第274話 やればできる
俺とゾフィーはちょっとすると、エーリカの部屋に向かう。
すると、料理をしているエーリカとそれを見ているアデーレ、それにレオノーラとサシャがテーブルについて話をしていた。
「何を話しているんだ?」
レオノーラにそう聞きながらゾフィーと席につく。
「リートのこと。海と山が綺麗だねって」
「お前、山に行ったことがあるのか?」
ないって言ってなかったか?
「海も山も見るものだよ」
激しく同意。
「リートって本当に良いところなんですね。皆さんが良いって言う理由がよくわかります」
サシャが笑顔で頷く。
「俺もそう思う。難点は王都から遠いことだな。それで情報が上手く伝わっていなくて、辺境の田舎ってイメージしかない」
俺も最初は田舎に左遷って思ったし。
「それはありますね。そもそも南部の方の情報が入ってきませんから。主要な都市は大抵、北部ですし」
「確かにな」
俺達はその後も話をしながら待っていると、エーリカとアデーレが料理を持ってやってくる。
メニューは魚を中心にした魚介のフルコースだ。
「お待たせしましたー」
「おー……すごいです」
サシャが感嘆の言葉を漏らしながらキラキラした目で料理を眺める。
「じゃあ、食べましょうか」
俺達はエーリカが作ってくれた料理を食べる。
やはり美味しいし、ヘレンが尻尾をくねくねさせながら食べているのが愛らしい。
「美味しいですね。昼間の魚料理も美味しかったですけど、すごいです」
「いえいえー」
サシャに褒められ、エーリカが嬉しそうだ。
「魚なんて滅多に食べませんし、すごいですね。これだけでも来て良かったと思えます」
「ホントよねー……」
ゾフィーも美味しそうに食べている。
「リートは海に面しているし、山や森もあるから食材が豊富なんだよー」
「色々と美味しいわよね」
なんか貴族令嬢2人がアピールしている。
「へー……私は王都から出たことがないんで何もかも新鮮ですが、すごいですね」
「職場は近いし、家賃も安い。ご飯は美味しいし、錬金術の仕事はできる。私はジークさんの誘いに乗って、心底良かったと思ってるわ」
あー……やっぱりアピールっぽい。
「アデーレ先輩はそれで8級ですもんね。来月には7級ですか?」
「受かればね。微妙だけど、頑張る」
「私も頑張ります」
俺達はその後も料理に舌鼓を打ち、食後のお茶を飲んでまったりすると、勉強会を始めた。
「ふーん……あんた、筆記は問題なさそうね」
サシャの勉強を見ているゾフィーが頷く。
「そうですか?」
「うん。これなら10級は受かるでしょ。筆記の方は今を維持する感じでいいから実技の方を集中的に練習した方が良いわよ」
「実技……」
サシャが両手持ちで錬成をしているアデーレを見た。
「アデーレ……あんた、何やってんの?」
ゾフィーが呆れながらアデーレに聞く。
「ジークさんに下手くそだからこうやって練習しろって言われたのよ」
下手くそは言ってない。
思ってるけど、経験不足って言った。
「効果あんの?」
ゾフィーがこちらを見る。
「ある。違うものを同時に錬成するのは魔力コントロール、集中力なんかが飛躍的に上がる。でもまあ、サシャは10級だし、スピードを速める練習をした方が良いぞ。精度は問題なさそうだし」
「ふーん……じゃあ、サシャ、ポーションを作ってみて」
「わかりました」
なんかゾフィーが師匠みたいだな。
世にも珍しい年下の師匠だが……
同級生が弟子の俺ですら珍しいのに。
サシャが水が入ったビーカーに薬草を入れ、錬成を始めた。
やはり魔力が一定に保たれているし、良いものができそうな気配はあった。
しかし、30秒経っても錬成が終わらない。
さすがに遅すぎる。
「サシャ、もう少し魔力を流してもいいわよ」
「わかりました」
サシャが頷き、魔力を流すスピードを速める。
すると、あっという間にDランクのポーションができあがった。
「Dランクね」
「すみません。いつもはCランクが作れるんですけど」
「いや、それでいいのよ。あんたが受けるのは10級。あんたは背伸びをせずにまずはそこを目指すことよ。10級ならDランクはもちろん、Eランクで受かるわ。大事なのはスピード」
俺もそう思う。
「サシャ、試験には制限時間があるし、評価項目にスピードがある。いくら良いものを作ろうと遅ければ減点対象だ。多少、質が落ちてもいいからスピードを重視しろ。そうやって数をこなしていけば速くしてもCランクを作れるようになる」
俺は最初から(以下略)
「わかりました。もう一度、やってみます」
サシャが再び、水が入ったビーカーに薬草を入れ、錬成を始める。
すると、今度は10秒足らずで錬成を終え、Dランクのポーションが完成した。
「それで良いのよ。次はインゴットね……鉄鉱石がなかったわね」
ないな。
もう全部鉄に変え、アデーレがステンレス鋼の錬成に入っている。
「銀鉱石ならあるぞ」
「それでいっか」
「あのー、銀鉱石は自信が……あれってちょっと特殊ですよね?」
んー?
「一緒だ。やれよ」
「誰だって最初はできないわよ。いいからやりなさいよ」
どうせやることになるんだからやれ。
ボーキサイトも待ってるぞ。
「はい……この無茶ぶりがツェッテル一門だなぁ……」
「私らなんて水曜石を作らされたわよ」
「ステンレス鋼もね」
「階段を飛ばしますよねー」
銀鉱石なんて階段ですらないわ。
その後、銀鉱石の錬成も教えながらやらせたが、ちゃんと銀を錬成することができた。
やはり無茶ぶりではなかったようだ。
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