25 ヴィブロ・フィスト ~全人類発勁使い化計画~
相変わらずのリスナーたちだな。
配信開始しただけで大騒ぎじゃないか。
『男の影が!!』
『男っ?』
『俺というものがありながら』
「妹からのプレゼントですよ。このユニコーンどもめ! 恥を知れ愚か者!!」
カグヤからもらった指輪に気付いて、子犬のように吠えている。
『理不尽に怒られたw』
『おいおい俺たちに角なんてないぜ!』
『ないあるよ』
『ないある』
『マテマテお前ら!今重要な情報が出たぞww』
『妹がいるっ!』
『妹ちゃんもキレイ系か?』
『きっとお姉ちゃんを見て妹ちゃんは真の清楚と見た』
元気で現金なヤツらである。
「おだまりなさい! そして刮目するがいい!!」
そんなお前らに、ご褒美タイムだ!
「さあ、本日はなんと私の発勁講座を聞きつけて、熱心な生徒さんがお見えになっています!
今日の推しヒーローさんは──学生ヒーローの速水さんと倉持さんです!」
「速水リンです。よろしくね、リスナーのみんな。今日はさ、アタシの攻撃力を上げるために銀髪さんの技を盗みに来たんだ」
全然足りないからなあ、と速水さん。
「い、1年B組の倉持小梅ですッ! リンちゃんに誘われました。お邪魔します!!」
火炎系能力者の倉持さん。なんと彼女も格闘技を使うのだ!
彼女の必殺技はダイナミック・メテオ・クラッシュ・ファイブ。
通称DMC5という5連パワーボムだ。
最後の一発は高くジャンプしたあとで叩き付ける、強烈なボム系範囲攻撃だぞ!
『アセアセ小梅ちゃんかわよ』
『そっかそっか1-Bなんだね』
『うんうん』
「私も発勁は使いたいです! チョップ、ラリアット、ジャンピングニーに続く打撃技、ぜひ学ばせていただきたく参加しました!」
『アクティブな武闘派だ』
『小梅チョップはキュートな名前なのにエグイ攻撃力だけどなあ』
『個人的には投げを極めて欲しい』
小梅チョップで怯ませ、ジャンピングニーで浮かせる。そしてラリアットで運ぶコンボ技の〆に発勁を入れたいそうだ。
ううむ、想像しただけで興奮してしまうじゃあないか!
……ぅぉおおっ? カ、カッコいいな!!
「倉持さんの技は、いつかライブ配信で世界にお届けしたいですね! 華奢な身体からは、想像もできないような技の冴えと破壊力! DMC5はシューティングゲームのボムのよう。眼前の敵はなすすべもなく消え去るのだああーーーーーっっ!!」
「お、おしょれいりますっ」
「おちつけー、小梅。銀髪さんもやめたげて。それより発勁教えてよ、発勁」
『今日の被害者たちはアグレッシブだなw』
『なぜ銀髪さんに学ぼうとするのかw』
『おやめなさい』
『飛んで火にいる夏ヒーロー』
『おやめなさい』
『おやめなさい』
「速水さんはなぜ? 肘から突進するだけでだいたい解決しますのに」
「あかねさんのときの配信を見たからかな。アタシじゃ対応できないよ、あのタイプは。だから使えるようになりたいんだ」
「ヒーローの鏡でずっ!」
『うおw』
『いきなりキタw』
『鼻から涙ちゃん』
「だんという高潔な精神! 何事にも真摯に向き合う、純粋な心をお持ちだようでずぞぉうっ」
『きちゃない』
『汚』
『汚』
『汚』
「リンちゃんリンちゃん、これが汚清楚さまの部分ですかね?」
「生で見るとウワァってなるね。笑うよりもビックリが先だった」
「おっと、失礼しました。感情が爆発してしまって」
『スン』
『スンッしたw』
『スン』
『お前はいっつもいっつも唐突だな!』
「それで、そのお……発勁って具体的にはどうやってやるのでしょう? 超振動は凄い貧乏ゆすりみたいな感覚でいいんですか?」
「うーん、そうですね……私的には手首を振るバイバイを凄く早くしてる感じです」
『バイバイ?』
『?』
『バイバイ?』
『パイパイ?』
『?』
『?』
「へえ、なるほどね。横方向か。アタシは前後運動かと思ってたから、結構勘違いされてるんじゃない?」
「御慧眼痛み入ります!!」
なるほど納得だ!
