38 カロリー → イナズマ → 海外研修 →
あのエルフ戦から3日経った今でも、俺たちは忙しい日々を送っていた。
報告やらアルラウネさんの扱いに対して、ヒーロー協会や自衛隊、プロヒーローたちとの協議があったしな。
それに小柴カナタとしては作戦に未参加のため、休みにはなっていないのさ。だから普通に学園に通っていたし、2重生活の弱点をもろに喰らっていた。動画のチェックも終わり、ほぼそのまま使って良いとのことでサムネ作りなんかもあったしな。
結局反省会が開催されるのは伸び伸びになって、落ち着いた今日の昼過ぎに決定したのは今朝のこと、ということらしい。
学生でありながら作戦担当だった陣内さんも、大忙しだったようだな。
特にアルラウネさんたちも大忙しだ。
氣功が使えるようになったことと、群体であることで、精神汚染を排除するために世界中に派遣されることになった。
もはやホワイトの中のホワイトエネミーだろう!
彼女たちの協力もあるし、全人類氣功使い化計画が進んでいるといっても過言じゃあないぜ。
「ただいまー」
「おかえり、カグヤ」
「そこでちょうど2人と会ったよ」
「お邪魔します」「お邪魔する」
「2人もいらっしゃいと、お疲れさま、だな」
陣内さんは作戦担当だったこともあってお疲れのご様子。俺は特性スイーツである『おはぎdeダークチョコ』を贈呈した。
もちろん鳴神さんにも出すし、俺とカグヤの分もある。
「兄、これは?」
「今の俺たちに最適なスイーツさ」
チョコとあんこで心と身体の疲労を回復ッ
つまりパーフェクトおやつなのだ。
シナモンパウダーをはらりとかけた牛乳もセット!
俺は俺の完璧なおもてなしに満足した。
ナイスッ!
「えっとね? 小柴くん」
鳴神さんが言いづらそうに声をかけてきた。
「あ、すまん、苦手なものがあったかな? シナモンは聞いてからにするべきだったな。失敗だった!」
「アニキ、違うんじゃね?」
違ったらしい。
「そう。兄には反省すべき点がある」
反……省?
「俺に?」
なんだろうか。特に思い付かないが……いや、待てよ?
「そ、そうか……俺はまた相談をせずに攻撃を仕掛けてしまった」
「それ。結果的に上手くいった。でもビックリする。私にはに言っておくべき」
急に発勁流しをしてしまったからな。
しかもイナズマスーパー発勁流しグレート。
「ウチも動画見たけどエフェクトが派手だったし、ホント万能かよ発勁あきゃはははっ。あー、ガチオモシロ過ぎんだけどアニキの行動!」
「わ、笑い事じゃないよ? カグヤちゃん……はぁー、私ももっとコントロールを磨かなきゃなあ」
「ひなのパワーは私の計算以上だった。仕方ない。しかも氣功に相性がいいとは気付けない……兄しか」
「そうだよね」
「あれはまさに閃きの勝利といった瞬間だったからなあ。俺だって初めてのことだぞ?
あのハイパーイナズマ発勁流しグレートの威力は」
「兄は適当」
「別の名前だったよね?」
「ここだね」
カグヤが動画を流す。
『銀髪、なにをした?』
『雷電ハイパー発勁流しグレートEXのことですか?』
『た……ぶん、そう。いくらなんでも、100体以上のエネミーに効果が出せるとは思えない』
「正確に報告し、記録すべき。現場が混乱する」
「そうは言っても、たかが発勁のことだぞ? ヒーローの必殺技とは違うからなあ」
「小柴くんのその認識がおかしいんだけどなあ」
「とにかく兄、報告は密に。脳に焼き付けて」
「わ、分かった」
なんというプレッシャーか。まるで映画で見た武を極めた達人のような雰囲気すらあるぞ! ヒーローというだけではたどり着けない境地に、陣内さんは知略のみで到達したということ。
「俺のような煩悩だけでは到達困難な遥か高みの世界! さすがでございますお嬢様ッッ!!」
鳴神さんは頭を抱え、陣内さんはラストのおはぎdeダークチョコ食べ始め、カグヤは爆笑した。
ふむ?
「ところでさ、これ見てよ。エルフ戦の動画!」
「おおっ!?」
「凄い!」
「これは想定以上」
俺の動画はヒーロー協会公式にも上がっているが、趣味でヒーロー配信をしているものですがCHにも上げている。にもかかわらず、どちらの動画も100万再生を突破しているとは!
