7-15 オーバースキル
―1―
虚ろな状態のグレイさんをパーティに加え、そのまま《転移》スキルを使い、スイロウの里へと戻る。
――《転移》――
グレイさんは《転移》スキルの衝撃にも、何の反応も示さない。俺は門番のハガーさんに挨拶をして、そのままスイロウの里へと入る。里に着いた所で別れようと思っていたけどさ、この状態のグレイさんを放置は出来ないよなぁ。となるととりあえず冒険者ギルドに行ってみて相談かな。
「グレイさん、スイロウの里だ」
「あ、ああ」
うーむ。ホント、グレイさん大丈夫か? 俺のスキル、《リインカーネーション》が悪かったのか? そういえば、女神教団のヤツらはスキルとかを使わずに魔石を入れ替えていたもんな。
スイロウの里の冒険者ギルドに入ると眼帯のおっちゃんがいた。あー、ちびっ娘が居なくなったから、今はこのおっちゃんが1人で頑張っているのか。
「おい、嬢ちゃん。ここは荒くれが集う冒険者ギルドだ。来る場所を間違えてるぜ」
中は……この眼帯のおっちゃんだけか?
「グレイ、冒険者ギルドだ。思い出さないか?」
グレイが冒険者ギルドの中へと入る。
「冒険者……ギルド……?」
「お、おい、そいつは行方不明になっていたグレイじゃねえか」
行方不明扱いだったのか。
「ああ。だが、見ての通り、正気を失っている状態なんだよ」
俺の言葉を聞いた眼帯のおっちゃんは一瞬、驚いたような表情を見せるが、すぐに口の端を上げニヤリと笑う。
「お嬢ちゃん、タイミングがいいぜ。今、この里にはグレイの妹が来ている」
へ? 確か、妹も冒険者をしていたよな? なんちゅう、タイミングの良さ。
「今、呼んでくるぜ」
そう言い残して眼帯のおっちゃんはカウンター奥に消えた。うん?
うん?
ううん?
そして、すぐに1人の女性を連れてやって来た。
「え? お兄ちゃん?」
おー、この子がグレイの妹さんか。会ったのは一年以上前だもんな。
「あなたがお兄ちゃんを見つけて連れてきてくれたんですね」
グレイの妹が俺に頭を下げる。
「いや、しかし、このような状態で……」
俺の言葉にグレイの妹は首を横に振る。
「いいんです。生きていてくれたんだから。突然、何かに取り憑かれたかのように人が変わって消えたと思ったら……いいんです。情報の集まる冒険者ギルドで働いていて良かったです」
……。
あー、そうか、グレイの妹が冒険者ギルドに居たのは偶然ではなく、必然だったのか。この眼帯のおっちゃんが紫炎の魔女、ソフィアが抜けた穴を埋めるために、情報を求めていたグレイの妹を雇った、と。そういえばナハン大森林って、冒険者ギルドってここと、出張所のフウキョウしかないもんな。なるほど、そうか。眼帯のおっちゃんよ、グレイの妹が来ている、じゃなくてだな、今、ここで働いているだろうが。
って、情報?
やはり、色々な情報って冒険者ギルドに集まるのか。ふむ。
「お兄ちゃんは私が治します。ありがとうございました」
グレイの妹がもう一度、こちらに頭を下げる。あ、ああ。これで一安心か。
にしても、グレイさんは、なんで、こんな状態になってしまったんだろうか。俺がやったことだからさ、少し責任を感じてしまうよなぁ。
……。
って、アレ? そういえば、《魔石精製》スキルってメチャクチャMPを消費するよな。《リインカーネーション》スキルはどうなんだ?
あれから試してないけどさ(試す機会もないしね)も、も、もしかして、こちらも膨大なMPを消費するんじゃないか?
もしかしてグレイさんが今の状況なのって、《リインカーネーション》スキルの発動時にMPが足りなくて失敗してしまったからじゃないのか?
いやいや、まさか、そんな。
そんなことがあり得るのか?
よ、よし、ちょっと試してみよう。
妹さんがグレイの手を取り、ギルドの奥へと連れて行こうとしている。奥に自室か休憩室でもあるのかな?
俺はその後ろからグレイの背中に手を添える。
――《リインカーネーション》――
スキルを発動させる。
何かが混じり、繋がっていく感触。そして、俺のMPを消費してスキルは完成した。
「え? ここは?」
スキルの発動が終わった瞬間、グレイさんが何かに気付いたかのように、驚き、周囲をキョロキョロと見回す。その顔には生気が戻っていた。
「あれ? 何で、お前がいるんだ? 俺は確か、流浪の治癒術士さんに……」
突然、喋り始めたグレイを見て、妹さんが口元に手をやり、泣き出した。
「お、お兄ちゃん!」
あー。
えー。
うん、まさか、俺の予想通りとか。
そっかー、そっかー。
《リインカーネーション》スキルに失敗していたのか。こっちもMPを使うとか、気づけないわー。このタイミングで気づけた俺凄いわー。えーっと、消費MPは240か。こっちも重いなぁ。《魔石精製》ほどじゃないけど、凄い重い。
ちゃんとMPを回復させてから使わないと大変なことになるな。ま、次に使うことがあるなら、だけどさ。
……いやまぁ、何度も使う機会が出来そうだけどさ。
「グレイが元に戻ったじゃねえか。こいつは兄妹の絆ってやつか!」
眼帯のおっちゃんががはははっと笑っている。いや、あのー、違うんだ。違うんだよ。
まぁ、でもさ、これでグレイさんの事件――問題も解決か。長かったよな。うん、でもさ、最後はハッピーエンドで良かったじゃん。
じゃ、俺は本社に帰りますか。
「あの、お名前を聞いても……」
妹さんが何度も頭を下げながら、こちらへと聞いてくる。
「俺はノアルジ。以前、君たちが会った芋虫姿の星獣様、ランの身内さ」
俺はそのまま片手をあげ、冒険者ギルドを後にした。うむ、俺、かっこいい。
2016年8月27日修正
ギルドで働いていた → ギルドで働いていて




