第323話 薬品生成チーム
翌日、ちょっと遅めに起きた俺達は準備をし、部屋の前で合流した。
そして、1階のバイキングで朝食を食べる。
「見てください、謎のフルーツを取ってきましたよ」
「エーリカはお目が高いなー。それは高級フルーツだよ」
「やっぱりですか! うん、美味しい!」
楽しそうだな。
「美味しいわね。初日は試験だったからあまり食べられなかったけど、やっぱりこのホテルはこれよ」
「ですよねー。朝からローストビーフは最高です」
アデーレもヘレンも楽しそうだ。
「良かったな」
俺達はバイキングを楽しむと、ホテルを出て、本部に向かった。
そして、中に入ると、受付にサシャがいたのでそちらに行く。
「皆さん、今日はお揃いですね」
「よう、サシャ。試験ぶりだな」
「あ、それですよ。びっくりしました」
だろうな。
目を見開いていたし。
「実はお前を担当するのはわかってたんだが、言えなかったんだよ」
「言えないのはわかりますけど、えーって思いました」
実は合格だからいいだろ。
言えないけど。
「サシャ、相談があるんだって?」
アデーレが聞く。
「あ、そうでした。ちょっとで良いんでお時間をもらえないですかね?」
「良いわよ。明日の夜はどう?」
「大丈夫です。仕事が終わったらお願いします」
「じゃあ、迎えに来るわ。それでいい?」
アデーレが確認してくる。
「ああ。俺は筆記試験の採点に行くから終わったらここに直接来る」
「じゃあ、ここで待ち合わせね」
「ありがとうございます」
サシャが頭を下げる。
「サシャ、俺達は薬品生成チームに行く。ちょっとマルティナに会うんだ」
「わかりました」
サシャが頷いたので階段を上がる。
そして、薬品生成チームの共同アトリエにやってくると、扉を開けた。
すると、以前と同じく、中にいる10人をゆうに超える女共が一斉にこちらを見てくる。
「あら? ジークじゃないの」
「こんにちは!」
ハイデマリーが顔を上げ、マルティナが挨拶をしてくる。
「よう。邪魔するぞ」
そう言って、中に入った。
「エーリカ先輩、お久しぶりです」
「久しぶりだねー」
「アデーレ、試験はどうだった?」
「自信がないこともない」
エーリカがマルティナと話し始め、アデーレがエルヴィーラと話し始めたので俺とレオノーラはハイデマリーのもとに向かう。
「何か用かしら?」
「マルティナの顔を見に来たんだよ。土産を渡す」
「あらそう。優しいですわね」
「別に……マリー、ちょっといいか」
声量を落とした。
「……何ですの?」
マリーも声量を落とす。
「……知り合いがマルティナの実技の担当だった。落ちたそうだ」
師匠には先に伝えておこう。
「……そう。まあ、仕方がないですわよ」
マリーもわかっているわな。
「……良いことも言っていた。とんでもない魔力で将来は明るいってよ。一方であれは他所から狙われるともな」
「……わたくしから弟子を引き抜こうなんていい度胸ですわ。真っ向から叩き潰してあげます」
マリーからは無理だろうな。
名前を聞いただけで撤退しそうだ。
「ほどほどにな。お前はどうだったんだ?」
声量を戻す。
「わたくしが落ちるわけありませんわ」
これまで落ちてたくせに。
「そうかい。クリスは勉強どころか錬成すらしてなかったらしいぞ」
「おべっかばっかり使っているからですわ。わたくしは次で2級です。一門でトップです」
「頑張れよ。次で取らないと、その次で俺がまた抜くからな」
俺は次の次の試験で2級を受けられる。
「さっさと田舎に帰りなさい」
こいつ、試験官の仕事が来るかな?
来ないような気がする。
「ジークさん」
マルティナがこちらに来た。
「よう。試験はどうだった?」
「ダメだと思います。実技はリートでやったことなのでそこそこできた気がしますが、筆記がダメです……」
だろうな。
「気にするな。どう頑張っても今回は受からん。受かってもらっても困る。お前は今が大事な時期だからとにかく、頑張れ」
「わかりました」
マルティナが頷く。
「自分が目標にする壁の高さがわかって良かったじゃろ。しかし、おぬしに試験に落ちた挫折を味わうだけの余裕も実績もないぞ」
ん?
「どこだ?」
声はするのだが、エルネスティーネの姿が見えない。
「ここじゃい」
エルネスティーネがマルティナの服から出てきた。
「主人で暖を取るなよ」
「妾は寒がりなんじゃ。ハムスターぞ?」
そうかい。
「マルティナ、エルネスティーネの言うとおりだ。お前はとにかく、上だけを見ろ。今はそれでいい」
「わかりました!」
マルティナが力強く頷いた。
「エーリカ、土産は渡したか?」
「渡しましたよー」
「あ、ありがとうございます。お母さんも喜ぶと思います」
ギーゼラさんも元気になったっぽくて良かったわ。
「じゃあ、俺達は行く。何かあったらまた呼ぶからな」
「頑張ります!」
頑張ってくれ。
「じゃあな、マリー。ちょっと本部長とテレーゼのことを相談してくれ。リーゼロッテからの密告で勉強していたことがわかった」
「ハァ……まあ、あの子はそうするかもね。わかりました」
俺達は薬品生成チームのアトリエを出る。
「アデーレ、エルヴィーラはどうだった?」
一応の確認。
同期だし。
「エルヴィーラさんも自信がありそう。明日の昼に3人でご飯を食べに行くことになったわ」
良いことだな。
「結局、会ってないが、マルタによろしく」
「ええ」
俺達は階段を下り、サシャに一声かけると、本部を出た。
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