8-2 情報を開示すると
―1―
『GPが大量に貰えるクエストはないだろうか? それこそ1万5千ほど貰えるような……』
そうそう、そんな感じのクエストがあれば一発だからな。
「いや、ラン様、そんなクエスト、国家が依頼するレベルだからね」
俺の天啓を受けた犬頭のスカイが、呆れたような顔で、そんなことを言っていた。あ、そうなんですね。って、マジですかー。スカイに呆れられたように言われるとはお終いだぜー。
『それならば、今、受注可能なクエストでGPが溜められそうなモノはあるだろうか?』
そうそう、それがあれば一番じゃん。
受付の猫人族のお姉さんが分厚い冊子をぺらぺらと捲る。おー、何かちょうど良いクエストを探してくれているのかな? スカイより頼りになるなぁ。
「そ、そうですねぇ。八鋒山の竜退治でしたら、獲得出来るGPが1,024と非常に多くなっています」
ほー、そうなんだ。でもさ、それでも15回は達成しないとダメなんだろ? まぁ、そんな一日二日でパパッとGPが溜められるようなら、もっとBランクの冒険者とか沢山いるだろうしな。俺がハイペース過ぎたのか……。
うーむ。
まぁ、急いでBランクにしないと駄目な事情でもあるわけでもないしさ、今回は諦めて、ゆっくりとGPを稼ぐか。
……。
いや、待てよ。
逆転の発想だ。
八大迷宮を攻略すれば大量のGPが貰えるというのならば!
そうだよ、八大迷宮を攻略すればいいじゃないか。
まだ未攻略の八大迷宮は二つあるはず。そうだよ、それで確実じゃん!
『ちなみに未攻略の八大迷宮だが、その情報は貰えるだろうか?』
俺の天啓に猫人族のお姉さんが頷く。
「オーナー、タイミングがよいです。こちらの冒険者ギルドの実績が認められ、情報開示レベルが上がっています」
ふーむ。よく分からないが、それは良いことなんだな?
「現在、残っている八大迷宮は二つ」
受付のお姉さんはカウンター下から新しい冊子を取り出し、ぺらぺらと捲る。何というか、わざとらしいくらいに用意していたかのようなタイミングだな。
しかし、猫人族のお姉さんは、その冊子を捲る度に微妙な顔になっていく。
「一つは世界のへそにある『二重螺旋』、そして、もう一つはナハン大森林にある『名を封じられし霊峰』になります」
ふむ。
そうだよな、残り二つだもんな。
ナハンの『名を封じられし霊峰』の方が行きやすそうな気はするんだけどさ、ちょっと気になる情報があるんだよなぁ。
砂漠で拾った狐耳の吟遊詩人が言っていた、雨期を待っている、攻略には人がいるって言葉がさ、引っかかるんだよなぁ。現状だと無駄足になりそうな気がするな。
もう一つは『二重螺旋』か。世界のへそにあるんだな。俺はてっきり『世界のへそ』が迷宮の名前かと思っていたんだけどさ、地名だったのか。
『二重螺旋の情報を貰いたいが、大丈夫だろうか?』
俺の天啓を受けたお姉さんが困ったように、俺とスカイを見比べていた。
「オーナー、申し訳ありません。これ以上の情報はAランク以上の冒険者に限るとの指示が出ています。それは『名を封じられし霊峰』についても同じです」
へ?
Aランクだと!?
つまり国が認める冒険者クラスしか情報を渡さないってことか?
他の八大迷宮では、ここまでのことはなかったじゃん。どういうことだ?
『スカイ、何とかならないだろうか?』
俺が天啓を飛ばすと、スカイは、それこそ捻り飛びそうな勢いで、首を横に振った。
「無理無理、無理ですよー。俺が指名手配される、首が飛んじゃう」
そ、そうか。
そんなスカイの様子に、周囲の冒険者達が驚いたようにこちらを見る。あー、これ、目立っちゃってるな。
「ラン様ー、あー、あれっすよ、ここは目立つんで、奥行きましょう、奥」
スカイが俺の体を後ろから押していく。いや、奥って、俺がギルドの中に入っても大丈夫なのか?
―2―
スカイの案内で冒険者ギルドの最奥、ギルドマスターの部屋へと通される。
「へっ、へへ。ラン様、ここなら誰もいないですよー」
スカイが何だか悪い顔でこちらを見ている。その手には、先程、受付のお姉さんが開いていた冊子が握られていた。スカイ、お前、まさか……。
「こう見えても、ですよ。俺はラン様のおかげでギルドマスターになれたことを恩に感じているんすよー」
スカイが冊子をぺらぺらと捲る。いや、お前、俺はそこまでしろとは言ってないぞ……。
「内緒っすよー。俺が教えたって言わないで下さい」
ホント、この犬頭は……俺を悪の道に引きずり込むなぁ。
「世界のへそは、この世界の中心にあるって言われているみたいっすねー。でも、あるのはナハンの遙か北西、世界の端ですかー」
へー。ナハンの北西かぁ……って、それだと海の上!?
『つまり、船が必要なんだな?』
俺の天啓を受けたスカイが微妙な表情を作る。
「確かにそうみたいですよー。ですけどー、島がぐるーっと全部、断崖絶壁になってるみたいで、船では島まで行けても、上陸出来ないみたいっすね」
へ、へぇ。
「上陸した冒険者は近くまで船で行って、そこからフライの魔法で上陸したみたいっすねー」
フライの魔法か。まぁ、俺の場合は《飛翔》スキルや《浮遊》スキルがあるからな。それで何とかなりそうだ。
「その魔法使い一人しか上陸出来なかったんで、迷宮を発見した後は、すぐに逃げ帰ったとか」
フライって一人用なのか? まぁ、とにかく、そういう理由で未攻略なのか。うーむ、それだと俺も一人で攻略しないとダメな……いやいや、違うな。俺の場合は《転移》スキルもあるからな。迷宮の近くまで、俺1人で歩いて、そこからは《転移》のチェックをすればいいわけだ。楽勝じゃん。
「『名を封じられし霊峰』は入り口が常に燃えているため、雨期しか侵入出来ないって書いてあるすねー」
なるほど。雨期を待っていた理由って、それか。となると、やはり『二重螺旋』が狙い目か。
『となるとファットの船で世界のへそに向かうことになりそうだな』
俺の天啓を受けたスカイが、あーって残念そうな顔をする。
「ファット船長、今、交易中っすよ」
な、なんだと!
がーん、だな。
出足を挫かれた気分だよ。
さあ、どうしようか。




