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左遷錬金術師の辺境暮らし ~元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました~   作者: 出雲大吉
第7章

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第268話 繋ぎ、繋ぎ、繋ぎ


 保留音がやむ。


『何よ?』


 子犬だ。


「よう、ゾフィー、体調はどうだ? 風邪だってな」

『絶対にあんたよ、あんた』


 失礼な。


「本部長だし、元は大臣だ。城に行って、文句を言ってこい」

『行くわけないでしょ』


 人見知りだから行ってもおずおずするだけだもんな。


「まあ、元気なら良かったわ。俺は死ぬかと思った」

『それはそうね。テレーゼが嬉しかったわー。マリーはクソ』


 やっぱり髪の毛アタックで無理やりか。


「俺も弟子達が天使に見えたな。迎えに来たのかとも思ったが……」


 まあ、アデーレは三途の川から引っ張ってくれたが。


『そりゃ良かったわね。それで何よ?』

「お前、ちょっとリートに来い。本部長もいいってさ」

『は? ジークられるの?』


 俺の名前は左遷の動詞じゃない。


「ちょっとこっちで問題が起きているんだよ。手伝ってくれ。暇って聞いたぞ」

『暇じゃないわよ』

「仕事が少なくなっているんだろ?」

『そりゃ新規の製作業務はないけど、研究や維持管理とか色々あるの』


 あるな。

 当然、俺もそこにいたから知っている。


「1、2週間でいいんだ」

『あ、そんなもん? うーん……魚は美味しかったわよねー』


 そうそう。


「三食ついてくるぞ」


 エーリカ食堂。


『まーたあんたのところか……』

「それはお前次第だ。別にホテルにでも泊まればいいだろ」

『寂しいじゃないの』


 それは知らん。


「じゃあ、そういうわけで数日以内に来てくれ。あ、サシャに繋いでくれ」

『サシャ? 受付の?』

「暇そうだからそいつと地元っ子のマルティナも誘うんだよ。一緒に来い」

『ふーん……あんた、女子が好きね。例の本がマジに思えてきたわ』


 【複数の女性との付き合い方】な。


「俺もクリスが良かったんだが、あいつは無理だってさ。クヌートでもいいんだが、さすがに魔導石製作チームは無理っぽい」

『まあ、それはそうか。わかった。受付に繋ぐからちょっと待ちなさい』


 ゾフィーがそう言うと、保留音が鳴りだす。

 そして、しばらくすると、保留音がやんだ。


『ジーク先輩、どうしました?』


 サシャだ。

 まあ、こいつは最初に電話に出ているからいるのはわかっている。


「ちょっと相談があってな。お前、1、2週間ほど、リートに来ないか?」

『リートに? 遊びにじゃないですよね?』


 遊びに来られても困るな。

 まあ、アデーレがいるが。


「仕事だ。ウチはちょっと人手が足りてなくてな。今日はその相談を本部長としてたんだよ。それでお前、暇そうだし、ちょっと仕事をしに来ないか? 受付や雑用じゃなくて、実技だぞ。来月の試験にも役立つと思う」

