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むいむいたん  作者: 無為無策の雪ノ葉
5  名も無き王の墳墓攻略
402/999

5-98  下水の芋虫

―1―


「お帰りなさいませ、リ・カイン冒険者ギルドへ」

 あー、今日は猫人族のお姉さんなのか。って、もしかして朝が早いからか? そう言えば昨日は遅い時間だったな――だから羊角のお姉さんだったのか?


「ランさま、本日のご用件は?」

 猫人族のお姉さんが口ひげをぴくぴくと動かしながらも、笑顔を作る。

『下水のアシッドスライム退治のクエストを受けたい』

「で、では、こちらへ」

 猫人族のお姉さんとともにカウンターへ。そして、そのままお姉さんがカウンター裏に回る。やっぱりこういうシステムなんだね。



 Cランク

 常駐クエスト(討伐)

 アシッドスライム1匹の退治

 下水道に生息するアシッドスライムの退治


 クエスト保証金:無し

 報酬:5,120円(銀貨1枚)

 獲得GP:240


 コア、1個につき163,840円(小金貨4枚)で買い取ります。



「こちらのクエストでお間違いなかったでしょうか?」

 あ、はい。それです。

『ちなみに下水道の場所は何処になるのだろうか?』

 猫人族のお姉さんがカウンターの下から、簡単な、迷宮都市の全体図が描かれた絵を取り出す。

「この迷宮都市の入り口の橋は分かりますよね?」

 猫人族のお姉さんが疑わしそうな顔で聞いてくる。なぜ、それを聞く。いや、俺もさ、最初は、ちゃんと入り口から入ってきたんですよ。まぁ、それ以降は《転移》スキルを使ってますけど、ね!

「この橋を南に……城の方側ですね。に、進みますと、堀の下へ降りる階段が見えてきます。そこを降りて、橋側に戻ると下水道への入り口があります」

 ふむふむ。なんとなく、分かったような、分からないような。

「下水道の中は薄暗いので明かりの用意が必要でしょう。それと中の道ですが、円を描くように進める大きめのメイン通路――困った時はメイン通路に出て、そのまま進めば入り口にもどれます。と、そこから分かれた細かい枝道になっています」

 ふむふむ。環状線になっているんだな。


「討伐目標のスライムが居るのは枝道の方ですね。枝道はとにかく複雑で入り組んでいます。さらに道も狭いので、下位冒険者はメインの通路を回るルートを取るみたいですね」

 なるほど。そこを進んでいれば危険は少ない、と。まぁ、でも俺はスライム退治がメインだから、危なくても、迷子になりそうでも枝道に進む必要がある、か。


「では、ステータスプレートをお願いします」

 猫人族のお姉さんにステータスプレート(金)を渡す。そしてお姉さんが水晶玉のようなモノを俺のステータスプレート(金)にかざす。これ、ホント、何をやっているんだろうな。

「はい、登録は終わりました。では、クエストの達成、お待ちしております」

 あ、はい。じゃ、これで登録も終わったし、下水の探索、頑張りますかっ!




―2―


 下水道に入る。下水って言うくらいだから、嫌な匂いでも立ちこめているのかと思ったけど、別に普通だな。

 ホント、ただ都市の下を水が流れているってだけだ。俺が想像していた下水と、この世界の下水は違うのかもしれないなぁ。


 ま、頑張ってガンガン狩りますかッ! あ、羽猫さんライト頼みます。


 下水のメイン通路は広く、道の中央部には足が浸るほどの水が流れており、その左右は一段高くなった通路になっていた。天井の高さもそれなりにあり、《飛翔撃》や《スピアバースト》も問題なく使えそうだった。うん、広いトンネルって感じだな。


 しばらく下水を進んでいると前方から音が聞こえてきた。


 足音を殺し、ゆっくりと近づくと、手に安物の剣や槍を持った冒険者たちが大きなネズミと戦っていた。おー、駆け出し冒険者かな、頑張ってるね。と、アレが下水に生息する鼠の魔獣か。余り強そうじゃないなぁ。それでも駆け出しだと結構大変なのか。ま、まぁ、ホーンドラットよりは何倍も強そうだもんな。そう考えると、俺なんかは雑魚からしっかりと経験が積めたんだな。迷宮都市だと魔獣も強いだろうから、駆け出しには辛い場所だよなぁ。


 ま、俺は俺の仕事をやりますか。


 と、駆け出し冒険者の戦いを眺めていると、その横にある細い通路から黄色の塊が飛び出してきた。って、もしかして、アレがアシッドスライム?