「協会のは解説、小柴くんのほうはリアルな現場。そんな住み分けだからかな?」
「どちらにせよ貴重な映像」
「だよね! こっちから次元の裂け目を開いてさ、異世界へ繋げちゃったんだから、ぶっちゃけあり得ないっしょ!!」
「とても大事なデータが取れた」
陣内さんが機嫌よさそうだ。
やはり未知の先を知るというのは、心が躍るよなあ。
俺も知らない能力をもっと間近で見たい!
くうぅぅぅっ、俺も分身ができればなあっ!!
「それにしてもさー、次元の裂け目を開くのって、凄いエネルギーが必要なんだね。鳴神さんの超電磁モードクラスのパワーって、なかなか出せるものじゃないっしょ?」
「確かにな。現場を支配すると言っても過言ではないほどのパワー。エネミーはどうやって得ているんだろうな?」
「そういえばそうだよね……アレになったときね? 初めての日は興奮してて気付かなかったんだけど──」
鳴神さんの超電磁モード。
実はかなりの消耗をするのそうだ。
「体重が減ったんだよ!」
と、嬉しそうに語る鳴神さんだが──
「私が気を付けるべきだった。ひな、ごめん」
──そう言って、食べかけのおはぎをグイグイ押し付けようとする陣内さん。
「い、いいよ、いいってば。こよみちゃんが食べて! ちょっ、まっ、むぐぅ!?」
「てえてえキタ!」
カグヤ、それはネットの海に流すなよ?
男子たるもの、この光景は心のフォルダに入れるよりほかない。
ヒーローの日常。
それもまた良きもの!!
「しかしヒーローの体重というのも、永遠の課題だよな」
「小柴くん? それは戦争だよ?」
空気がピリッとした。
鳴神さん、静電気が発生しているぞ!
「い、いや、しかしだな? ヒーローはハイパワーであるがゆえに、カロリーは体内にため込んでおくべきであって」
「アニキ……良くないなーソレィ」
「兄、それは正しい。バランス的に、ひなは──もう少しだけふっくら推奨。でもひな理論も理解。女子はいつだって抗う存在」
「わかる! オシャレは耐え。お菓子とかジュースは特にツライ!!」
「私は寒いほうが無理かなあ?」
うむ。
これが俺たちの守った日常というものだ。
ヒーローを追い、守った平和は格別でございますぞ!!
そんなときにヒーロー協会から支援要請が俺のスマホに届いた。なんでも、アルラウネさんたちだけでは、精神汚染の浄化ができないほど深く催眠がかかっている人たちが海外にいるらしい。
「御呼びとあらば即参上したいところではあるが……学校をどうするかという問題が浮上するな」
「どうしたの? 小柴くん」
「ああ、アストラル・バイオニクスの社員さんなんだが、アルラウネさんたちではエルフの精神汚染が解除できない人もいるらしいんだ」
「え!? アニキみたいに氣功が使えるようになったんじゃ?」
「魔力と気では効果が違う?」
「うーん……俺は魔力を扱えないしな。似た感じではあるが、やはり別物ということなのかもしれないぞ。これを見てくれ」
送られてきた動画をみんなにも見せる。そこには魔力氣功で精神浄化をするアルラウネさんが映っていた。
しかし──
『悪魔戦士よ、重度の精神汚染には、我らの氣功では足りぬということが発覚した。やはり練度の差というものはありそうだ。改めて協力の要請をする。彼らを救ってくれ。浄化できなかったものは眠らせているから、現段階で悪事を働くことはない』
俺は銀髪さんとなってアストラル・バイオニクスの社員さんを救いに行くことになるようだ。
「それで小柴くんと銀髪さんの二重生活がネックになってるんだね?」
「そういうこと。俺が学園に行かない理由付けが必要だ」
「協会からはなにか言って来てんの? アニキ」
「えー、可能な限り協力するとは書いてあるな」
「それなら簡単。両親に呼ばれたことにしてカグヤと一緒に行けば解決」
「ウチは海外研修できちゃうナイスアイデアじゃん。陣内さん☆天・才ッ☆ 」
「海外研修かあ」
うらやましそうな鳴神さんの声を聞きつつ、このありがたいアイデアをさっそくヒーロー協会に出しておいた。
よろしくご検討くださいだ。




