死来襲クッキング!
魔人王女であるアルドゥークの好きな物は料理である。ある日、ふと自分でも料理を作ってみようと思ったことが事の始まりである。
「そういえば料理、自分で作ったことなかった」
料理を作ろうと思ったのは自分の為でもあり、ゲルス達を喜ばせてみたいという点もあった。あと料理が作れない奴にマウントを取るという邪な考えもあった。
「まずは座学から始める」
アルの目の前には大量に積み上げられた料理本がある。誰でも美味しく作れるデザート、簡単クッキングガイド、どれもこれも初心者向けの本であった。
「書いてること、多分理解した」
本を開けてから僅か数分、アルは座学を終えた。積み上げられた本の中で1冊しか読まずに。
*
「いざ、実技の時間」
次の日、座学を終えたアルは早速実技を開始、一丁前に調理器具だけは揃えているがこれはゲルスの調理上から借りてきたから当然である。
「まずはフルーツジュースから作ってみる。確か果物を砕けばよかったはず」
アルは肉叩きを手に取った、当然肉を柔らかくするための物とは知らないしジュースの作り方なんて知らない。
「そりゃ」「ほれほれ」「砕けろ」
見るも無残な姿に変えられていく果物の数々、アルを止める者はいなかった。なぜなら皆に黙って料理を練習しているからである。誰かに教えを乞うのは最終手段であり恥じだと、魔人としてのプライドがそうさせたのである。
「いいね、いい感じにぐちゃぐちゃになってきた」
アルは砕いたはいいものの、その後のことを考えていなかった。
「で、これどうするの」
本に書かれていたことを思い出すアル、ただし読んだ本に果物を砕くような奴向けの記述なんてないし読んだ本にフルーツジュースのことなんて書いていなかった。
そして、アルは結論として。
「今日のところはこれくらいにしといてやる」
逃げることにした。
*
その日の夜、アルは料理の見学をしていた。
アルは教えを乞いたくはなかったが、他人の技術を見ることは普通にする。
「珍しいのぉ、アルが調理場までやってくるとは」
「いい匂いしてたから」
「それよりも器具無くなってないか?」
「普通に料理できるし大丈夫じゃろ」
アルとは違い、ゲルスの料理の手際は非常に良い、あと意外なことにクーも料理が上手であった。アルはクーにこんなことで負けた気になるのはなんか嫌だな、と感じながら見学をしていた。
「やはりクーの野菜切りは早いのぉ! 大剣を力任せに振り回しているとは思えぬのじゃ」
「馬鹿にしてるのか、それ」
「いや、しとらんよ」
会話をしながらテキパキと料理をするゲルスとクー、アルは正直技術を吸収できる気がしなかった。
そんなこんなで料理は途中試食と称して全て消滅するなどのトラブルがありながらも安全?に終了したのであった。
*
「こうなればあの魔術を使う時」
また次の日、自分はメシマズなのだと諦め、別のアプローチをアルは採ることにした。
「召喚・命令厳守不死人形」
そう、命令通りに動く人形に料理本の内容を記憶させ、料理してもらうことにした。
「これなら失敗はありえない、人形よ、燃焼ソーヴァを作れ」
そう命令されると人形達は働き始める。アルがお茶を淹れ終わることには完成していた。完成した料理を見てアルは一つ気付いてしまう。
「これ、私が作ったことになる?」
でも作らせたは作らせたし、味は問題ないので一瞬で食べた。
*
またまた次の日、アルはいっそのことゲルスに質問をすることにした。
「料理を上手く作れる人、どう思う」
「突然じゃな! うーむ、上手く美味しく作れるかよりもわっちは愛情というかそうじゃな、食べてもらいたい、という心がこもっている方がいいと思うのじゃ」
「ふむふむ、なるほど」
アルは聞くや否や走って調理場に向かった。今の時間は誰も料理をしないので見られることもないからだ。
「なんじゃったんじゃ、アルよ……」
あまりの勢いと唐突な質問内容にゲルスは混乱していた。
*
夕方頃、くつろいでいるゲルスの目の前に黒に焦がされた物体が置かれていた。
「聞くのじゃが、これ料理じゃよな……?」
「うん、料理、しかも心を込めて作った」
「心を込めればなんでもいいってわけではないのじゃよ……?」
「食べてもらいたいって、思って作ったから」
「本当に食べさせる気があるのじゃ!?」
アルは本気である、ゲルスに食べてもらいたくてこの料理を作り上げたのだ。
「食べてね、それで感想もらうから」
「嫌なのじゃが、普通に」
押し問答の末、ゲルスは食べさせられることになった。途中悲鳴が上がりながら、聞きつけてきたラナやクーも食べさせられた。
「ふふっ、皆喜んでくれてる」
以降、アルは料理禁止令を出されることになった。巻き添えで何もしてないのにラズリエルも禁止された。
「なんで私まで禁止されるんですかー!」