 駆け出しの冒険者はアシッドスライムの存在に気付かず巨大なネズミと戦い続けている。って、これ、ヤバイんじゃないか。無視して進もうかと思ったけどさ、さすがに目の前に危険が迫っているのを無視するのはなぁ。仕方ない。

 俺は魔法のウェストポーチXLから真銀の槍を取り出す。


――《飛翔》――


 《飛翔》スキルを使い冒険者の元へと駆ける。


『横からアシッドスライムが迫っているぞ!』

 俺が天啓を飛ばすと、驚いた槍を持った冒険者がこちらへと振り返る。いや、戦闘中に振り返ったら危ないでしょ。

「え? 魔獣が、後ろからも?」

 いや、俺は良い芋虫だからね。それに、この武装した姿を見て、それは無いと思うんだぜー。

 こちらを振り向いたから、前衛の槍を持った少年がネズミの攻撃を受ける。

「ハリー! そんな!」

 後ろに控えていたローブ姿の女の子が悲鳴を上げる。


 さらに横から現れた黄色いアシッドスライムが酸の液を飛ばす。剣と盾を持った犬頭の少女が動き、その盾で飛んできた酸液を受け止める。おー、機敏だ。獣人はやっぱり機敏なのかな? っと、まずは巨大なネズミと槍の少年を仕切り直した方が良さそうか。


――[アイスウォール]――


 槍の少年と巨大なネズミの前に氷の壁を張る。とりあえずは、これで大丈夫か。


――[ヒールレイン]――


 少年たちの上に癒やしの雨を降らす。

「こ、これは?」

「癒やしの魔法? 治癒術士?」

 とりあえず、俺が天啓を飛ばしたことで受けた傷はこれで、無しってことで。うん、俺は悪くないよね、うん。


『アシッドスライムは任せて欲しい』

 俺は天啓を飛ばし、アシッドスライムへと走る。


――[アシッドウェポン]――


 真銀の槍に酸を纏わせる。新米冒険者たちの横、現れたアシッドスライムの前に立つ。

「なんだ、何が?」

 犬頭の少女が驚き戸惑っている。


『気にするな、こんな姿だが、これでも同じ冒険者だ。アシッドスライム討伐の依頼を受けている』

 俺が天啓を飛ばしている間にもアシッドスライムがこちらへと酸液を飛ばしてくる。


――《集中》――


 アシッドスライムが飛ばしてきた酸液を、集中して真銀の槍を振るい、吹き飛ばしていく。おー、アシッドウェポンを使ったら防げるかな、と思って試してみたけど、うん、これなら大丈夫そうだ。


 さ、終わらせるぜッ!


 アシッドスライムへと歩き、サイドアーム・アマラを伸ばす。飛んでくる酸液は全て真銀の槍で防ぐ。さあ、コアを掴んだぜ。


 そのままコアを引き抜く。


「な、スライムのコアが勝手に外へ?」

 はい、これにてアシッドスライム終了です。


『では、自分はこの後もアシッドスライム退治を続ける。では』

 氷の柱が砕け、そこから巨大なネズミが現れる。ま、そっちは君らの獲物だからね、俺は手を出さないよ。と言うことで、俺は横道を進んでガンガン、アシッドスライムを倒そう! じゃ、君らは頑張ってね。


「何だったんだ、今のは?」

「と、とりあえず私たち助かったんじゃない?」

2016年3月1日修正

下水のアッシュスライム → 下水のアシッドスライム

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