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むいむいたん  作者: 無為無策の雪ノ葉
6  空中庭園攻略
478/999

6-19 必殺の一撃?

―1―


「ちょっと待ったー!」

 俺がお爺ちゃん猫の後をついていこうとした所で声が掛かった。何だ、何だ?

「シラアイ師匠、私はこの星獣様と勝負がしたい」

 1人の猫人族の若者が前に出る。若武者猫だね。

「自分を覚えておいでか?」

 誰? わかんないです。

「わからないなら、いい。あの時は勝負がつく前にシラアイ師匠に止められたが、今度は! そうはいかない」

 いや、誰だろう。この道場で何か因縁って、あったか? 特に何も無かったような気がするんだけどなぁ。

「ラン殿、どうなさりますかな?」

 もじゃもじゃなお爺ちゃん猫がこちらを見て笑う。まぁ、喧嘩を売られたら買わないとね。そうじゃないと冒険者家業はやってられないのさー。……俺もこの世界に順応してきたよなぁ。


『分かった、その勝負、受けて立とう』

 俺の天啓に若武者猫が木刀を構える。

「ラン殿は、その赤槍を使われるのですかな?」

 お爺ちゃん猫の片眼が開く。

『いや、木刀で構わぬよ』

 壁まで歩き、そこに立て掛けられた木刀をサイドアーム・ナラカで持つ。サイドアーム・アマラに持たせた真紅妃を背中に回す。

 サイドアーム・ナラカに持たせた木刀を振り回してみる。芯が入った重く硬そうな木刀だ。これで殴られたら痛いだろうなぁ。


 俺はそのまま道場の中央へと歩いて行く。それにあわせて道場で稽古をしていた猫人族たちが端へと避けていく。

 道場の中央に俺と若武者猫が向かい合って立つ。距離は3歩分ほど。


『こちらの準備は出来たぞ。さて、いつ始める?』

「それはもう、いつでもよろしいですぞ」

 俺の天啓を受け、お爺ちゃん猫が目の前の若武者猫の代わりに答える。ふむ、さすがは実践的な道場。

「ラン殿から、どうぞ」

 目の前の若武者が口を開く。ふーん、俺が先でいいの?


 じゃ、まずは俺から攻撃をしてみますか。


 俺は若武者猫の前へと飛び、そのまま木刀を振り下ろす。それにあわせて若武者猫が動く。俺の木刀をうち流し、そのまま、こちらへと突きを放つ。


――《飛翔》――


 俺は《飛翔》スキルを使い、振り下ろした姿のまま後方へと飛ぶ。すいすいとな。空中を自由に動けるから、こんなことも出来るんだぜ。

「なっ」

 俺の挙動に若武者猫が驚きの声を上げる。が、すぐに立ち直り、木刀を腰だめに構える。そのまま回転するように木刀を振るう。木刀とともに横凪の暴風が吹き荒れ、こちらへと斬撃が飛ぶ。俺は、それを見て、そのまま《飛翔》スキルで飛び上がり回避しようとする。

 それを見た若武者猫が更に縦へと木刀を回転させるように振り下ろす。横の斬撃を追うように縦の斬撃がこちらへと飛んでくる。これ、木刀で受け止めても大丈夫なのかな?


 ま、どれくらいの衝撃なのか手で受け止めてみるか。俺の《危険感知》スキルが働かないってことはたいしたことないだろうしさ。

 そのまま小さな手を伸ばし、交差した斬撃波をその小さな手で受け止める。うおお、結構、びりびりくる。《危険感知》が働かないのが嘘みたいな衝撃だぞ、手がボロボロになりそうだ。そのままミトンのような手を握り、衝撃波を打ち消す。怖い威力だなぁ。


 俺は衝撃波を打ち消し、そのまま道場の床へと降り立つ。と、それを待っていたかのように若武者猫がこちらへと掛けてくる。そのままこちらへと穂先が見えぬほどの連続突きを放ってきた。お、《百花繚乱》かな? でも、それなら俺も使えるんだぜ!


――《百花繚乱》――


 俺がサイドアーム・ナラカに持たせた木刀から穂先も見えぬほどの連続の突きが放たれる。俺の突きが相手の突きを打ち返し、跳ね返していく。そしてそのまま、俺は、高速の突きを一点に集中させていく。若武者猫は俺の連続突きに耐えきれず、木刀が大きく弾かれる。手が木刀ごと後ろに飛び、体勢が崩れる。今なら、出来るかな?


――《フェイトブレイカー》――


 俺のスキル発動にあわせ、木刀が舞う。お、刀でも発動出来るんだ。


「いかんっ!」

 お爺ちゃん猫が叫ぶ。


 水平斬り、体勢を崩した若武者猫が回避出来ず打ち付けられる。

 そのまま木刀が流れるように軌跡を描く。袈裟斬り。線が舞う。斬り上げ、斬り降ろし。一手ごとに星が描かれ、相手の運命を壊していく。回避出来ぬ、運命を、命を、命数を削る剣技。流れるように星が完成する。

 そして、俺は木刀を引き、星を壊す突きを放つ。若武者猫は動かない。と、その俺の前にいつの間にかお爺ちゃん猫が割って入っていた。俺の必殺の突きを、その肉球のついた毛むくじゃらの両手で受け止める。

 お爺ちゃん猫の両手を削りながら突きが進む。お爺ちゃん猫が後ろ蹴りを放ち、後ろで気を失っていた若武者猫を蹴り飛ばす。


 ――やがて突きは止まった。


「ふぅ、この爺、命がなくなるかと思いましたぞ」

 あ、すいません。


 見ればお爺ちゃん猫の両手はボロボロだった。使い古した雑巾のようになった手からは血がにじみ、見るも無惨な姿だ。

「侍の奥の手の1つ、白羽取りでも防ぎきれぬとは、恐ろしい技よ」

 木刀で、その威力か……。これ、余り気軽に使わない方がいいのかな。と、お爺ちゃんの治療をしないとダメだな。


――[キュアライト]――


 お爺ちゃん猫の両手に癒やしの光が降り注ぐ。みるみるうちに繊維が見えているような深い傷が癒えていく。おー、さすがは光魔法。ヒールレインよりも回復するね。

 と、若武者猫の方にも魔法を掛けておくか。あっちはヒールレインの方がいいかな。


――[ヒールレイン]――


 白目を剥いて倒れている若武者猫に癒やしの雨が降り注ぐ。し、死んでないよね?


「ラン殿、先程の技は余り対人では使わぬ方がよかろう」

 お爺ちゃん猫がぽつりと呟いた。

「相手を壊してしまいかねない。必ず殺さなければならぬ時を除き、使うのは控えた方が良いと思う」

 そ、そうか。まぁ、俺は殺人鬼ってワケじゃないから、使うのは控えるか。まぁ、あくまで対人ってコトなら、だよね。魔獣相手なら容赦しないぜー。と言っても剣技を使う機会なんてあるかどうか分かんないけどさ。


「ふぅ、改めて案内します。こちらへ」

 手の傷が癒えたお爺ちゃん猫が案内してくれる。うーん、使い慣れていないスキルを使うのは危険が伴うなぁ。あそこまでやるつもりはなかったんだけどな。若武者猫にはちょっと申し訳ないことをした。

2016年5月16日修正

必殺の一撃 → 必殺の一撃?

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