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第八話(完)

 その後、今回の事件はすべて明るみに出た。


 ラヴィニアが退治して官憲に突き出した男たちは、特にそのうちの一人がラヴィニアにひどく怯え、今回の悪事の全貌をすべて白状した。


 借金取りのリーダーの男は虚言による抗弁を試みたが、もとより黒に近いグレーの取り立てを繰り返していたため、調べれば調べるほど雪だるま式にボロが出てきてむしろ逆効果。


 その調査は金貸しの大本であるアーロン商会にまで及んだが、そこは狡猾な大元締めのこと、借金取りのリーダーを尻尾切りして逃げ切った。


 ただ、事態が明るみに出たことで孤児院の土地を使った商売は進められなくなり、孤児院に手出しは出来なくなったことはもとより、事業的にもそれなりの赤字を追った。

 それでも危機回避のうまい商会は、事件とその関連の事業はすっぱりと切り捨て、別の方面に力を入れている。


 いずれにせよ、孤児院が違法的な手段によって危害を負う可能性に関しては、心配しなくてよくなった。


 そして心配といえば、院長の病もユニスの神聖術による日々の治療によって五日の後には完治し、病気になる前と同じように活動ができるようになった。


 本来であれば不治の病に近く、非常に高価な特効薬がないと治癒が見込めない病気であったため、ユニスは院長やハンナから大変な感謝をされた。

 そして、その感謝をどう受け取っていいのか分からないユニスは、どうしようもなく照れた。


 それでも院長の体力の回復は今後の課題だが、「院長の完治祝い」と称してラヴィニアがたくさんのお肉と野菜とパンを買ってきて孤児院の子供たちや院長に振る舞ったことなどもあり、順調に快方へと向かっている。


 ちなみに、ラヴィニアがそのためのお金をどうやって手に入れたかと聞けば、「暇だったから」という理由で街の冒険者ギルド──モンスター退治などの依頼がある仕事斡旋所──で依頼を受けて、それをあっさり解決して得たものらしい。


 ただ、「ボクの能力もお金もボクのものだからね。こうしてみんなに振る舞うのは、ボクの気が向いたからでしかない。ボクは院長先生ほどいい人じゃないんだ」というのはラヴィニア本人の談である。


 そんなことをわざわざ言ったせいで、ラヴィニアは子供たちから「ケチ!」「ごうつくばり!」などと言われて、その子供たちは院長やハンナに叱られていたが、それもラヴィニアはあははと笑って見ていた。


 また暇といえば、ユニスは孤児院に滞在中の余暇を使って、武術の指南を希望してきたアルに剣の稽古をつけていた。


 たったの五日間ではそう上達するものでもないが、基礎的なことに関してはおおむね教え切り、あとは本人のトレーニング次第で伸びるだろうというのがユニスの見立てだった。


 ちなみにユニスはラヴィニアに、アル本人には聞こえないところで、「五年後ぐらいには相当の剣士になっているかもね。あの負けん気の強さは才能よ」などと囁いていた。


 ──そして、二人が孤児院に来て、六日目の早朝。


 寝室では、大きなベッドに子供たちと一緒に雑魚寝していたユニスとラヴィニア。

 ユニスは目を覚ますと、いつも通り自分に抱きついて眠っているラヴィニアを引きはがし、蹴り飛ばして覚醒させる。


 寝間着をはだけさせてふああっとあくびをするラヴィニアの姿を目撃して顔を赤くしたユニスは、相方から逃げるように顔を洗いに行くと、戻ってきて寝間着を脱いで下着姿になり、その上から衣服と軽装鎧、剣などを身につける。


 一方のラヴィニアは、下着姿の相棒に吸い寄せられるように再び抱きつこうとするが、それも毎朝の恒例行事としてユニスにげしげしと蹴り飛ばされ、やむなく自分も着替え始める。


 そして出掛けの準備が整うと、二人は旅のマントを身につけ荷物を背負い、孤児院から旅立った。


 昨日のパーティで満腹になった子供たちは、まだぐっすりと眠っていて──

 ただ院長とハンナ、アルの三人だけは起きていて、手を振って二人を見送った。


 ユニスとラヴィニアの二人も、孤児院に向かって手を振り、立ち去っていった。




 そうして、二人はまた旅を始める。

 今日は東へ、明日は西へ。


 次にはどんな出来事が待ち受けているのか。

 それは無双の聖騎士にも、偉大な魔法使いにも分からないことなのだ。


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