7-16 情報は売れます
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本社の自室でくつろいでいると犬頭のスカイが駆け込んできた。
「ラン様、匿って欲しいですー」
いや、ここ、会議室みたいな開かれた場所と違って、俺がくつろぐための、俺の為の自室なんですけど……。なんで、どうやって入ってきてるの? 外で14型や羽猫に引き留められなかったのか?
『今度は何をやらかしたのだ?』
「いや、何もしてないんすよー」
俺の天啓を受けたスカイは顔背けそんなことを言った。これ、どう考えても、何かやらかしたよな。こいつ、ホント、冒険者ギルドのギルドマスターの資格ないよなぁ。このスカイがギルドマスターをやるなんてさ、それだけ冒険者ギルドって人材不足なのか。俺は心配になっちゃうよ。
しばらくすると自室のドアがノックされた。
「マスター、ユエが面会に来ています。通してもよろしいですか?」
それを聞いたスカイは俺の方を見てしきりに首を横に振っている。自室の外には14型がちゃんと居るようだな。いや、この犬頭、どうやって俺の部屋に入り込んだんだ? まさか、何かのスキルを使って侵入したのか? むむむ。
『構わぬ』
俺が天啓を飛ばしたのを見て、スカイは「しょんなー」と叫んでいた。いや、スカイくん、何をしたか知らないがね、君の自業自得だよね。間違いなく君が悪いよね。
「ランさま、スカイがこちらに来て……いますね」
扉を開けて入ってきたユエは、すぐにスカイを見つけていた。
「ランさま、スカイを連れて行きます。よろしいですね?」
ユエが土下座をしそうな勢いのスカイの犬耳を掴み引っ張っていく。何というか、ユエさん性格変わってません? 母親になって強くなったのかなぁ。
『いや、待て』
とりあえずそのままスカイを連れて行こうとするユエを止める。
「ランさま!?」
ユエが驚いたようにこちらを見る。いやまぁ、スカイがどうなろうが俺は知らないけどさ。
『ユエ、事情を聞きたい。スカイは何をやったんだ?』
そうそう、まずはそれを聞かないとね。
俺の天啓を受け、スカイを引っ張っていたユエの足が止まる。
「スカイはノアルジー商会の情報を、集めていた情報も! 国に売り渡したのです」
国って、このウドゥン帝国のコトだよな?
「いやいや、仕方ないんですって、自分のような下っ端は国のお偉いさんから強く言われたら断れないんですって! それならすこーしくらい、それにあわせて儲けようとしても罰が当たらないと……」
ふむ。ノアルジ商会の情報って言っても、そんな重要な情報ってあるのか? うーむ。
「冒険者ギルドは国に対してでも拒否する権利があるはずです!」
へー、そうなんだ。そりゃまぁ、帝国だけではなく、全世界にある組織だもんな。国に縛られたら大変か。
「いやいや、そんなの建前じゃん。それで、俺が暗殺でもされて、帝国に都合の良い人間が後釜になったら困るでしょ。ランさま、困りますよね!」
あー、うん。権力は怖いなぁ。何だろう、スカイに同情の余地があるように思えるのは、俺が甘いからかなぁ。それに商会の情報なんてさ、たいしたもんでも無いような気がするしなぁ。
『ユエ、スカイを余り責めるな。話を聞けば、スカイにも同情の余地があるように思える』
「分かりました。ランさまに従います」
俺の天啓にユエは少し不満そうだ。まぁまぁ、もう起きたことは仕方ないからね。
『それでユエはスカイを連れてどうするつもりだったんだ?』
そうだよな。これから私刑にでもするつもりって言うのなら、さすがに止めないとな。
「起きたことは仕方ありません。スカイには、どの程度の情報を帝国に売ったのか内容を確認するつもりでした」
おー、さすがはユエ。有能だ。
「あ、そうなの? 俺、てっきり処刑とか制裁を受けると怯えて……」
「やったことに対してはもちろん制裁を受けてもらいます」
ユエがスカイを睨む。ど、瞳孔が開いて怖いんですけど……。
『よし、後はユエに任せた』
俺の天啓にスカイが驚いたようにこちらを見た。
「え、チャンプ助けてくれないの? 俺とチャンプの仲じゃん。え? え?」
どういう仲だよ。
「マスター、この思い上がった犬は少し痛い目を見た方が良いと思います」
14型さんが腕をキリキリと鳴らして臨戦態勢だ。
『ところで、聞きたいのだが、情報を国に売ったということは、情報は売れるということだな?』
俺の天啓を受け、ユエは慎重に、ゆっくりと頷く。
「はい、情報は売れます」
なるほど、情報は売れるのか。そういえば、ナハン大森林でも聞きたがりは云々って忠告を受けたもんな。この世界、情報は貴重なんだろう。
『ユエ、この国の識字率はどれくらいだろうか?』
「識字率ですか?」
ユエがスカイの耳をつねり上げたまま答えてくれる。まぁ、痛い痛いって騒いでいるスカイくんは無視しよう。
「帝都なら簡易文字は殆どの者が読めるかと思います。書く方は商売に携わる者か貴族なら、という感じでしょうか」
へー。簡易文字ってのがどういうのか分かんないけど――まぁ、ひらがなみたいな物だと思えばいいかな――意外と高いんだな。
『他の国でも同じような感じか?』
「簡易文字を読めない者は殆ど居ないと思います」
読む方は大丈夫なのか。読めるのに書けないって何だか不思議な感じだな。
『帝都では普通に紙があったと思うが、大量に生産することは可能か?』
「ランさまが想定される量はわかりませんが、それでも今のノアルジー商会なら可能です」
つまり、分からなくても可能ってことは、それだけ紙は安いってコトだな。
『ユエ、情報は売れるんだよな?』
俺は天啓を飛ばし、もう一度確認する。
「はい、情報は売れます」
うむ。なら、だ!
『情報を売ろう』
俺の天啓にユエとスカイが大きく口を開け、驚いた反応を示す。
「ら、ランさま、ま、まさか……」
賢いユエは気付いたようだな。
『ああ、情報を売る』
「いや、しかし……そんな……」
ユエは俺の考えがまだ信じられないようだ。
『スカイ』
「は、ひゃい!」
犬頭のスカイがまぬけな顔のままこちらを見る。
『冒険者ギルドには情報が集まるんだよな。それも世界中から』
スカイがうんうんと頷く。
『自分がその情報を買い取ろう。国に売ったんだ、うちの商会に売っても同じコトだろう?』
スカイはうんうんと頷いたままだ。
『ユエ、同じようなコトをしている商会はあるだろうか?』
ユエは首を横に振る。
「ありません。やりたくても資金が足りないはずです」
『まずは試しにやってみよう。採算が合わない、反応が悪いようならやめればいいしな。まぁ、というわけでスカイには働いて貰わねばならん。今回の件はそれで許してやってくれ』
ユエが頷く。
「歴史に残る一大事業になりそうな予感がします!」
まぁ、普通にこれって新聞だよな。でもさ、似たようなことを誰もやっていないってのが意外だなぁ。紙がある時点で瓦版みたいなのがあってもおかしく無いと思ったんだけどな。




