第277話 頑張れマリー
エルネスティーネが遊びながらも教えていくと、マルティナも少しはマシになってきた。
エルネスティーネは辛辣ですぐに投げ出して遊び始めるが、指導力はあるようだった。
しかしながら3時のおやつを食べると、あくびをし、そのまま巣箱に引っ込んでしまった。
その後も仕事をしていき、終業時間になったので片付けをしていく。
「マルティナ、実家に帰るのか?」
戸締りを手伝ってくれているマルティナに聞く。
「ええ。今日は久しぶりの家です」
まあ、実家があればそうか。
「勉強会は毎日しているから時間がある時にでも来ていいぞ」
「はい。ご飯を食べたら伺います。エーリカ先輩の部屋ですよね?」
「ああ。そこだな」
ご飯を食べるところもそこだし。
「じゃあ、今日から参加します。エーリカ先輩、お邪魔します」
「うん。おいでよー」
「ありがとうございます。次の試験は厳しいでしょうけど、やれることはしたいんです」
あのマルティナからそんな言葉が聞けるとは……
エーリカのインゴット講座を右から左に流していた子とは思えん。
「……あいつの中で何か変わったのか?」
起きて、ヘレンの尻尾滑り台で遊んでいるエルネスティーネに小声で聞く。
「意識が変わったんじゃ。自分の立っている場所、目指さないといけない場所が明確になり、そのためにおぬしやハイデマリーといった多くの人間が力を貸してくれたことに気付けた。ようやく歩き始めたといったところじゃし、モチベーションは高い。次は資格という壁にぶつかった時じゃな」
なるほど。
その時はマリーとこのエルネスティーネの出番か。
「頼むぞ」
「わかっておるわ」
俺達は片付けを終えると、マルティナと別れ、支部裏の寮に戻った。
そして、部屋に入ると、デスクにつく。
「マルティナも成長したんだな」
「ジーク様が見捨てずに頑張られたおかげですよ」
そうか……
「そんな湿っぽい話?」
ゾフィーが呆れる。
「色々あったんだよ。お前から見たら無駄しかない錬金術に見えただろうがな」
「いやー、そうでもないわよ。魔力の大きさは本当にすごかったわ。あんなだらだらと魔力を流してもケロッとしているんだもん。あの量の魔力を私が流したら数時間も持たないわよ」
確かにそうだな。
俺も魔力が大きいから気にならなかったが、普通はそうだ。
「あれだけがあいつの唯一の才能と言って良いからな」
「一応、化学も得意でしょ」
まあな。
「お前、あいつが受かると思うか?」
「今のままでは厳しいわね。ただ、実技はセンスも十分にあるし、あれだけの魔力があればある程度補えるから希望は見えている。あとは筆記ね」
やはり筆記か。
「マリーから何か聞いてないか?」
「時間がかかりそうとだけ。ただ、弟子連中とは上手くやってるらしいわよ」
そうか……ならいいいか。
俺達はちょっとすると、エーリカの部屋に向かう。
すると、キッチンにはいつもの2人ではなく、3人がいた。
エーリカ、アデーレ、サシャである。
なお、レオノーラは普通に座っている。
「サシャ、今日もこっちで飯か? サイドホテルの料理も美味いぞ」
「お手伝いです。それにご飯は皆で食べた方が美味しいです」
「ですよねー」
エーリカが満面の笑みで同意した。
「お前が何か言ったのか?」
ゾフィーに聞く。
「1人であのレストランはちょっときついって言ったかな?」
俺は気にしない。
まあ、俺にはヘレンがいるし、1人っていうことはないんだが。
俺達が席につき、待っていると、3人が料理を持ってきた。
「サラダを用意したのは私なんですよー」
サラダはサシャらしい。
見ていたが、アデーレはスープだ。
「サシャは料理ができるのか?」
「そんなに? 実家暮らしですし、たまにお母さんの手伝いをするくらいです」
ふーん……包丁が怖いとか火が怖いとかいう感じではなさそうだったな。
俺達はこの日も皆で料理を食べ、ちょっとすると、勉強会を始めた。
すると、すぐにマルティナがやってきたので肝心の座学の方を見る。
「すみません……」
何も言ってないのに謝られた。
まあ、謝った理由もわかる。
間違っているどころか、問題の意味すらわからず、ずーっと参考書を読んでいるだけなのだ。
「わからないなら仕方がない。ちゃんと理解してから問題を解け」
「はい……」
「何がわからないのかもわからんのじゃろ?」
「はい……」
そうか……
「だから言ったじゃろ? 子供でもわかる物理から始めい」
「そうします……」
マルティナが参考書をしまい、別の参考書を取り出した。
「色んな参考書があるのか?」
物理は絞った方が良いと思うんだが。
「お姉さん達がくれました」
「これもダメ? あ、これも? じゃあ、これは? えーっと、妹が使ってたやつなら……って感じでどんどんとレベルが落ちていったわけじゃな」
ハイデマリーの弟子も資格を持ってない奴もいるらしいが、本部に就職できたエリート連中だからな……
レベルの差は仕方がない。
「それでいいからやってみろ」
「はい」
その後、俺、ゾフィー、エルネスティーネでマルティナの座学の方を見てやった。
正直、ハイデマリーは胃に穴が空くんじゃないかなって思った。
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