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むいむいたん  作者: 無為無策の雪ノ葉
8  二重螺旋攻略
734/999

8-82 二重螺旋第四選択

―1―


 14型に扉を開けて貰い、その先へと進む。扉の先は、先が見えないほどの長さの通路だった。相変わらず薄暗いな。

 通路の両端には剣や斧など、様々な武器をもった騎士鎧が並んでいる。これは、アレか、もしかして、鎧が動き出すとか、そういうパターンか。


 となると、とりあえずやることは一つだな!


 俺は並んでいる騎士鎧の一つに取り付き、手に持っているロングソード? を取り外そうと試みてみる。うん、うが、うご、かた、うぎ、動かねぇ。

 か、堅いぞ。これ、剣が篭手にくっついているかのように張り付いていて、取れそうにないぞ。うーむ、これは俺の力だと無理だな。


 というわけでッ!


 困った時の14型さん!


 俺は14型をじーっと見つめる。

「マスター、いくら優秀な私でも出来ることと出来ないことがあるのです」

 そうか、出来ないか。14型でも無理なら、仕方ないな。まぁ、今更、この程度の戦利品、特に欲しくないもん。欲しくないもんな!


 よし、騎士鎧が動き出すことを考慮して、油断せずに進もう。


 俺が周囲を注意しながら歩いていると、右側にある、手に何も持っていない騎士鎧の一つが、大きな音を立てて、突然、崩れ落ちた。うわ、びっくりするなぁ。


 ……。


 しかし、何も起こらない。何だ、ただ騎士鎧が壊れただけか。これは、アレだよな、お化け屋敷とかのびっくりさせるだけのトラップと一緒だよな。


 そのまま進み続け、何事も無く、次の部屋の入り口と思われる扉に到達する。うーむ、本当に何も無かったな。何というか、ここは、ただの通路だったのかな?


 何というか、今回の迷宮ってさ、迷宮らしい迷宮というか、殆ど魔獣も出なければ、宝もない、あんまり美味しい迷宮じゃないよなぁ。




―2―


 扉の先は、ちょっとした講堂くらいの広さを持った広間になっていた。


 部屋の奥には、下側にドアノブの付いた小さな扉、そして、中央に台座、と、その上に天秤。天秤の左側には水晶玉が乗っており、その重さで傾いている。

 部屋の左右を見れば、騎士鎧が2体ずつ並んでいる。


 右側、一つ目の騎士鎧は、左手に剣、右手に小さめの石の球を持っていた。

 右側、二つ目の騎士鎧は、右手に盾、左手に先程と同じくらいのサイズの石の球を持っていた。


 左側、一つ目の騎士鎧は、左手に斧、右手に大きめの石の球を持っていた。

 左側、二つ目の騎士鎧は、左手に槍、右手に中くらいの石の球を持っていた。


 えーっと、これは、またアレか。謎解きか。


 うーむ。天秤に水晶玉、周りの騎士鎧は石の球を持っている――どう考えても関連性があるよな。これをどうにかするんだろうな、ってのは分かるんだが、色々なパターンが考えられ過ぎてなぁ。せめて、ヒントが欲しい。例えば、水晶玉と石の球で重さを同じにしろ、とか、水晶玉と石の球を入れ替えて同じ状態にするとか、重さを量りながら、騎士鎧が持っている球の重さを全部同じにしろ、とか、そういうヒントが欲しい。


 この状況だけだとさ、ホント、どうして欲しいのかが分からないんだよな。


 ヒントがないか、探してみよう。


 それにさ、もしかしたら、目の前の扉が、何もしなくても開くって可能性もあるしな!


 扉を調べると、その下側に付いているドアノブの部分が動かせるようだった。俺の背の高さより低いくらいの位置にあるけどさ、これ、ドアノブじゃないのか? まぁ、ドアノブとしては低い位置にありすぎるな。

 それを動かしてみると、中に何やら球体がはめ込めそうなくぼみが作られていた。これは、アレだな。どう考えても、天秤の上に乗っている水晶玉をはめ込むって感じだよなぁ。それで、この扉が開くってコトで間違いないだろう。


 となると、謎解きのパターンが狭められるな。あの水晶玉が必要――多分だが、天秤のもう片方に石の球を乗せて同じになる重さを量って、それで入れ替えるって感じじゃないかな。まぁ、まず間違いないだろう。


 それは、それとして、だ。


 とりあえず、何が起こるか、水晶玉を取ってみるか。確認のために試してみるのは重要だからな。


 俺が天秤から水晶玉を取ると、入り口と出口の扉の前に金属製の柵が飛び出てきた。おー、閉じ込められたぞ。

 そして、天井にトゲが飛び出し、大きな音を立てながら、ゆっくりと落ちてきた。吊り天井かぁ。現実で、こんなモノを目にする機会があるとはなぁ。人生、分からないもんだぜ。ホント、大掛かりな仕掛けだな。


 じゃ、とりあえず水晶玉を戻すか。俺は天秤の上に水晶玉を戻す。


 ……。


 あ、あれ?


 吊り天井が止まらない。扉の前の柵も、じゃきーんと伸びたままだ。


 あれれ?


 あれー、おかしいなぁ。こういう罠ってさ、普通、元の状態に戻したら、戻っていくんじゃないか?


 ……。


 いやいやいや、これ、ヤバくないか。ヤバイよな? 何で、止まらないんだ? 何で、元に戻らないんだ? 今、閉じ込められているんだぞ。あんな天井に潰されたら、ミンチより酷い状態になるぞ。


 ヤバイ、ヤバイ。どうする、どうする?


