表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
左遷錬金術師の辺境暮らし ~元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました~   作者: 出雲大吉
第8章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
299/303

第299話 誰よりもマリーを高く買っている男


 本部長室をあとにすると、クリスのアトリエに向かう。


「もしかして、サシャの相談ってウチに来るかどうかか?」


 歩きながらヘレンに聞いてみる。


「だと思いますよ。個人的な相談なら他の人がいますし、ジーク様とアデーレさんに相談するっていうのはそういうことだと思います」


 まだ悩んでいるってところか。


「どうなるかねー?」

「こればっかりは本人の意思ですから。ただ、リート支部の当人達に相談するってことは気持ちがそっちに寄っているということです。相談の時は歓迎するという姿勢で良いことを重点的に言ってください」


 なるほどねー。


 俺達はクリスの個人アトリエまでやってくると、扉をノックする。


「クリスー、ジークヴァルトだ」

『入ってくれ』


 許可を得られたので部屋に入る。

 すると、デスクにつくクリスと止まり木にいるドロテーがいたのだが、そのドロテーがこちらに飛んできた。


「こんにちは、ジークさん。ご無沙汰ですね」


 ドロテーがご機嫌に挨拶をし、俺の肩にとまった。


「どうした?」

「んー? どうしました?」


 いや、俺が聞いているんだが……


「ジーク、ドロテーはちゃんと痩せたままなのをアピールしているんだよ」


 クリスが苦笑いを浮かべながら教えてくれた。


「何だ……いつものドロテーだろ」

「あなたはモテませんね。異性の細かな変化には気付けないといけませんよ」


 いや、今は変化してないことをアピールしてただろ。


「わかるか。それに下手をすると、セクハラだ」


 異性の体型に言及するのは良くない。


「相手が好意を持っていればセクハラじゃないんですよ」


 お前、俺に好意を持っていたのか?

 あんなに口が悪いのに?


「そうかい。何にせよ、元気そうで何よりだ。クリス、風邪は移ってないな?」


 ソファーに腰かけながら聞く。


「ああ。幸いにな。お前は災難だったな」

「本当にな。ドロテー、インフルエンザにかかるなよ」


 鳥インフル。


「何ですか、それは。それに使い魔が病気にかかるわけないでしょ。我々は動物じゃないんです」

「太りますけどね……ぷぷっ」

「おい、怠惰猫……」


 まーた始まった。


「ドロテーは黒いから膨張して見えますよ」

「あんたも黒いでしょ!」


 俺の腕の中と肩でケンカするなよ。


「ジーク、明日から試験官か?」


 クリスは慣れているようでスルーだ。


「ああ。お前はやったことがあるんだったな? どんな感じだ?」

「筆記は不正がないかのチェック。実技はそれぞれ担当となる相手の錬成を見る」

「俺も当然、試験を受けているからわかるんだが、筆記のチェックは部屋に1人しかいなかったし、錬成は3人だったぞ?」


 前の方に座っていた。


「チェックなんかはカンニングがないかの確認だけだ。錬成は一部屋に40人くらいいるから1人で13人くらいを担当して見ていく。結構、疲れるな」


 ふーん……魔力の流し方でだいたいわかるけどな。


「そんなもんか」

「確か10級か9級だろ? 選べるなら10級にしておけ。10級は非常にわかりやすい」


 誰でも受けられるのが10級だからな。

 冷やかしとは言わないが、才能なしもいる。


「わかった。お前の弟子も受けるんだろ?」

「ああ。でも、前回のことがあるからまず間違いなく、身内は担当にならんな」


 じゃあ、マルティナもか。


「例の件って明るみになっているのか?」


 もちろん、アウグストの不正の件。


「なってないが、噂にはなってるな。アウグストは優秀だったし、それが急にいなくなり、さらには貴族が慌ただしくなったから皆、察するだろう」


 あいつ、トップクラスの実力はあったからな。

 変なことをせずに真面目にやっていれば相当、上まで行けただろうに。

 そんなに俺が嫌いだったのかね?


「じゃあ、試験は公平だということを示さないといけないな」

「ああ。今回の試験の総責任者はメルヒオールだ」


 誰?


