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朱い橋  作者: 飴屋


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朱鳥は天井を見ていた。


大きな板だなぁ。

きっと大きな木だったんだろうな…。


まだこちらの環境に慣れていないだろうから、と早めに寝るように言われたのだ。

しかし、すでに飽きている。

善意で言われているのは分かっているので、言われた通りに布団に入ってはいるが、眠れずに、ただ天井を見ているだけ。


すごい。年輪がたくさんある。

流れる川のよう。

あ、右の方はちょっと龍っぽい…?


良い木を使っているようで、一枚が大きく、表れている年輪も細かい。


することもないので朱鳥は木の年輪を見ながら、過ごした。

年輪と言っても、細かったり、太かったりと色々だ。それらを動物に当てはめたり、また、歪んだ線を見つけて、その年に何があったのかを考えたり…。


あの辺、節があったのかな。


部屋の左すみの天井板に丸いところを見つけた。

二重、三重に太い線が丸くあって、まるで目玉のようだ。

そうして見てみると、回りのうねった線も輪郭のように浮き出て見える。


うーん。

なんだろう…。


うとうとして、視界が怪しくなってきた目には、それがなんだか生き物のように思えた。


眠い…けど、あれがなんの生き物なのか気になる…。


どこかで見た生き物に似ているのだ。


丸い大きな目玉…。


そこで閃くものがあった。


「りゅう…」


あの龍臣と言う人が被っていたお面の龍に、どことなく似ていた。


「…」


分かればすっきりとして、いい気持ちで眠れるだろうと思っていた朱鳥だったが、それが龍だと気づいた瞬間、目が覚めた。


むくりと起き上がり、ため息をつく。


「あの人、どうなったんだろう…」


今日も色々とあった。ありすぎた。

想像していたこととあまりにも違いすぎて、朱鳥は落ち着かない。


いつもならこの時間は、みんなの食事が終わって、やっとご飯が食べられるころなのだ。


それから、お茶碗を洗って…、明日の朝ごはんの下ごしらえを手伝って…。


朱鳥は大きなため息をついた。

そして、布団を頭からかぶると目をきつく閉じた。




ふわふわと熱が出たときのような感覚がして。

立っているのか、寝ているのか、歩いているのか沈んでいるのか、良く分からない。


天井の龍がパチリとまばたきをしたかと思うと、ずずずっと、降りてきていつの間にか朱鳥を背に乗せ青空に飛び立った。


すごい、はやい。


あっという間に建物が小さく見える。朱い橋も、朱鳥の住んでいた村も。毬をついて遊んでいた子どもが空を見上げた。


ホタルだ。


朱鳥が小さく手を振るとホタルもまた嬉しそうに笑って大きく手を振った。

そばにいた翼女は怪訝そうな顔で空を見上げるが、見えていないようだ。


ぐんっと、竜は高度を上げる。


風を切る感覚は、あの夜と同じだ。

しっかりと掴まった大きな背中は安定感があって、やっぱり背負う方が正解だったと確信する。


前抱きは危ない…。


ちゅん、ちゅん、ちゅん。


龍に並走するのは、小さな雀だった。

少しくすんだ茶色の毛並みは乱れていて、なんだか心配になった。


あの時、転んだから?


龍の背に乗ったまま朱鳥は、雀に手を伸ばす。

すると雀は困ったように朱鳥の周りを飛ぶ。


「大丈夫。おいで」


朱鳥が声をかけると、ぽてんと手のひらに乗った。

そっと人差し指で頭を撫でて、毛並みを整えてあげようとすると、


「えっ…」


重みに耐えかねたように、龍が突然力を失った。


つまりは、落ちた。




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