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むいむいたん  作者: 無為無策の雪ノ葉
5  名も無き王の墳墓攻略
335/999

5-32  儲かった?

―1―


 ジョアンが自宅へと帰り、俺はいつものように真紅妃が整地した墓場跡で魔法の練習を始めた。


――[アイスウォール]――

――[アイスウォール]――

――[アイスウォール]――


 3連アイスウォールだぜ。氷だからか結構脆いからね、3枚張らないとすぐ抜けられてしまうからね、仕方ないね。4枚目を張ろうとすると、やはり最初の1枚目が消えてしまう。うーん、現状だと3枚張れれば充分だけどさ、今後、それ以上の強力な攻撃が出てこないとは限らないからなぁ。使って熟練度を上げれば、ちょっとは硬くなるみたいだからね、地道な鍛錬は重要だよね。


 俺が魔法の練習をしていると、通りがかった人? が驚いたようにこちらを見ていく。うん? 通りがかった? いや、ここって俺の家しかないじゃん。なんで人が? って、そうか、鍛冶屋? いや、もう武器屋だよね――に向かっているのか。


 魔法の練習を行いながら通る人を確認する。何だろう、普人族が殆ど居ないな。鬼人族や羽のある人、それに……あ、オークやゴブリンの姿も見える。帝都は魔獣も普通に――いや、普通というと語弊があるか、魔獣も住んでいるからなぁ。魔獣が東側の鍛冶士に仕事を依頼なんて出来ないだろうし、西側にはろくな武器が売ってなかったからね。人も殺到するか……いや、ちょっと待て。殺到って何だ。


 ここ、俺の家だよな? フルールが加入した流れで、そのまま鍛冶仕事をして貰うだけが、何で武器屋をやってるんだよ。おかしく無いか? いやいや、ここまで気付かなかった俺もあれだけどさ、おかしいよね、これ、おかしいよね。俺、そんなこと、まったく望んでなかったぞ。俺の家が侵蝕されて、完全にお店になってるじゃないかッ!


 どうしてこうなったッ!


 はぁ、考えても仕方ないか。


 ここまで来て『やっぱ無し』なんて言えないしね。ま、俺の家の2階は生き残っているし、普通に自宅として使えるからね。我慢出来るか、うん。


 日が暮れるまで魔法の練習をし、食堂へ行くと、そこには沢山のお皿が並べられていた。

「お、ランさん。もう出来てるよ」

 奥の厨房からポンさんがこちらへ料理を持って来る。片足だと料理を運ぶのも大変そうだな。上手く片足でバランスを取りながら料理を並べていく。おー、出来てんじゃん。


「マスター、席へどうぞ」

 いつの間にか14型が背後に控えていた。ホント、気配を感じさせないとか恐ろしいなぁ。

「そこの14型ちゃんが良い食材を売ってる所を案内してくれたからよ」

 あ、そうなんだ。ん? 14型が役に立っているだと。というか、14型がいつの間にか用意していた食材って、物は悪くなかったのか。って、そんな良い食材をゴミみたいな調理法でゴミ屑に作り上げていたのかよ……。


「マスター、私が料理を取ってあげるのです。マスターの、その自身の背中を掻くことも出来ないような何も意味を成さない小さな手では料理を取ることが出来ないですからね、仕方ないのです」

 あ、はい。頼みます。


 魚の切り身が入ったスープ、よく分からない肉の塊を焼き、その上からどろりとしたソースを掛けたモノ。そして小麦粉を水で溶いて焼いただけのモノ。


 本日のお品書きは、以上3点になります。と言うことで早速食べますか。


 もしゃもしゃ。


 もしゃもしゃ。


 スープは上手く魚の泥臭さを消しているな。帝都の周りに海は無かったからな、川魚かな? ふむ、何だろう、香草でも入っているのかな。美味しいって感じより、普通に食べられる幸せって感じの逸品だね。


 次は焼き肉だ。


 もしゃもしゃ。


 うん、ソースが美味いね。肉は硬いし筋張っているけどかかっているどろっとしたソースが美味い。何だろう、果物のような味とコンソメみたいな味が混ざっている。もうちょっと良い肉で食べたいなぁ。


 もしゃもしゃ。


 小麦粉焼きは、ここで言うご飯みたいなモノなんだろうか。美味くも不味くも無い。濃いめのソース焼き肉と一緒に食べると良い感じだね。


 もしゃもしゃ。


「あ、ラン様」

 俺が食事をしていると食堂に猫人族のユエがやって来た。ちんまい猫姿がてこてこ歩いてこちらまでやって来る。どったの?

「本日の収支報告があります」

 うん?

「作成した武器、売れた武器、その素材費、儲けが幾ら出たか、ギルドへの支払いなどの報告です」

 ふむ。

『ユエに任せる。適当にやってくれ』

 俺は武器屋がやりたかったワケじゃ無いからね。面倒くさいことは丸投げです。

「では、簡単に」

 そう言ってユエが報告を始める。

「本日の儲けが41,600円(小金貨1枚、銅貨1枚)になりました。そこからギルドの取り分や報酬を引いたラン様への支払額は8,320円(銀貨1枚、銅貨5枚)になります」

 ふーん。何だろう、全然、儲かった気がしない。銀貨1枚程度ってさ、ちょっと魔物を狩って素材を売ったらいくよね。この程度、なのか。いやまぁ、何もしていなくても皆が頑張ってくれて、勝手にお金が増えていくってのは楽でいいけどさ。

『分かった。発生した自分へのお金は全て14型に渡して欲しい』

 俺の天啓にユエと14型が頷く。

「畏まりました、マイマスター」

 はい、頼みます。

『14型、そのお金を上手く使うように』

 ま、この程度の金額なら好きにしちゃっていいよ。皆が上手く動けるように好きにつかっちゃってください。


 さあ、明日はやっと迷宮都市に向けて動けるぞ!

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