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「私も」
次々に挙手される。
「税を軽減すると、来年戻す際の市民からの反発が懸念される。むやみに減免措置を取るべきではない。国庫も逼迫させる可能性があり、万が一の有事の際に動けない事態となりかねない。」
「富裕層からばかり取り立てては、働く意欲が低下してしまうのではないか。結果税金対策も兼ねてあまり働かない方針をとるようにならないか。」
「減免の前例を作ると、以降もこういった状況下で減免を求められるようになるだろう。毎年そのような事態になった場合はどうするのだ?」
はやり貴族ばかりの集まり。
国のためよりも自分たちのことばかりだ。
確かに懸念される部分についてはありえるかもしれない。
しかし、あくまで措置なのだからその条件などを十分国民へ示して理解を得れば良いのではないかと思う。
大事なのは国民との信頼関係だ。
議長はほほえみながら、
「ディアス殿。あなたの治めるゴールドガーデンでは減免措置を実施されていますが、具体的にはどのように対策をされた上で実施に至ったのでしょうか?」
突然の指名に驚くが、ここでうろたえては今後甘く見られる。
堂々と答えねば。
「はい、私の領地では税の減免措置を取り入れております。まずは納める税率を一律とするのではなく、地域ごとの収益を調査し、1人あたりの年俸を計算しました。その上で無理のない税率を周囲の者たちと相談しました。地域ごとに説明会をしてまわり、今後の経済発展への計画を説明し、その間は減免措置を取り入れるということを説明しました。あくまでも特例であるということを十分にお伝えして理解を得ました。現在の蓄えでは減免も1年が限界であることもご理解頂いたため、来年以降は再度年俸調査を行なって決めるということにしました。来年の税収も万が一見込めない場合については肥沃な土地である数カ所の村へ説明に行った際に多少の税負担を背負って頂くよう依頼し、ご了解いただいておりますし、何なら今年から早速税率を少し多めに設定して構わないとまでおっしゃって頂きました。もちろん見返りはあります。輸出入の際の関税をその地域では廃止すると。肥沃な土地で生産されたものを広く流通させることで更なる増収を見込み、工業地などは不足する材料を安く得られるため工業分野でも生産性を高めることが出来ます。それによって領地全体の収益増加を見込み、安定的なものになったら税率を戻していくのです。関税は今後どうしていくかは検討中です。以上ですが、何かご質問はございますか?」
何とか答弁を終えた。
1人の男性が挙手する。
「王都では主に貴族が税負担をすることとなるでしょう。それによる貴族への見返りはどのように設定すべきとお思いですか?」
それを私に聞くのか。ゴールドガーデンのことでの質問ではないのか?
「そうですね、貴族の皆様の収入が何であるかによるかとは思います。しかし、家ごとに措置を検討するのは途方も無い作業。一律で皆が納得できる措置を検討されるのが良いでしょう。寄付制としていくのがよろしいかと。額の大きい順に議会への参加の権利を与えるとか、新たに作られた道路や施設などの命名権を与えるとか、額に応じて使える範囲を定めた年間通行手形を進呈するとか。皆様が何を望むのか私にはわかりませんのでその程度しか考えが及びません。申し訳ありません。」




