第285話 どうでもいい
「町長、何かあったんですかい?」
現場監督のデニスが町長に聞く。
「視察だ。鉄鉱石はどうだ?」
「何度も言ってますけど、厳しいですよ。鉄鉱石は採掘を終えたばかりで今は別の鉱石を採掘しているんです。鉄鉱石が足りていないのは承知していますが、こっちにも計画がありますし、鉄鉱石ばかりにかまけて、他の鉱石が不足したら本末転倒じゃないですか」
鉱夫には鉱夫の苦労があるな。
「わかっている。それについては緊急の予算を組み、人員を増やす方向で進めている」
「それならまあ、良いですがね……しかし、鉄鉱石を採りすぎても厳しいですよ。新しい鉱脈を見つけないといけないですし、何よりも採掘した鉄鉱石をどんどん持っていかれたらこちらもどうしようもないです」
不満が溜まってそうだ。
多分、役所が色々と言ったんだろうな。
「お前達はよくやってくれている。その辺りの対策も含めた視察だ。ちょっと坑道を見せてくれ。邪魔になってはいけないから作業が少ないところでいい」
「それは良いですが、こいつらは誰ですかい? 坑道は基本、関係者以外立入禁止ですぜ」
デニスが俺達を見てくる。
「関係者だ。錬金術師協会の者達だな」
「錬金術師かい……採掘が楽になる道具でも作ってくれよ」
依頼しろよ。
「その関係の道具を作ったから試したいのだ」
「え? マジでしたか……」
「ああ。そういうわけで坑道を見せてくれ」
「わかりやした。こっちです」
デニスが歩いていったのでついていく。
すると、一番右端の間歩の前で立ち止まった。
「ここか?」
「ええ。新たに掘り始めたところです。ちょっと暗いですが、入りますか?」
まあ、洞窟だし、暗いだろうな。
「町長、私がライトの魔法を使いましょう」
俺は5級国家魔術師。
ライトくらいは余裕で使える。
「頼む」
町長が頷いた。
「兄ちゃん、錬金術師じゃないのか?」
デニスが聞いてくる。
「俺は魔術師でもあるんだ」
「へー……エリートだねぇ……あ、新聞の!」
こいつも見てるのか……
「多分、それだな」
「すごいねぇ……俺達も魔法が使えたら楽に採掘できるんだがな」
「魔法が使えたら鉱夫になってないだろ」
「違えねーな。じゃあ、ライトを頼む」
ライトの魔法を使い、光球を出す。
「では、行こうか」
「俺が先行しやすぜ。足元には注意してください」
俺達はデニスを先頭に中に入る。
中はそんなに狭くないし、ライトの魔法でかなり明るくなっているのだが、やはり圧迫感があるし、足元が悪かった。
これではサンダルのレオノーラは危ないだろう。
やはりあの貴族令嬢2人は来なくて正解だったと思う。
「エーリカ、サシャ、気を付けろよ」
「はい」
「なんかドキドキしますね」
するか?
「マジで気を付けろよー、運動ができそうにないねーちゃん達」
できないだろうな。
「サシャ、50メートル何秒だ?」
「10秒くらいでしたかね? 学生時代ですけど」
やっぱり遅い……
「勉強だけしてきたって感じだな。まあ、今の時代の錬金術師なんてそんなもんか」
昔は戦えたって本部長が言ってたな。
「そんなもんだ。分業制になっているんだよ」
「そうかい」
俺達はゆっくりと歩きながら奥に入っていくと、すぐに10メートル四方くらいの開けたところに出た。
そして、灯りを広範囲に広げると、周囲にいくつも穴が見える。
「ここは?」
「ここから探鉱して、鉱脈を探してんだよ」
いくつもある穴はその跡か。
「見つからないのか?」
「まだ途中というか、時間があった時にやってんだ。そういうのを並行して、計画を練りながら採掘をするんだよ。じゃなきゃ、安定供給ができないんだ」
なるほどね。
がむしゃらに掘っているわけではないわけだ。
そして、その計画を乱されたからご機嫌斜めなわけだな。
気持ちはすごくわかる。
こちらがちゃんと工程を立てているのにそれを勝手な都合で乱された時ほどイラつくことはないからな。
「ジーク君、早速だが、探ってくれ」
町長が頼んできたので探知機を取り出す。
「えーっと……鉄鉱石でいいですよね?」
「他にも探れるのか?」
皆が探知機を見てくる。
「鉄鉱石と銅鉱石だけですね。どちらかに合わせられます」
「探すだけでもすごいのに鉱石を選べるのかよ……本当かぁ?」
デニスが疑ってきた。
「できるんだよ」
失礼な。
まあ、正直、ここが時間がかかったところだけど。
でも、鉱脈を見つけてもそれが関係ない銀鉱石とかだったら意味ないし。
「…………ジーク君、一応、聞くんだが、これは他の鉱石も探せるのか?」
町長が神妙な顔で聞いてくる。
この質問の意味もわかっている。
「いえ、鉄や銅だけです。鉄や銅は元素が単純なので設定がしやすいんですよ」
嘘だけどな。
元素に単純も何もない。
「元素? いや、それはいい。では、金なんか無理か?」
できるよ。
「無理ですね。あくまでも鉄や銅だけです。銀もできるかもしれませんが、ちょっとわからないですね。私もそれの専門というわけではないですから」
「そうか……それは残念だ」
でしょうね。
正直、やろうと思えばできる。
しかし、そんなことをしたら色んなところから作れって言われるに決まっている。
悪いが、俺はそんな国のために動くよりもリート支部のために頑張らないといけないのだ。
この機械は陛下に寄贈するから勝手に真似して作ってくれ。
もっとも、1級、2級のカス共に作れるとは…………やめておこう。
「では、鉄鉱石を探しますね」
そう言ってスイッチを押すと、探知機を持って、左の穴に向かった。
そして、探知機を穴に向ける。
「それでわかるのか?」
「ええ。この穴にはなさそうですね。次です」
そう言って、隣の穴に向かい、探知機を向ける。
すると、ビー、ビーという音が鳴り響いた。
「うるせーな」
デニスが文句を言ってくる。
音が反響しているのでかなりうるさいのだ。
実際、皆が嫌な顔をしているし、肩にいるヘレンがビクッとした。
「すまん。外を想定していたから音がでかかった。音量を下げる」
その場で音を下げる調整を行う。
「ジーク、音が鳴ったってことはこの先に鉄鉱石があるのか?」
支部長が聞いてくる。
「そうなりますね。音の大きさ的に近そうです。1、2メートルってところですかね?」
音の強弱で距離がわかるようにしたのだ。
「そうか……」
「デニス、ちょっと掘ってみてくれんか?」
町長がデニスに頼む。
「ああ……信じられねーが、マジだったらすごいことだぜ。ちょっと人を呼んでくるから待っててください」
デニスが走って、外に出ていった。
「音がな……やはりピンコーンの方が良かったか?」
「ジーク様、もっと穏やかな波の音とかどうでしょう?」
鉱山で?
「うーん……」
よし、にゃー、にゃーに変えよう。
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