8-1 冒険者ギルドにて
―1―
《転移》スキルを使い、本社に戻ってきた。
いやぁ、やっと帰ってきたんだぜー。バーンたちと二手に分かれて、台座が使えるスキル禁止の塔を戻れば、幼虫が沢山居た場所に巨大な甲虫の死骸が残っているし、貴重な素材ぽいから、それをバーン君にお返しして、まぁ、そんな感じで色々あっての本社帰還です。
疲れたー。今回は、何度かに分けずに、一気に攻略してしまったからなぁ。
自分の部屋でゆっくり寝よう。色々なコトは、それからだな。それからだッ!
14型と途中で別れ、羽猫とともに自室に戻り、そのまま就寝する。あー、疲れた。
「マスター、お昼です」
翌日になり、俺を起こしに来た14型に頼んでスカイを呼んで貰う。さあて、俺は会議室で待ちますか。
会議室でしばらくまっているとスカイがやって来た。
「ラン様ー、ご用すかー」
いやいや、まぁ、色々と用件はあるんだがね。
『いやな、八大迷宮の攻略者はBランクになれると、知り合いの冒険者に聞いたので、な』
俺が天啓を飛ばすと、スカイは不思議そうな表情のまま犬頭を傾けていた。
「えー、そうなんですか?」
頼りにならない犬頭だ。これでギルドマスターなんだから、もうね!
『わかった。スカイ、お前のギルドへ一緒に行くとしよう』
ギルドに行って、中で話の分かる人に聞いた方が早そうだ。
「りょ、了解すよー。案内します」
ホント、頼りにならないなぁ。
スカイの案内で羽猫と共に冒険者ギルドに向かう。
「さあ、ラン様、俺の城ですよー」
犬頭のスカイが鼻息荒く自慢気な顔を見せる。あー、そっすね。
「ああ!」
中で忙しそうに作業をしていた猫人族の受付嬢がこちらへと振り返る。
「あ! マスターが帰ってきました」
それに釣られて、他のギルド職員達も声をあげる。マスター? ああ、ギルドマスターって意味か。スカイにギルドマスターのイメージがないからなぁ。
「マスター、とオーナーさん……?」
ランですよー。
「マスター、てっきりいつものようにサボっているのかと思ったら」
いつもサボっているのかよ。ホント、スカイは駄目なヤツだなぁ。
「いやいや、ラン様の前で何言ってくれちゃってるの!? 俺、真面目に仕事しているから、しているからね!」
スカイ君ってこんなキャラだったかなぁ。俺が出会った時は若いながらも後を継いだ寂れている冒険者ギルドで頑張って……無かったな。うん、駄目なヤツだった気がする。権力を持って拍車がかかった感じだな。まぁ、憎めない奴なんだけどなぁ。
『すまないが……』
俺は言い訳しているスカイ君を放置して、冒険者ギルドの奥へと進む。そして、カウンターの上にステータスプレート(螺旋)を置く。
『八大迷宮の攻略者はBランクに上がれると聞いたのだが、確認してもらえないだろうか?』
俺の天啓を聞いた他の冒険者たちが驚いた顔でこちらを見る。いやぁ、やはり八大迷宮を攻略したって凄いコトなんだろうな。どうだ、凄かろう、ふぁふぁふぁ。
「お、お待ちください。すぐに確認します」
受付の猫人族のお姉さんが何やら大きな本? を取り出し、ぺらぺらと捲る。そして「お預かりします」と一言、頭を下げながら俺のステータスプレート(螺旋)を取り、ギルドの奥に消えた。
そして、しばらくして戻ってきた。
「か、確認出来ました」
猫人族のお姉さんが震える手でステータスプレート(螺旋)を差し出す。
「凄いです! 『世界樹』攻略! 『世界の壁』攻略! 『空舞う聖院』攻略! 『名も無き王の墳墓』攻略! 『空中庭園』攻略! 『二つの塔』攻略……」
お姉さんが攻略と叫ぶ度に周囲に歓声が上がる。いやぁ、個人情報をばらしちゃって困るなぁ。
何故か、スカイが個人情報を漏らしているお姉さんに向けて親指を立てていた。そして、受付のお姉さんの元まですり寄り耳打ちしている。何々……?
「なーいす。これでチャンプの機嫌もよくなるよー」
おいおい、聞こえていないと思って、この犬頭は……。俺にはしっかり文字として見えているっての。何だかなぁ、俺って、そんなに自慢したがりに見えるのか?
『報酬はどうなっているのだろうか?』
俺の天啓に受付のお姉さんが頷く。
「『世界樹』はすでに攻略済みと承認されているため、報酬はありません」
なんと。
「『世界の壁』はクエストの一環ということですでに報酬をお渡し済みになっています」
へ?
「『空舞う聖院』は攻略済みのため、報酬はないです」
お、おう。
「『名も無き王の墳墓』もすでに攻略済みのため、報酬はありません」
なんだよ、バーン君、しっかり報酬は貰っているのな。さすがはAランク冒険者だな、抜け目ないというか、何というか。
「『空中庭園』も攻略済みのため、報酬は……無いです!」
あ、ああ。
「そして『二つの塔』攻略の報酬ですが……8万GPになります!」
おー、8万GPも貰えるのかーって、アレ?
『すまない。報酬は、それだけだろうか?』
俺の天啓に猫人族のお姉さんが頷く。
俺はステータスプレート(螺旋)を確認する。うん、確かに8万GPは増えているな。でもさ、でもさ、ギルドランクCのまま、なんですけどー。Bになってないよ、Bにッ!
えーっと、Bランクの承認試験を受けるためにはGPが99,999いるんだよな? 80,000だと足りないんですけどー!
後、15,000くらい足りないのか?
バーン君、も、もしかして、俺なら、それくらいは溜めていると思っていたのか? いやいや、最近は商会のオーナー家業をやっていてクエストをこなしていないからな。GPなんて全然、増えてませんよ!
あー、どうしよう。