『あー……でも、私、資格なしですよ? お役に立てるかどうか……』

「大丈夫。そんなに難しいことじゃなく、魔法学校で習う程度の児戯だ」

『すみません。ジークさんに言われても……この国一番の難易度の学校の授業を児戯って……』


 児戯だよ、あんなの。

 しかし、俺は変わったんだ。

 バカにも無能にも寄り添える。


「大丈夫だっての。マルティナを誘うレベルなんだから」

『マルティナちゃん? ハイデマリーさんのところに出入りしているハムスターの?』


 マルティナをハムスターと呼んでいるわけではなく、エルネスティーネのことだろうな。


「それそれ。全員がバカだと思っているガキンチョだ。あいつでも教えればできる程度のことだし、お前も来い。必ず役に立つし、何なら勉強も見てやろう」


 アデーレが……


『へー……確かに勉強にはなりそうですね。それに皆さんがリートは良いところだったって言うんで興味はあったんですよ』

「じゃあ、来い。日にちなんかはゾフィーと相談してくれ」


 どうせならまとめて来ればいい。


『わかりました。本部長がいいって言ってるんですよね?』

「ああ。出張扱いだから無料の合宿旅行とでも思ってくれ」


 なお、俺は前世でも今世でも合宿とやらに行ったことがない。


『わかりました。それではその方向でゾフィーさんと相談してみます』

「早めに来いよ」

『ええ』

「じゃあ、そういうわけでマルティナに……いや、ハイデマリーに繋いでくれ」


 まずは師匠に話した方が良いだろう。


『わかりました。少々、お待ちください』


 またもや、保留音に変わる。

 そして、ちょっとすると、保留音がやんだ。


『ジーク? 何の用ですの? 私はお前と違って暇ではなくてよ?』


 クソのゴミカスマリーだ。


「この前ぶりだな。マルティナはどうだ?」

『勉強してますね…………いえ、ハムスターにヒマワリの種をあげてました』


 エルネスティーネか。


「そうか。少しは成長したか?」

『ほんの少しだけね。まあ、本人のモチベーションは高いですし、ハムが役に立ってます。実に良い使い魔ね。本人はもちろん、他の子達まで教えています。お前を見て、常々思っていましたが、主人の人格を捨て、使い魔がお前達の身体を動かした方が世のためではありません?』


 ヘレンヴァルトとマルネスティーナになるわけか。

 あっという間に駆け上がりそうだ。


「ドロテーやカルステンもか?」

『鳥はダメでしたね』


 ハイデマリーが笑う。


「マリー、実はリートの方でちょっと問題が起きていてな……」

『例のジーンでしょ?』

「知ってたのか?」

『まあ、さすがにね……』


 そういうことに興味を示さなかったハイデマリーなのに……

 本格的に本部長の椅子を狙い始めたのかな?


「それだ。ウチで鉄や銅の不足が起きているんだよ。鍛冶屋から廃品から鉄を抽出する仕事を受けたんだが、量が多くてな……今、人集めをしているところなんだよ」

『なるほど。それでマルティナですか』

「ああ。地元の人間だし、抽出くらいならあいつにでもできるだろ」


 できるよな?


『できませんねー……教えてあげてちょうだい』


 できないか……

 まあ、教えたらできるようになるだろ。

 最悪はエルネスティーネが何とかしてくれる。


「そういうわけで1、2週間ほど借りていいか?」

『わたくしは構いませんわよ。ただ、マルティナの意思とギーゼラさんに確認を取った方が良いですわよ?』


 あ、親がいたな。


「わかった。ちょっとマルティナに代わってくれ」

『はいはい……マルティナ、ジークよ』

『え? ジークさん? はーい……』

『こら、ヒマワリの種を置いていかんか』

『あ、ごめんなさい』


 はよせい。


『もしもし、ジークさん? お久しぶりです』

「ああ、久しぶりだな。元気か?」

『ええ。私もお母さんも元気です。あ、エルちゃんも』


 そいつが元気なのは知っている。

 今もたらふく食ってるだろ。


「実はちょっとこっちで仕事があってな。それでゾフィーと受付のサシャが手伝ってくれることになっている。お前にも手伝ってほしいんだ」

『私ですか? バカで不器用で無能な役立たずですよ』


 成長している……

 実に的確かつ冷静に己を判断できるようになったか。


「そんなお前でもできる仕事だ。せっかくだし、一回地元に帰ったらどうだ? ほんの1、2週間で済む。本部長もマリーも良いって言っている」

『あ、そうなんですね。うーん……ちょっとお母さんと相談しても良いですか? お母さんも仕事があるんで』


 仕事先を見つけたのか。


「ああ。それで決めてくれていい」

『じゃあ、夜にでも相談してみます。返事は明日の朝でもいいですか?』

「そうだな。支部にかけてくれ」

『わかりました。お魚が食べたいです。持ってきてもらったやつは全部食べちゃいましたよー』


 やっぱり魚シックにかかったか。


「帰って、たらふく食べるといい。じゃあな。あ、ギーゼラさんによろしく」


 マルティナよりもそっちの方が心配だったりする。


『ええ。ありがとうございます』


 電話を終えたので受話器を置いた。


「ふう……」


 長い電話だった……


いつもお読み頂き、ありがとうございます。

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ぜひともそちらの方も読んで頂けると幸いです。


よろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
「帰って、たらふく食べるといい。じゃあな。あ、ギーゼラさんによろしく」 親へよろしくと言える時点でジークが成長してる……絶対昔は思い出してもよろしくなんて言わんかっただろう
小さなLさん、一言だけの出番立ったけどうれしい。
声をかけるのが全て女性って、そもそも前提として男性は魔術師狙いで錬金術師選ぶ人が少なかったんでしたね。 そして、ジーク自身が言ってるとおり男性陣は忙し過ぎて声かけ止められてた。
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