水無月トラブルブライダル
「いやー突然ですねー! 結婚式ごっこやるとか意味が分かりません!」
なんて言いながら私はゲルっちから指示された場所に向かう。昨日通った時には更地でしかなかったはずなのにそんな場所で結婚式ごっこなんてやるんですかね。いやーでも見渡す限り青空の草原で結婚式ってのもオツなのかもしれません!とか考えていましたけど……
「なーんで無駄に豪華なチャペルが完成しているんですか! というより結婚式は神が関係していますよね!」
そうなんです、結婚式は神の存在が前提なんです。ゲルっちはそんなもの認めないはずです。
「大正解じゃ! ではゆくぞ! スリーツーワン……」
ゲルっちの声が聞こえてきました、多分幻聴だと思いますけどなんかカウントダウンしてません?えっ、まさか天丼なんですかっ!?
「爆破……はしないのじゃ。 嘘、爆破するのじゃ」
「やっぱり天丼なんですかー!」
ラナっちが一日で建てたであろうチャペルは僅か数十秒で灰と化しました。ラナっちに話しても「まあいつも通りのゲルス様っすね」って返されそうですけど!
いや、おかしいですよ!結婚式ごっこの予定でしたよね!?
「チャペル破壊したら結婚式ごっこはどうするつもりなんですか!」
「異世界の結婚を祝う儀式やってみたいなと思って建物から用意したのはいいのじゃが、今日もう一度調べてみたら神に祈れとか記述されていての」
「全部調べてからやりましょうよそこは!」
「伏せていた本が悪いのじゃ!わっちの過失割合は2じゃ!」
「5はありますよ!」
とりあえず瓦礫掃除から始めることになりました!バカすぎますっ!
*
「ということがあったんですよ!」
「ゲルスっぽいアホ話じゃねーか。 しかも衣装まで用意してたんだろ?」
あれから数日後、こういう俗っぽい話に興味がなさそうなクーに話してみた所どうやら衣装まで用意していたことが判明しました。バカ度が更に上がりました。
「そもそもだぜ、結婚式ごっこってことは相手がいるんだろ? 誰を指名するつもりだったんだよ。 ラズはなんだっけ、神父?役って話だろ?」
「私なにも聞かされてないからわかりませんよ! 場所しか聞かされてなかったんですから!」
「もしかしたら興味がある奴でもいたんじゃねーか? そもそもゲルスに結婚するって概念があるかはわかんねーけどよ」
「天使にも結婚なんて概念はないです、それにゲルっちは恋愛話に興味持ちませんよ! いつもの突発的な行動欲からやってみたいってなっただけでしょう!」
「異世界の文化ならなんでもやりたがるのがゲルスだからな……」
でも本当に誰を相手役にするつもりだったんでしょう、真相はゲルっちのみが知る、なんてオチなんでしょうけど。
*
「うーむ、衣装だけならなかなか良いのじゃがな……」
ゲルスフォルスの部屋にて、衣装を手に鏡の前でポーズを取っているアホがいた。あまりにも滑稽、というより純白じゃなくて漆黒のウェディングドレスである、喪服?これ。
「黒を基調にした方がかっこいいが、ここはやはり白の方が良かったかの? 黒は黒で意味があるらしいのじゃが……」
失礼、どうやら喪服ではなくちゃんと意味があったらしい。あなた以外には染まりませんだって、裁判官と同じこと言ってるね。
「しかしあのような儀式だとは……今後このドレスを着る機会はないのじゃ」
それよりも相手役はだれだったんだろうね。僕が探す限り衣装は見つからなかったよ。
*
同時刻、アルは空中庭園を散歩していた、左手にアイス、右手にわたがしを持ちながら。
「なにこれ、もぐもぐ、異常な物体を発見、もぐもぐ」
アルの目の前には真っ黒こげの物体が落ちていた。それも異常な黒さの。
「怪しい、もぐもぐ、復元を開始する。 【Auftauen lecker bleiben】」
アルは無駄に大層な魔術を発動した、焦げた四角い物体に使うようなものではない。五重の魔法陣が展開されているが、過剰ではないのだろうか。
「復元困難、もぐもぐ、出力を増加させる。 【Heißer höhere Watt】」
過剰じゃなかった、どれだけの火力で焦がされたのだろうか。そもそもいつ焦がされたのだろうか。出力を増加させたおかげか焦げた物体が元の色を取り戻していった。
「もぐもぐ、復元に成功、鑑定を開始する……これは」
四角い物質の真ん中には『新郎君第一号』の文字が描かれていた。これを相手役と言い張るつもりだったのか。
「壊した方がいいかも、これ、もぐもぐ」
でも面白いから集会の時に見せたらしい、よりゲルスのバカ度が上がった。




