第十二話 責任ってやつ
ザー。
雨が降る。
大地を打つ。
大粒の雫。
樹木に当たる。
広葉樹。
⸻
『社長室』。
書類を読むサブロー。
ジョーとハリーは立っている。
デスクの向かい側。
「なるほどね。」
「いかがでしょうか。」
「大体、こんな感じでいいと思う。」
「それでは、これで進めます。」
「あー、ちょっと待ってくれ。
そこに、付け足してもらいたいんだけどさ。」
サブローの視線がハリーに向く。
「あ、はい。」
「AIはさ、スゴいんだよ。」
「はい、そうですね。」
「しかし、AIには無いんだよなぁ。」
「•••。」
「使う人間が、問われるんだ。」
サブローの視線が書類に向く。
「責任ってやつだ。」
サブローは立ち上がる。
窓から外を眺める。
「だからさ、どんな重大な事故があっても、できないんだよ。
AIのせいには、な。」
「そう、•••ですね。」
ふと思い出す。
ルカの言葉。
ー AIのせいよ! AIのせいよ!
ー 何の根拠もなく、AIのせいにしていただけ•••
サブローは目を閉じる。
軽く首を振る。
屈伸し、身体をほぐす。
「•••何か、考えてみてくれよ。
それが伝わるような言葉。」
再びハリーに視線が戻る。
「AIを使わずに、お前の言葉で。」
微笑む。
「じゃ、よろしく!」
肩を叩く。
とん。
⸻
窓。
ピシャ、ピシャ。
雑用の手が止まる。
ルカは見る。
窓の外。
上下に揺れる。
新緑の若葉。
⸻
カチャ。
ドアが開く。
ハリーが事務所に戻る。
ルカにサブローとの対話を伝える。
ルカは何度も頷いて聞く。
「AIには責任がない。
ボスのおっしゃる通りですね。」
「さすがだよ。
まさしく、経営者の視点だよね。」
「それでハリーさん、どんな言葉をガイドラインに入れますか?」
「んー、まだピンときていないんだけど。
責任、責任•••。」
「なかなか難しそうですね。」
「責任感を持って利用する事。
とかじゃ当たり前すぎるよね。
ぜんぜん響かない。
•••うーん。」
しばらく考えるハリー。
「あ、そうだハリーさん。」
「うん?」
「ミーナさんからメッセージ届いていませんか?」
ハリーはスマートフォンを見る。
「あ、ほんとだ。
えーと、なになに•••。」
ルカは微笑む。
ハリーの目が大きくなる。
| 生産が向上しました!
| ルカさんの動画のおかげです。
| あと、ハリーさんの社内報もです。
| ありがとうございます!
ハリーはルカを見る。
「どういうこと?」
「うふ。
•••私たちはキッカケですよね。
リッくんたちの仕事が変わったんですよ。」
ハリーは再び画面を見る。
「•••どういうことだ?」
「うーん、そうですね。
人手不足が、少し緩和されたってことですね。」
「なんで?」
「リッくん、カナエさんに勝ちましたよね。
それって、大きな事件だったんじゃ無いですか?
みんなにとって。」
ハリーの左手が、あご先をつまむ。
その手が、デスクの上の空気をつかむ。
持ち上げる。
置く。
「•••なるほど。
それで、そのやり方をみんなが、共有。
ルカさんの動画。
リッくんの手元の動き。
オレ、それ社内報に使った。」
「スゴいですよね、みんな。
おとといから昨日。
たった二日!
たったの二日なんですよ!」
ハリーは頭をかく。
「はは。
•••また、だね。」
「え?」
「ルカさん、ほんとに魔法!」
ルカは首を横に振る。
「いやいやいやいやー。
•••ですからね、私はキッカケだけですってばー。」
「そうか。
キッカケがあって、みんなが成長する、か。
うん、なんかイメージ出来てきたかも。」
⸻
ブルル。
スマートフォンが震える。
ジョーが画面を見る。
「来たな。」
生成AIの社内ガイドライン。
ハリーの追加案。
| 使用する生成AIは一元管理し、個人所有のものは使用不可とする。
| 利用状況、内容は全て社内で共有し、検証する機会を設ける。
「なるほど。」
ジョーは画面をサブローに見せる。
「ふむ。
•••よし、そしたら、あれだ。
プロジェクトチームだ。」
サブローは壁を見上げる。
額縁の言葉。
企業理念。
『One thanks for all, all thank for one.』。
生成AI利活用PT。
編成開始。
⸻
チッ、チッ、チッ。
チッ、チッ、チッ。




