第320話 陛下
昼食を終えると、仲良しチビ2人と別れ、本部長と共に城に向かう。
城はクリスの家がある北の高級住宅街の先にある。
3級に受かった時に陛下から金のネックレスを受け取った時以来だ。
「ジーク、一応、言っておくが、失礼のないようにな」
「わかってます」
頷くと、城の門に近づく。
すると、門番の兵士がこちらにやってきた。
「クラウディア様、ようこそいらっしゃいました。陛下ですかな? 王妃様ですかな?」
さすがに本部長の顔を知っているようだ。
「陛下と約束しているのだが……王妃様もかもしれんな」
「さようですか。そちらは?」
兵士が俺を見てくる。
「弟子だ。一緒に陛下に呼ばれている」
「ジークヴァルト・アレクサンダー3級国家錬金術師だ」
そう言って、鷲のネックレスを見せた。
「そうでしたか。それは失礼しました。それではお通りください」
兵士が簡単に道を譲ってくれたので中に入る。
「すんなりでしたね」
「何度も来てるしな」
「お茶会はどこでやるんですか?」
「陛下の私室だな。ちなみに、その隣が王妃様の私室だ。つまり、私はいつも陛下に失礼しましたと頭を下げた後、隣に入るわけだ」
へー……
「一緒にやればいいのにって思うのは俺だけですか?」
「私も思っている。でも、愚痴にはそれぞれのパートナーのことも含まれるからな」
相談役みたいだな。
中庭を抜け、城の中に入ると、そのまま歩いていったのだが、多くの兵士とすれ違う。
その度に兵士達が本部長に一礼しており、本当に権力を手に入れたんだなと思った。
そして、奥にある階段を上っていき、さらに廊下を歩くと、兵士が守る扉が見えてきた。
「これはクラウディア様」
兵士が一礼する。
「陛下はおられるか?」
「はい。中でお待ちしております。どうぞ」
兵士が避けると、本部長が扉をノックする。
「陛下、クラウディアです」
『おー、入ってくれ』
許可を得られたので中に入る。
すると、テーブルにつく40代の男性がいた。
もちろん、その男性こそが陛下であり、その周りには2名のメイド、3名の近衛の兵士が立っていた。
「失礼します」
本部長は一礼したので俺も一礼する。
「よく来てくれたな。それとアレクサンダーも遠いリートの地からよく来てくれた」
一応は面識があるのだが、本当に覚えているのだろうか?
「ご無沙汰しております。3級国家錬金術師の名に恥じないように日々、研鑽しております」
「うむ。まあ、座ってくれ。今日は別にお堅い謁見でもないし、楽にしてくれればいい」
陛下がそう言うので本部長と共に席につく。
すると、メイドが俺と本部長にもお茶を淹れてくれた。
「ありがとうございます」
「アレクサンダー、お前は試験官を務めたらしいな。どうだった?」
どうだったって言われてもね。
陛下に錬金術師のことはわからないだろ。
「国家錬金術師試験は最難関の試験ですので受かった者は少ないでしょう。ですが、受かった者達は確実に国家のために尽くせる逸材です。必ずや活躍してくれます」
多分だけどな。
「そうか、そうか。錬金術師の数は少ない。いつも慢性的な人手不足と聞いておる。しかし、ちゃんと後進は育っておるようだし、引き続き、頑張ってくれ」
「お任せください。皆で一丸となって国に尽くしたいと思います」
左遷された俺が一丸とかいう言葉を使う皮肉。
「うむ。いやー、クラウディア、お前の弟子は本当に優秀だな」
「得意不得意が両極端な男ですが、そうですね」
あんたもだろ。
「ははは。短所など放っておけ。類まれなる長所を持っているならそこを伸ばすべきだ」
「ええ。そう思っていたんですが……」
なんで言葉に詰まるんだよ。
何度も言うが、あんたも一緒だっての。
一緒に暮らしてた時、散々、上司、同僚、部下をバカにしてただろ。
「時にアレクサンダー、リートはどうだ? お前はクラウディアの一番弟子だろう? 王都に戻る気はないのか?」
あ、クリスに言われたやつだ。
「私もリートに赴任する時、いずれは王都に戻りたいと思っていました。しかし、リートは居心地が良く、今では第二の故郷のように思えます。それに良い出会いもあり、弟子も取りました。また、リートは町の規模に比べて錬金術師の数が少なく、このままではいけません。私も錬金術師として、リートの発展に尽くしたいと思います」
まあ、嘘はついてないな。
「なるほどな。アレクサンダーは実に立派だ。お前こそが国の宝である。そんなお前がそこまで言うならリートの地はお前に任せよう。国の者は大半が北部を中心に考えるが、それは豊富な資源を持つ南部の町々からの供給があるからだ。お前は実に視野が広く、国の将来が見えている」
いや、そこまで考えてないし、興味もないです。
「ありがとうございます」
「ヨードル元帥もお前のことを絶賛していたぞ。ぜひ、部下に欲しいとな」
アデーレの爺さんだ。
「元帥閣下は弟子の祖父なんですよ。その辺りの贔屓目だと思います」
というか、やめて。
「ははは。お前はクラウディアにそっくりだな。実に謙遜が下手だ。まあよい。元帥には私から言っておく。前線で戦う者は勇者だが、何故戦えるのかは奴も承知しているだろう」
俺達が支援するからだ。
「ありがとうございます」
「よい。リートで国のために尽くせ。例の筆跡を鑑定する装置もすばらしかった。お前には期待している」
あ、金属探知機を出せって言ってる。
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