まずは俺の動きをゆっくり見せる必要があったのかもしれんっ!!
「では改めまして、私の動きを見ていただきましょう。手のひらを対象に当てやすい体勢で構いません。そして──」
踏み込みで勢い付け、氣功を流しながら振動させるのだ。
その動きを超スローで俺は世界にお届けした。
これで発勁使いが増えるだろう。
「──となります。これを早くやると、トゥッ!」
ヴァォオン!!
「ね? できました」
「おおー!」
「凄いです!」
『アカンw』
『なんで納得してんの!?』
『1ミリもできる気配はしないのよww』
『ムリムリ』
「リスナーのみんなもノリノリで応援してくれているようです。頑張ってください!そして氣功ですが、これは感覚による部分が大きいですね。私はキュイイイーン、ボッとか、ヌウウウン、ソイッの感じです」
『わかんないヤツだってのw』
『わかんないわかんない』
『お前もうヤメロwwwww』
「分かりました銀髪さん先生! 氣功の部分はよく分かんないけど……能力を乗せる感じでいいのかな? まずはやってみよっと」
「アタシはなんかもうできる気がする」
『オカシイオカシイ』
『オカシイ』
『生徒さんが不思議なこと言い出したw』
『オカシイよ?w』
『待てよ?アクティブならイケる・・・のか?ま、まさかの!?』
訓練用カカシに向かう2人。
「あ、そういえば伝え忘れていました。今日のこの場所は、魔断学園の訓練場です。速水さんが申請して使用許可を取ってくれました。ありがとうございます」
腰を落とし、カカシに手をそっと添える2人。
ボッバアアアアアアァァァンッ!!
シュゥゥバババババババアァッ!!
倉持さんが放つ爆炎発勁の威力で、消し炭になりながら吹っ飛んでいくカカシ。さすが攻撃力の高い能力だ。格闘技を使う彼女だから、身体の使い方も上手。
振動に能力も乗っているから、ほぼほぼ成功といって良いな!
加速系の速水さんはかまいたちが起きて切り刻んでいる。カカシが粉微塵じゃあないかっ! なるほどなるほど、腕だけ加速させて、押し出すことで攻撃力の方向性を確定しているようだぞ。
彼女たちは能力の使い方が巧みであるということだ!!
「「できた!」」
「2人ともさすがのヒーローと言わざるを得ないっっっ!!!」
『なんかオカシイ件w』
『できてないのではw』
『ちゃうちゃう』
『ちゃうねんwwww』
能力を乗せるとこうなるだなあ。
これはかなり凄いぞ!
気は出てないようだが、全然良いではないか!!
「お2人ともに、氣功はできていませんが、破壊の力という面ではベリーグッドですね! これに氣功が加わると思うと涎が止まりませんっ!!」
是非ともマスターして欲しいなあっ。
『急にきたない!』
『ヨゴレをおやめなさい』
『汚清楚』
『汚清楚様』
『今日も今日とて汚清楚さま』
「「氣功かあ……」」
「あっ! キュイイイーン、ふぉばあっ。これが一番近いかもしれません」
『マテマテ、あっ!じゃあねえのよw』
『きゅいーんふぉばぁ・・・』
『毎回ワケノワカラナイ造語作んのやめないか?』
『一番近くても遠すぎる件』
「練習はいつでもできるしね! アタシも完ぺきに使いこなしたいしやっておくよ」
「私も! 銀髪さん先生、ありがとうございました!!」
「チャンネル登録、グッドボタン、よろしくお願いしますね。それではみなさん、ごきげんよう」
この配信を見た両親が、ノリノリで新ガジェットを作り始めたと研究所から連絡が来た。
ガジェット名:ヴィブロ・フィスト
超振動籠手を作りたくなったらしい。
全人類発勁使い化計画ということか。
母さんも父さんもさすがだな!




