第283話 にゃんこスタッフ?
「お前はどう動く?」
「私はリート支部の人間なのでその辺の争いは知りません。クリスの奴が動いているようです」
「プレヒト家な。賢い男だ」
貴族のくせに脱貴族の本部長の右腕というね。
「まあ、そっちはそっちに任せればいいです。我々はリートのことを考えなければなりません」
「その通りだ。それでどうする?」
「このままでは鉱石不足は冬まで続きます。正直に言えば、損害は出るでしょうが、傾くほどのことではないです」
数ヶ月の問題だからだ。
これで傾くようならそれはそもそもの経営状態が悪い。
今回のことがなくても時間の問題だろう。
「鍛冶師連中は廃品で補い、錬金術師は別の仕事をすればいいわけだしな。エーリカの実家も同じだ。別で補えるだろう」
設計もやっていると言っていたし、そっちで稼げる。
その後、鉄の供給が戻れば再開すればいいだけだ。
「私達も同じです。人が足りず、仕事を選べる状況ですので十分に凌げます」
「俺はそれでいいと思っていた」
俺も最初はそう思った。
「しかし、困っているのは確かでしょう。特に今回のことで町長や役所は責任問題にまでなりそうです」
そして、本部長とバルシュミーデ家の争いが長引けば、鉱石不足が長引く可能性も否定できない。
「なるかもな……正直、町長も頭を抱えておられた。どうにかならないかと相談も受けている」
なんで皆、協会に相談するかね?
「他のところもそうです。安定した鉱石の復旧はどこも望んでいます」
「その通りだ」
支部長が深く頷く。
「そこで私はこの状況を打破するべく、動きました」
「どうするんだ?」
「それがこれです」
そう言って、空間魔法から小さな箱型の機械を取り出した。
「あ、前にジークさんが作ってたやつですね」
エーリカが反応した。
「ああ。それをゾフィーにも手伝ってもらい、完成したんだ」
昨晩は頑張った。
「へー……何ですか、これ?」
「これは鉄鉱石なんかの鉱脈を見つける機械だ」
「ハァ? どうやって?」
エーリカはよくわかっていない様子だ。
「鉱物っていうのは山の中……というか、土の中にある」
「ええ。それが鉱山です。掘って鉱物を採ってきます」
「その通りだ。しかし、どうやってその鉱脈を見つけると思う? 山なんかそこら中にあるだろ」
「確かにそうですね……えーっと?」
優秀なエーリカでもわからない。
まあ、専門家じゃないんだから当然だ。
「鉱脈を見つける方法はいくつもある。代表的なのは地形や生えている植物の変化、さらには露出している岩や層を見て、当たりをつけるんだ。そこから試掘や探鉱するわけだな」
「へー……ジークさんって何でも詳しいんですね」
「まあな」
ほら、謙虚さゼロ。
そんな顔をレオノーラとアデーレがしている。
でも、事実だから仕方がない。
「ジーク、その機械を使えばそういうことをせずに鉱脈を見つけられるのか?」
支部長が聞いてくる。
「理論上は。まだ作ったばかりで試してないんです」
「ふむ……町長に言って、試してみるか」
「ええ。それをお願いしたいです」
調整がいるならしたいし、渡して終わりということにはならない。
「わかった。善は急げだ。早速、町長に話してこよう。お前はいつでも出られるようにしておけ」
「わかりました」
頷くと、支部長が出ていった。
「ジークくーん、またとんでもない機械を作ったね。本当にばっちり鉱脈を見つけられるなら時代が変わるよ」
「たいしたことじゃない。ただの金属探知機だ」
「いや、それがすごいんだよね……」
まあな。
多分、町長か本部長を通して、国王陛下に寄贈することになると思う。
「ジークさん、試すって言ってたけど、山の方に行くの?」
アデーレが聞いてくる。
「そうなるな。お前らはどうする?」
「うーん……気にはなるけど、山かぁ……それに仕事もあるのよね」
ちょっと行って帰ってくるって距離じゃないしな。
「山に行きたい奴、手を上げてみろ」
そう言うと、エーリカとサシャが手を上げただけだった。
レオノーラに至ってはフル無視で銀の錬成を始めている。
「エーリカ、サシャ、行きたいのか?」
「気になりますし、私もどんなものか見てみたいです」
「私も。あと山を見たいです」
エーリカは地元のことだから。
サシャは観光気分だな。
まあ、王都は平地で山もちょっと距離があるからな。
「ゾフィー、お前は? 一応、お前も製作者だろ」
「眠いから嫌」
あー……遅かったしな。
「わかった。マルティナを頼むぞ」
「ええ」
「エーリカ、サシャ、いつでも出られるように準備をしろ」
「はーい。杖取ってきまーす」
エーリカが立ち上がり、支部から出ていく。
「杖はいらないだろ……サシャ、お前は?」
「私は最低限のものしか持ってないですし、特に準備はないです。杖もそもそも持ってないですしね」
杖を持ってないのか。
まあ、いらんしな。
「山登りなら杖がいるんじゃない? サシャ、私の杖を貸してあげるわ」
ゾフィーがサシャを見て、頷きながら言う。
「お前、杖を持ってきているのか?」
「本部長からもらったものだし、いつも持ち歩いているわよ。使ったことないけど」
じゃあ、無駄では?
「ふーん……お前の杖ってどんなのだ?」
そう聞くと、ゾフィーが魔法のカバンから杖を取り出した。
俺のと同じ金色の装飾がなされ、先端には竜の彫刻が施されている。
「お揃いか」
「そりゃ本部長からもらったものだからね」
「しかし、なんで竜なんだろうな。猫が良くないか?」
可愛い黒猫。
「絶対に竜が良いわ。あんたが猫の杖を作って、弟子にあげれば良いんじゃない?」
ゾフィーがそう言うと、レオノーラとアデーレが顔を見合わせた。
「猫かー……」
「魔法使いの杖っぽくないわね」
そりゃそうだ。
「アクセントで肉球マークがあるとか?」
「あ、それ良いわね。可愛い」
あれ?
あげる流れになってないよな?
お前らすでに持ってるだろ。
「好きにしなさいよ……じゃあ、これね」
ゾフィーがサシャに杖を渡した。
「あの……話的に大事な杖では?」
「いいの、いいの。使ってないもん」
「ハ、ハァ……では、お借りします」
「どうぞ、どうぞ」
サシャが杖を構える。
「どうですかね?」
「人のこと言えないけど、似合わないわね」
「ですかー……」
安心しろ。
皆、似合わないから。
いつもお読み頂き、ありがとうございます。
皆様の応援のおかげで書籍1巻、2巻に引き続き、第3巻も重版することになりました。
大変嬉しく思いますし、これからも頑張っていこうと思います。
ありがとうございます。
重版を記念いたしまして、明日も投稿させていただきます。
また、第4巻も今夏に発売予定です。
どうぞよろしくお願いします!




