第326話 大人デート
話をしていると、前菜に始まり、料理が来だしたので食べていく。
このちょこちょこ来る感じが慣れないが、そういうものだと割り切るしかない。
「料理も美味しいね」
「本当だな。なあ、実際のところ、試験はどうだった?」
「大丈夫だと思うよ。エーリカもアデーレもね。受かったら皆でシーサイドホテルにでも行こうよ」
今回は皆一緒だな。
あそこの店員についに3人と来たぞって思われそうだけど。
「そうするか」
「うん。ジーク君に教えてもらって助かったし、感謝しているよ。私とエーリカだけだったら多分、9級も受かってないんじゃないかなって思う。それどころか、リート支部にいられたかもわからない」
2人ではな……
さすがに潰れるようなことはないが、あまりにも赤字が続けばどうなったか……
少なくとも、支部長は飛ばされているな。
「お前達は優秀だ。これからも頑張ってくれ」
「そうする。私もリートは好きだし、ずっとあそこでやるつもりだからね。エーリカやジーク君、アデーレ。もちろん、支部長も入れて、皆でやっていきたいと思っている」
だよな……
だからこそ、この和を乱したくないんだ。
「サシャが来ても上手くやれるか?」
「彼女は大丈夫だよ。マルティナちゃんやゾフィーもだったけど、ちゃんと馴染んでいたでしょ」
サシャは受付が苦じゃないって言えるくらいにコミュニケーション強者だからな。
俺やゾフィーと普通に話せるくらいだし。
「そうか。じゃあ、あいつが来るかはまだわからないが、皆でやっていこう」
「うん。ジーク君さ、クヌートさんには会った?」
クヌート……
「魔導石製作チームに顔を見せに行った時に会ったな。あいつも俺と同じ風邪を引いたらしいからちょっと様子を見に行ったんだ」
あとテレーゼね。
「そっか。元気そうだった?」
「いつもと変わらない。何だ? 会いたいか?」
「いや、会わないね。向こうも嫌でしょ」
「気まずいだろって言ってたな」
わからないでもないが。
「だろうね。ちょっと悪いことをしたかなって気持ちはあるけど、こればっかりはね」
そうだろうよ。
別にどっちが悪いとも思わない。
「お前、実家はどうなってんだ?」
「経緯の説明と共に謝罪の手紙を出したよ。好きに生きてくれっていう返事が来た」
「なんか放任っぽいな」
「まあ、私ももう大人だからね。それに9級国家錬金術師。親もそこは安心なんでしょ」
生活ができなくなるってことはないからな。
「ふーん……年末はどうするんだ?」
この前、エーリカがこの話題を振ってきた時、レオノーラはまだ決めてないと答えた。
「悩み中。帰るべきか、またの機会にするか」
「帰れよ」
「そう思う?」
「お前が俺に帰れって言ったんだろうが」
本部長の家に帰る話をしたら勧めていた。
「それもそうだね。うーん……実家かぁ……気まずいのもあるんだけどさ、普通に遠いんだよね。アデーレもだけど、一回王都まで飛んで、そこからさらに飛ぶ。しかも、ウチの町には空港がない。着いた町からさらに馬車で移動して、ようやく実家なんだ」
なるほど。
確かに遠い。
「めんどくさいな」
直通便がないのはまだわかるが、さらに馬車で移動っていうのがな。
「うん。でも、帰った方が良いのはそうなんだよね……ちょっとアデーレと相談しようかな。移動で2日もかけるのはちょっとね」
勧めておいてなんだが、俺なら帰らない。
「帰ってケンカになるとかないよな?」
「大丈夫だよ。実家に戻ったら休みが明けても帰ってこなくなるみたいなしょうもない話にはならないから」
「迎えに行ってやるぞ」
「じゃあ、お父様に頼んで、軟禁してもらおうかな」
昼の劇みたいになるんだろうか?
いや、俺はあんなバカじゃない。
「普通に帰ってこい。年が明けたらすぐに試験だぞ」
「帰るのやめようかなー……頑張ったけど、次はもっと厳しいし」
アデーレもな。
「相談して決めてくれ。最悪は有休も余っているだろうし、試験が終わってから帰るっていうのもあるぞ」
王都から飛べばいい。
「そだね。ちょっと様子を見ながら決めるよ」
まあ、それでいいか。
俺達はその後も話をしながら料理を食べていく。
もちろん、料理もワインも美味しかったし、徐々に雰囲気にも慣れてきたので楽しいと思えた。
そして、そろそろお開きだなと思ったのでトイレに行くふりをし、1階で車を頼んで会計したのだが、料金は5万エルだった。
どう考えても安いと思ったが、多分、クリス割引だろうと思い、支払って個室に戻る。
「レオノーラ、車を呼んだ。そろそろ帰ろうぜ」
「そうだね。今日のエスコートはどこまで?」
「エーリカの部屋かな」
多分、そこにいるだろう。
2人で夜の町に出るってこともないだろうし。
「ふふっ、そうだね。カードゲームでもしながら手足を伸ばして飲み直そうか」
「ああ」
俺達は帰ることにし、店を出ると、車に乗り込んだ。
「いくらだった?」
レオノーラが聞いてくる。
「5万」
「安っ……クリスさん?」
「だと思う。その倍はしてもおかしくないし」
下手をすると、もっと……
「やっぱりプレヒト家は違うね。お礼を言っておいて」
「ああ」
俺達はホテルまで戻ると、階段を上がり、それぞれの部屋の前に立つ。
「じゃあ、着替えたらね。さすがにこの格好はないし」
俺も着替えたい。
「ああ。また後でな」
「うん。ジーク君、今日はありがとうね。楽しかったし、君の言う初めての経験ができたよ」
「そうだな。俺は劇が良かった。恋愛ものかと思って、どうしようかと思ったが、まあ、面白かった」
ずーっとツッコんでたけど。
「うん。また行こうね」
「ああ」
俺達は部屋に入る。
そして、堅苦しい服を脱ぎ、いつもの服を着ると、エーリカの部屋に行き、リバーシをしている2人と合流し、4人で飲み直しながらカードゲームをして過ごしていった。
いつもお読み頂き、ありがとうございます。
今年も『このライトノベルがすごい!2027』のWebアンケート受付開始となりました。
本作は昨年、皆様の応援のおかげで新作単行本部門で5位を獲得することができました。
今年もエントリーされておりますのでぜひとも投票をお願いいたします。(↓にリンク)
よろしくお願いします!




