8-81 二重螺旋第三選択
―1―
にしても、だ。
闇(黒)と光(白)の四角い箱だけは相反だったからさ、逆順を試していれば……いや、今更言っても仕方ないな。
今はとりあえず下の階に降りよう。
「にゃ!」
頭の上の羽猫が元気な声を上げる。こいつ、もう、完全に体調が回復しているよな。それなら、そろそろ頭から降りろよなぁ……。
ま、まぁ、アレだ。階段を降りよう。
幅広な、そう、俺が8人くらいは並んでも大丈夫そうな階段を降りていく。これ、あの1個の岩をくり抜いて作っているのかなぁ。でも、すでに地表に出ていた部分より下に降りているよな?
薄暗く先が見えないなか、黙々と階段を降りていく。
黙々と階段を降りていく。
がんがん階段を降りていく。
ただ、ただ、階段を降りていく。
……。
長い!
超長い!
何だ、この長さ、おかしく無いか?
魔獣も出ないから変化もないし、あー、もう、これ『世界の壁』より酷いぞ。
あー、うー、やー、たー!
……。
そろそろ、時間も時間か。気分転換を兼ねてご飯にしよう。
『14型、頼む』
なんだかんだで、ポンちゃんに1週間分の食料を用意して貰って正解だったな。元々は島に着いたら帰還するつもりだったから、多すぎるかなぁとも思っていたんだけどさ、今のような状況なら、これでも心細いくらいだもんな。
「マスター、どうぞ」
14型が俺の口に無理矢理、肉まんやらお水やらスープやらを突っ込む。もぎゅ、もぐ、いや、だから、お前、加減しろよ。俺は、噛んだり、飲み込んだりする必要が、もぐ、ぐ、ぐはぁッ!
ああ、料理が、食べ物を吐いちゃったじゃないかよッ! 食べ物を粗末にするのはダメだってば!
『14型、ここではサイドアーム・ナラカが使えるから、自分で食べれる。フォローは必要無い』
頼むから、自分のペースで食べさせてください。あー、もう、貴重な食料を無駄にした。ホント、こういう所は機械的というか、融通が利かないよなぁ。
『14型、今日はここで一休みすることにする』
「マスター、了解です」
とりあえず、時間が時間だからな。ここなら魔獣も出そうにないし、眠るか。
そのまま階段に横たわり眠ることにする。
そして、翌朝。
今日も階段を降りますか!
階段を降りていく。先が見通せない薄暗い階段を降りていく。ホント、長いなぁ。
……。
黙々。
黙々。
ただ、ただ、階段を降りていく。
アレ?
階段が汚れている。一歩、降りた先の階段が、誰かがそこで飲み食いでもしていたかのように汚れている。
いや、ちょっと待て、ちょっと待て。
これは、昨日、俺たちが食事した跡じゃないのか? そうとしか見えないぞ。
おかしい、おかしいぞ。
それに、だ。よく考えたら、《暗視》スキルがあるはずの俺が、何で薄暗くて先が見えないんだ? 《暗視》スキルが無効化されている? いやいや、おかしいだろ。
『14型、戻るぞ』
俺はきびすを返し、階段を上がっていく。
階段を上り続けると、やがてうっすらとした灯りが見えてきた。そして、上がりきった先は、四角い箱や柱が並んでいた広間だった。いやいや、昨日は、これ以上の、もっと何倍も、何十倍も下に降りただろ!
まさか、この階段、無限ループしているのか? いやいや、現実的に考えてループって何だよ。ループするって怖いだろ。幻想や幻覚じゃあ、あるまいし……。
『14型、分かるだろうか? 何か、気付いたことはあっただろうか?』
俺の天啓を受けた14型はわざとらしく首を傾げる。
「マスター、質問が抽象的過ぎるのです。それでは、いくら有能な私でも答えるのが難しいのです。ただ、一つ言えるとすれば、昨日、マスターは、座標軸が余り大きくは動いていませんでした」
分かってるじゃねえかよ!
って、どういうことだ?
俺は降りたつもりだったが、降りていなかった?
―2―
試せることを色々と試してみよう。
階段の一段、一段に銅貨を置きながら降りていく。これ、先が見えないほど薄暗いってのが厄介だよなぁ。
すると、30分ほど、降り続けたところで、先程、置いたはずの銅貨が見えてきた。ループの一周が30分ってところか? いやいや、それでも結構な長さだぞ。30分も階段を降り続けるとか充分、長いよな! ま、まぁ、昨日みたいな半日、階段を降り続けることを思えば短いけどさ。それでも充分、長い階段だよ!
さて、ループというか、そういう感じになっているのは確定したわけだが! これを抜けるにはどうしたらいいかって、コトだよなぁ。視界が悪いからか、スイッチとか、そんな感じの線も見えないしさ。
うーむ。
――《魔法糸》――
――《魔法糸》――
――《魔法糸》――
《魔法糸》を放出し、長く伸びるように紡ぎあわせていく。
『14型、この《魔法糸》を持って、とにかく降り続けて欲しい。途中、俺が紐を引っ張ったら戻ってくるのだ』
「マスター、了解です」
14型が《魔法糸》の端を持ち、勢いよく階段を降りていく。さあて、これでどうなるか、だよなぁ。後ろから現れたり、目の前にテレポートでもしてきたりしたら驚くな。後ろから現れた時は、この《魔法糸》はどうなるんだ? な、謎だ。
しばらくは、まとめていた《魔法糸》が、しゅるしゅると伸び続け、そして、一瞬だけぴーんと勢いよく伸びたかと思うと、それ以降は、まったく《魔法糸》が伸びなくなった。
うーん、どういうことだ? 14型が動きを止めたのか?
とりあえず、そのまま待ち続ける。
待ち続けるが、何も変化は無い。《魔法糸》が伸びる気配はない。
うーむ。
一旦、14型に戻って貰うか。
俺は14型への合図として《魔法糸》を引っ張る。
そして、そのまま待ち続けると《魔法糸》の端を持った14型が現れた。
『14型、階段を降り続けていたのだな?』
俺の天啓に14型が頷く。
「マスターのご命令のままに」
ご命令のままに、ってさ、こういう返事の時に使う言葉じゃないと思うんだが、ま、まぁ、とりあえず、14型が階段を降り続けていたのは間違いないようだ。
うーむ。
わからん。本当にわからないぞ。
ループでは無いようだが、でも、うーむ。いや、重要なのは、ここの抜け方だよな。それが分からん。ホント、分からないな。
まぁ、このまま降り続けても埒があかないし、一度、戻るか。白蛇やクロアさんから、何かヒントが貰えるかもしれないしな。しょうがない、探索はここまでだ。
『14型、戻るぞ』
俺は一旦戻ることにする。
そして、階段を上っていると……。
あ、アレ?
階段の途中が持ち上がって開き、そこに扉が現れていた。
へ?
な、何でだ?
何が起こったんだ?
いや、これ、先に進む扉だろうけどさ。何で現れた?
いやいや、何で現れているんだよ!
分からない、原因が分からない。
いや、でも、これはチャンスか。
何故か、謎解きが、答えが目の前にあるんだ。これは進むべきだ。何か、俺の行動によって開いたんだろうけどさ、それを次も行えるかっていうと難しいだろうからな。
このチャンスを生かして進むぜ!