 水晶玉を秤の逆側に置いてみるか? ここまで来たら、モノは試しだ。やってみよう。


 天秤の反対側に水晶玉を置いてみる。すると、周囲の騎士鎧のバイザー部分が赤く光り動き出した。

 騎士鎧たちが手に持った武器を振り回しながらこちらへと歩いてくる。


「マスター、頭がむいむいですか」

 14型、お前、頭がむいむいってどういう意味だよ。俺に分かる言葉で喋りやがれ。って、14型を構っている場合じゃないな。


――《インフィニティスラスト》――


 迫ってきていた剣持ちの騎士鎧に無限の螺旋を放つ。騎士鎧が大きく吹き飛び、そのまま壁にぶち当たる。鎧はバラバラだ。うん? 意外と弱い?

 俺が盾持ちの騎士鎧の攻撃を回避していると、バラバラになった剣持ちの騎士鎧の胴体部分から、橙色の触手が伸びた。ひゅんひゅんと音を立てながら触手が伸び、バラバラになっていた他のパーツに取り付く。そして、元の姿へと戻ろうとしていた。何だ? もしかして、あの触手みたいなのが本体なのか? 何だか、魔族が作っていた魔石暴走体とそっくりだな。


「にゃ!」

 頭の上の羽猫が鳴く。どうした?


――《ピュリフィケイション》――


 頭の上の羽猫がスキルを発動させる。


 羽猫から大きな光が膨れあがり、広がっていく。光に触れた触手は白い塊に姿を変えていく。


「にゃ、にゃ!」

 頭の上の羽猫が得意気に鳴いている。なるほど、騎士鎧の中から本体の触手を出せば、お前が《ピュリフィケイション》のスキルで倒してくれるんだな!


 そうと分かれば!


――[エアバースト]――


 盾持ちの騎士鎧の前で空気が爆発する。その勢いで騎士兜が吹き飛ぶ。それに合わせて、中から触手が顔を覗かせる。こんにちは!


――《ピュリフィケイション》――


 すかざす羽猫が光を放ち、触手を白い塊に変える。


 見れば、もう片方を受け持っていた14型の方も騎士鎧はバラバラになっていた。何だ、あっさりだな。


 よし、勝った。

「にゃ、にゃ!」


 いや、勝利を喜んでいる場合か。大きな音を立てている天井は、もう、かなり近くまで迫ってきている。これは、余り時間がないぞ。


 バラバラになった騎士鎧たちから、急ぎ、石の球を拾う。急げ、急げ。


 石の数は4つ。余りパターンはないはずだ。


 天秤の片方に水晶玉を乗せ、もう片方に石の球を乗せる。最初は小さいモノからだ。小さい石の球を乗せると、そちらの方が沈んだ。へ? こっちの方が重い? サイズはトリック? いや、考えている場合か、次だ、次。


 重い小さな石の球を取り、次は同じくらいのサイズの石の球を乗せる。今度は、少しだけ沈んだ状態で止まった。水晶玉の方が重い。これに……、


「マスター、時間がありません!」

 14型が叫ぶ。


 へ?


 見れば、天井のトゲは、もう目前まで迫っていた。の、ノーッ! 早すぎる。


――《魔法糸》――


 俺は《魔法糸》を飛ばし、水晶玉を取る。間一髪、その上をトゲが通っていく。天井のトゲが天秤を壊し、更に落ちてくる。やべぇ、俺は背が低いからいいけど、って、そういう場合か!


 天秤が壊されたら……。


 あー、詰んだ! 後は潰されるだけか……。


 ……。


 しかし、天井のトゲが迫ってくる気配はない。あ、アレ?


 俺が顔を上げると、14型が無言で天井のトゲを持ち支えていた。14型の体からギリギリと軋むような音が聞こえる。お、お前……。喋る余裕もない感じだな。


 こ、これは……。どうする、どうする。14型も、そこまでは耐えられそうにないぞ。でも罠を解除する為の天秤は壊れてしまったし……。


 ……ッ!


 こうなったら力尽くだ!


――《飛翔》――


 《飛翔》スキルを使い、地面を這うように出口の扉前まで飛ぶ。


――《スイッチ》――


 《スイッチ》スキルを使いスターダストを取り出す。


――《エターナルブレス》――


 白く輝く息を、扉を隠している金属の柵へと吐きかける。更にサイドアーム・アマラをふり、スターダストを槍形態に変える。


 いくぜッ!


――《W百花繚乱》――


 スターダストと真紅妃から穂先も見えぬほどの高速の突きが放たれる。無数の突きが白く凍り付いていた金属の柵を削っていく。


 行け、行け、行けーーーーッ!


 そして、金属の柵が砕ける。早く、早く。


 俺はすぐにドアノブ部分に水晶の球をはめ込む。すると、それが合図だったかのように扉が開き始めた。よし、正解だ。何にせよ、正解だ。


『14型!』

 俺は14型に天啓を飛ばしながら、扉の向こうへと転がり込む。そして、天井のトゲを支え持っていた14型も、その手を離し、残像が見えるほどの早さで、地を這うように滑り込み、こちらへと駆け込む。それが合図だったかのように天井が、その部屋を押し潰した。


 は、は、はは。危ね。ホント、ギリギリじゃん。


 いやぁ、何とか突破出来たけどさ、これ、帰れなくなったよなぁ。

2018年3月12日修正

ドアノブる部分が動かせる → ドアノブの部分が動かせる

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