公思想を抱くはずがない。普通ならこの展開、『神ですか。…………え―――!?』みたいな反応をするのがおきまりだろう。だが、その期待にこたえてやる義務はない。オレはそこまでバカではない。

 しゃべり方、性格はともかく、アクナさんと猫ちゃんから感じ取れる威圧感・オーラと言ったものは、凡人であるオレでさえもヒシヒシと感じざるを得ない。しかもしゃべれる。人間の言葉を。こんな高位な存在が神以外にいるはずがない。そう、当然の推測である。



(お主、なかなかつまらない奴だな。素直に驚いてくれればいいものを)

「まあいいじゃないですか。そういったこともたまにはありますよ」


 これでさっきの借りは返せたかな。オレは内心ほくそ笑む。


(なんかそれでいいのか複雑な気分ではあるの~)


 どうやらいまいち納得が言っていないようだ。


(まあ、いいかの。それで我の正体はこの世界を創造した神に系譜する四つの種族の一つ、白虎である)


 あらら。白虎ですか……。ホワイト何チャラもあながち間違ってはいなかったようである。


「系譜ということは神の一族と言うことですか。予想はしていましたが、やっぱりじかに聞くと驚きますね」

(全然驚いているようには見えないのだがの~。この短時間ではあるがお主を見る限りやはり賢そうじゃな)


 まさか、白虎にほめられるとは。特別何をしたわけではないのだが。最初に悪い印象を与えたくなかったのが幸いしたか。



 オレは猫ちゃん……ではなかった、虎ちゃんに近づくとできるだけゆらさないよう抱きかかえる。

 アクナさんから抱えていろと言われたからだ。一体どうするのだろうか。


(乗るのじゃ!)


 アクナさんは微かにあごを後ろにそらすと、その場に屈みこむ。


 え~……。まさか背中に乗れと言うのか。恐れおおすぎる。さきほど神であると名乗ったアクナさんに乗れとは。性格はあれだが仮にも神と言われる存在の背中に乗れるわけないだろ。


(お主いま失礼なことを考えていなかったか?)


 おっと。流石神。エスパーなみの読心術。いえいえ。シツレイナコトナンテ全然そんなこと考えていませんよ。


 実際、背中は見た目ふさふさとしていて実に乗り心地がよさそうだ。乗ってみたい。だが乗れない。自分の中での葛藤が半端ない。


(何をしておるのだ、早く乗れば良かろう)


 そう簡単に言われましても…。まあ、いっか。こんなチャンス滅多にないし。オレは意を決してアクナさんの背中にまたがる。片手で虎ちゃんを抱え、もう片方の腕でバランスをとる。


「準備OKです」

(そうか。ならしっかりつかまっておれよ)


 そう言い終わるや否や、アクナさんは一瞬で加速する。まるで木々のほうが避けているかのように無駄のない動きで疾走する。まるで走るコースがわかっているのようだ。


 速え~。

 オレは振り落とされないよう上体を前に倒し出来るだけ空気抵抗を減らす。風圧だけで簡単に吹っ飛ばされそうになる。しがみついていることだけで精いっぱいだ。にしても速い。時速にしたらどれくらいになるのだろうか。少なくとも車並みの速さはある気がする。オレよく落ちないな……。


 なんとか周りに目を向ける。コマ送りのように景色が流れていく。

 

 これは……。

ふと思った。アクナさんに乗っているこの絵。そうだ、これはまるでオレの一番のお気に入り作品、も○○け姫に出てくる山犬に乗っている主人公のようだ。主人公の少年が山犬に乗って崖を下っていく場面が思い起こされる。あのシ―ンはかっこよかった。ア○タカはこういう気分だったのかな。秘かに得をした気分になる。

まってろタタリガミ!


 一人ハイテンションになってるオレだった。


なぜかかんじにへんかんできない。

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