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むいむいたん  作者: 無為無策の雪ノ葉
6  空中庭園攻略
508/999

6-48 襲撃者暗殺者

―1―


 地下世界(アンダースフィア)の門の前に仮説のテントをいくつか作り、ノアルジ商会の幹部は、そこで休むことになった。近隣の住民たちは階段に布を敷き、その上で座り込むように休んでいるようだ。

 俺はテントから出て食事の用意をする。用意するといっても、魔法のウェストポーチXLから食料を取り出していくだけなんだけどね。

 ユエを代表とした商会の人間が、階段の先の人々にも――皆に食料を配っている。こういう時は助け合いなんだな。ふむ……。

 では、俺も食事にするか。


 サイドアーム・ナラカに持たせた小麦パンをもしゃもしゃとかじる。いや、これは、もしゃもしゃじゃない、もさもさだ。


 うーん、あんまり美味しくないなぁ。保存を優先しているから味は二の次なんだろうな。


 迷宮の中ってコトも有り、火が使えないから、干し魚も齧るだけだし……凄く微妙。美味しいご飯を楽しめないってのは辛いなぁ。

 干し魚の塩分を味わいながらもさもさの小麦パンを食べる、齧る、もさるッ!


 なんというか、この場に居るのが普通に飽きてきました。スキルも魔法も使えないから熟練度上げも出来ないしさ。暇すぎる。


 でさ、一つ気になることがあるんだよな。この地下世界(アンダースフィア)って魔素が濃かったじゃん。魔素が色のついた靄として見える俺には、今も魔素が漂っているのが見えるんだよな。

 何で魔法やスキルの元になっている魔素があるのに使えないんだ? ステータスプレートも機能しないしさ。おかしいよな。

 魔素が消えるから使えないんです、なら分かるんだよ。それこそ、この世界の人や物も実は魔素で作られているんです、みたいな世界だったらさ、今の現状も分かるんだよ。女神の休息日に外に居たら人が消えるってのも、そういうことだからってことになるしさ。


 でも、現状は違うんだよな。魔素は溢れている。特に、この地下世界(アンダースフィア)は魔素が濃いから、凄い目立つよ。なのに使えない。

 そもそも女神の休息日って何なんだ。あー、答えが分からない、教えてくれる人も居ない謎ってのはもやもやするなぁ。


 と、俺が食事をしながら考え込んでいる、その時だった。


「マスター!」

 14型が俺の前に手を伸ばす。へ?


 俺の目の前、14型の伸ばした手に短剣が刺さっていた。何処かから、投げられた? 何で、危険感知スキルが――って、今はスキルが発動しないのかッ!


 何処だ?


 俺を攻撃してきたのは、どこのどいつだ? クソッ! 《剣の瞳》スキルでも使えたら、もしかしたら色で分かったかもしれないのに……。

「マスター、毒が塗ってあるようです」

 14型が短剣を引き抜き、投げ捨てる。いやいや、お前、毒が塗られた短剣を投げ捨てるなよ。

『14型、犯人は分かるか?』

 俺の天啓を受け、14型が首を横に振る。そ、そうか。まぁ、階段に人がひしめき合っているような状態だもんな。


 いくら俺たち、ノアルジ商会の幹部連中が(一番良い場所の)門の前を陣取っているといっても、すぐ近くに色々な人がいる状態だからなぁ。人の中に隠れられてしまうと見つけるのは難しいか……。


「どうしたんですのぉ」

 騒ぎを聞きつけたのか、奥で休んでいた犬頭のフルールがやってくる。

「どうしたんです?」

 クニエさんもやってきた。


『どうも命を狙われたようだ』

 俺が天啓を飛ばすと2人は驚き、そして頷いた。


「ラン様は奥で休むといいですわぁ」

 そうかい、じゃあ、俺はそうすることにするよ。


 俺が一番の奥のテントに入ると羽猫と14型が、俺を守るように入り口に立った。




―2―


――[サモンアクア]――


 そして、4日目の朝、毎朝試しに使っていたサモンアクアの魔法が発動した。そうか、魔法が発動したということは、終わったのか。


『14型』

 俺は側に控えていた14型に天啓を授ける。

「はい、マスター。マスターの命を狙う輩は見えません」

『女神の休息日が終わったようだ。皆に伝えてくれ』

 俺の天啓に14型が頷き、消える。ホント、パッと居なくなるなぁ。


 にしても、これで女神の休息日も終わりか。襲撃があったのは、最初の一回だけで、それ以降、俺が襲われることはなかったけどさ、アレ、何だったんだろうな?


 うーん、俺、そんな恨みを買うようなことした覚えがないんだけどなぁ。


 そういえば捕まえた暗殺者? がどうなったか聞いていないな。この地下世界(アンダースフィア)に連れてきていないということは……そういうことなのか?


「ラン様、女神の休息日が終わったと聞きました。上に人をやり、試させます……」

 ユエがやって来て、そんなことを言った。試すって、まさか、人を……。って、そんなワケは無いか。何か、物を投げて確かめるんだろうな。と、そうだ、せっかくだから、例の暗殺者がどうなったか聞いておくか。


『ユエ、以前、暗殺者を捉えたと思うが、どうなったのだ?』

 俺の天啓に、ユエが少し驚く。

「ラン様、ご存じないのですか?」

 へ?


『いや、知らぬが』

 知らないですよ。

「フエさんが……伝えておくと、いえ、私の勘違いかも……、でも、伝達が……」

 ユエが猫尻尾を叩き付けながら考え込んでいる。

『どうしたのだ?』

「すいません、私のミスです。ラン様に伝えたつもりになっていました……」

 そ、そうか。


「例の暗殺者は、何もせず、そのまま送り主に返しています」

 へ? な、なんで。


「相手は八常侍の1人、今の私たちが逆らえる相手ではありませんでした……」

 は? なんだよ、それ。あいつら、俺を帝城に誘って宴会した、その帰りに襲撃者を寄こしてきたのかよッ!

 なんなんだよッ!


 しかも、相手の方が立場が上だから、泣き寝入りだと。俺は命を狙われたんだぜ。なんだよ、それ。

『ユエ、次は相談してくれ』

「はい、申し訳ありません。私が、私自身の口でラン様にお伝えします……」

 むぅ。


 まぁ、過ぎたことをとやかく言うのは良くないよな。


 にしても、八常侍か。今回の件も、ヤツらかもしれないな。ヤツらは俺をどうしたいんだ? 俺を暗殺して、誰かを代わりに立てて、ノアルジ商会を乗っ取ろうとか、そんな感じなのか?


 どうする、どうする?


 そうだな、こういうのは帝国に詳しい人間に相談するのが一番だ。となるとキョウのおっちゃんだな。


 くそう、やられっぱなしにはしないぜ。

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