「知らんが?」

「知っておけ。ジーン支部の支部長で1級国家錬金術師だ」


 ジーン支部……


「また面倒なところだな……」


 ウチから人材を引き抜き、さらには鉱石不足を招いた元凶の町のトップかよ。


「作為的に感じるかもしれんが、試験の総責任者は立場ある人間をローテーションで回す。偶然だ」


 ふーん……


「どういう奴だ?」

「真面目で堅実だな。1級だから当然、優秀。ちなみに、貴族だ」


 嫌だねー……


「アウグストとは?」

「関係ない。そもそもメルヒオールは王都貴族であり、ジーンの町のバルシュミーデ家とも縁もゆかりもない家だ」


 まあ、所属はあくまでも錬金術師協会だしな。


「なんかそのバルシュミーデ家から金をもらってそう」

「さあな。さすがに今の状況で動くことはないと思うが、心しておけ」


 はいはい……

 しょうもない権力争いに俺を巻き込まないでほしいわ。


「試験の日だが、ドロテーを貸してくれないか」

「嫌ですよ」


 無視、無視。


「なんでだ?」

「前回も頼んだんだが、3人娘を見ていてほしいんだ」

「そういうことか。ドロテー、いいか?」

「いいですよ。レオノーラさんのピンチには助けましょう」


 本当にレオノーラが好きだな、こいつ。

 というか、さっきの嫌は何だったんだよ。

 条件反射で断るなっての。


「ケンカを売るなよ」


 この前もレオノーラと一緒になってアウグスト相手にケンカをしていたらしい。


「売りませんよ」


 どうだか……


「クリス、お前の方はどうだ? 2級を受けるんだろ?」

「無理だな。ここ数週間、まったく勉強をしていない。何なら錬成すらしていない」


 ひっで。


「錬成もか?」

「あちこちに飛ばされ、仕事もリーダーだから指示が多い。弟子の面倒を見ないといけないし、夜も会う人間が多い。代わってくれ」


 代わったところでな……


「マリーがすぐ後ろに来てるぞ?」

「仕方がないさ。そもそもマリーがなんで4級なのかもわからん」


 弟子が多いから。

 そして何より、プライドが高く、頭が良すぎて、問題に難癖をつけるから。

 つまりバカ。


「マリーが次の本部長になったらどうする?」

「それはない。マリーはどんなに頑張ろうと、結局は技術屋を辞められない。マリーの根底にあるのは本部長を超える錬金術師になる、ということだからな。最初から私とはゴールが違うんだよ」


 マリーは政治家にはなれないか。

 まあ、嫌いそうだし、心底バカにしてそうだもんな。


「お前とは違うわけだ」

「そういうことだ。私も錬金術は好きだが、それだけでこの世を渡ろうとは思っていない。それだけでトップを目指せるお前とは違うんだ」


 目指せなかったがな。


いつもお読み頂き、ありがとうございます。

本日、私の他作品である『その子供、伝説の剣聖につき』のコミック第1巻が発売となりました。

ぜひとも手に取って読んでいただければと思います。(↓にリンク)


本作共々よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【新作】
終末世界の帰還錬金術師 ~日本に戻ったら人類と悪魔が戦争をしていましたが、異世界で勇者になれなかった俺達はスルーして適当に生きたいと思います~

【予約受付中】
~漫画~
~7/9発売予定~
35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~(2)

~書籍~
~7/10発売予定~
左遷錬金術師の辺境暮らし 元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました(4)

【新刊】
~漫画~
その子供、伝説の剣聖につき(1)
web版(カクヨムネクスト)はこちら

35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~(1)

左遷錬金術師の辺境暮らし 元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました(1)

~書籍~
左遷錬金術師の辺境暮らし 元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました(1)
左遷錬金術師の辺境暮らし 元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました(2)
左遷錬金術師の辺境暮らし 元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました(3)

覇王令嬢の野望 ~絶対平和主義の少女に転生した最強女帝の帝国再建譚~(1)
web版はこちら

宮廷錬金術師の自由気ままな異世界旅 ~うっかりエリクサーを作ったら捕まりかけたので他国に逃げます~(1)

【現在連載中の作品】
スマホ転移で始める異世界ゆるゆる生活 ~日本の商品が高値で売れたのでスローライフを目指すことにしました~

魔法なき世界の異端魔導士 ~冤罪で捕まりかけた大魔導士は異世界で自由気ままに人生をやり直すことにしました~

元暗部の英雄、再び暗躍する ~娘のために正体を隠して無双していたら有名になっちゃいました~

宮廷錬金術師の自由気ままな異世界旅 ~うっかりエリクサーを作ったら捕まりかけたので他国に逃げます~

その子供、伝説の剣聖につき (カクヨムネクスト)

週末のんびり異世界冒険譚 ~神様と楽しむ自由気ままな観光とグルメ旅行~

左遷錬金術師の辺境暮らし ~元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました~

バカと呪いと魔法学園 ~魔法を知らない最優の劣等生~

35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~

最強陰陽師とAIある式神の異世界無双 〜人工知能ちゃんと謳歌する第二の人生〜

【漫画連載中】
その子供、伝説の剣聖につき
コミックグロウル

35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~
カドコミ
ニコニコ漫画

左遷錬金術師の辺境暮らし ~元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました~
ガンガンONLINE

最強陰陽師とAIある式神の異世界無双 〜人工知能ちゃんと謳歌する第二の人生〜
カドコミ
ニコニコ漫画

【カクヨムサポーターリンク集】
https://x.gd/Sfaua
― 新着の感想 ―
今の人間性ならTOP余裕で狙えるよね、もう狙う気はないとはいえ
黒は収縮色で太って見える膨張色は白とかでは
あまりに隔絶した実力あって、それは誰も否定できないジークさんはやろうと思えばトップに立てるのは立てるんだよね…。 性格的とバランス的にはクリスが一番適切だろうねぇ。でも、師匠まだ若いのでかなり先の話に…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