5-33 砂漠と港と
―1―
翌朝、墓場跡にてジョアンがやってくるのを待っていると、何故か14型がやってきた。何、何、まさか、自分も連れて行って欲しいってこと? まっさかー。
「マスター、今日も旅に出られるのですね。料理人がお弁当を作っております。忘れずに持っていくのです」
な! お、お弁当だと! 確かにお昼抜きはキツいからね、ありがたいね。何というか、早速、ポンさんに加入して貰った効果が出ているなぁ。
俺は14型から弁当を受け取りジョアンを待つ。
「ラン、待たせた!」
しばらくするとジョアンがやって来た。
では、迷宮都市に向けて出発しますかね!
『では、行ってくる。14型、皆と協力して頼むぞ』
「任されましたのです。いってらっしゃいませ、マスター」
14型が優雅にお辞儀をする。はい、行ってきます。
――《転移》――
《転移》スキルを使い避難キャンプ前に到着。さ、じゃあ、東へと旅しますか。
本来は山岳都市で色々と準備をして東へと向かうのだろうが、俺には転移があるからね。その日の準備だけで余裕なのだ。
「ラン、ここから道なりに2日ほど進めば砂漠の入り口、船着き場だ!」
何故かジョアンが得意気に解説してくれる。何だろう、この褒めろ、褒めろと言わんばかりの態度は……。もしかして調べてくれたのか? そう言えば旅の途中で迷宮都市までの距離を聞いたら答えられなくて、その時は調べておくって言っていたもんな。そっかー、ちゃんと調べていたのか。偉いぞ、ジョアン!
岩山に作られた道を歩き、崖のような、油断すれば足を踏み外して死んじゃいそうな道を歩き、お弁当を食べ、岩をくり抜いたトンネルを抜け、そしてその日は帰還となった。
次の日も歩き続ける。
『しかし、魔獣が現れないな』
俺の天啓にジョアンが呆れたように呟く。
「ランが強いのは分かった」
いや、うーん、えーと、俺も別に戦闘狂ってワケじゃ無いんだからね。
「ラン、道を歩いている限り滅多なコトでは魔獣に遭遇しない。魔獣が出てくるなら、それは道じゃない!」
ふーん。そう言えばホーシアに行く時もそんなことを言っていたな。何か、野生の魔獣が道に近寄れないようにするシステムでも組み込まれているのかもしれないね。あー、でもさ、それだと俺みたいな魔獣モドキや帝都に住んでいるオークやゴブリンみたいな亜人って言えそうな魔獣が動けなくなるな。うーん、謎だ。
緩やかな下りの道を降りていくと周囲から自然が消えていった。石で作られた道も、石と石の間隔がまばらになり、ちょっと油断すると道が分からなくなって、道から外れそうな感じである。
しばらく歩くと遠く揺らいで見える先に砂の山が見えて来た。あー、本当に砂漠なんだ。しかしまぁ、アレだね、岩山を抜けたら砂漠だったって、何というか、ファンタジーだなぁ。
そこから更に歩くと砂漠に隣り合うように木で作られた家々が見えてくる。砂漠部分には砂に下半身を沈めた大きな首長の恐竜のような生き物も見えた。何だろうね、アレ。
『ジョアン、今日はもう遅い。一度、帝都に戻り、明日、あちらに向かおう』
俺の天啓にジョアンが頷く。
ま、あそこは明日ゆっくりと探索だね!
―2―
翌日、《転移》スキルで砂漠に隣接する家々が並ぶ場所へと戻る。
「あそこが船着き場だ!」
ジョアンが力強く断言し、そのすぐ後に「……多分」と繋げた。どっちだよ!
ま、行ってみれば分かりますか。
木で作られた高床式住居みたいな家を目指し歩いて行く。あれ? 今日は首長竜がいないな。アレ、何だったんだろうな。
高床式住居に扉は無く、外から中がのぞける。住居の1つにはカウンターがあり、その奥には蜥蜴人が居た。はろー。
「ま、ま、ま、ま、魔獣? 芋虫魔獣が出たヨ!」
こちらに気付いたカウンター奥の蜥蜴人が叫ぶ。それに合わせて周囲の家々から蜥蜴人が現れる。えーっと、どんどん囲まれていくんですけど。
蜥蜴人たちが剣や盾を持ち出して俺を取り囲む。えーっと、どうしよう。
『はろー』
とりあえず俺は天啓を飛ばしてみた。
すると俺とジョアンを取り囲んでいた蜥蜴人たちは、俺たちから離れ、自分たちだけで円陣を組んだ。そして何やら相談を始めた。
「もしかして、アレじゃないかナ」
「そうだヨ」
「姫さまの言っていたナ」
「間違いないナ」
「まったく紛らわしいヨ」
いや、ひそひそ声で話しているつもりなんだろうけど、俺には文字として丸見えだからね。
そのうち、代表者らしい1人がこちらへと歩いてきた。
「何の御用?」
蜥蜴人は舌をチロチロと覗かせながら俺の返事を待っている。えーっと、何の用って聞かれても、別に用は無いんだけど。ただ、単純に通り道だったから通っただけだよ。
『迷宮都市に向かうために通りがかっただけだ』
俺が天啓を飛ばすと、蜥蜴人は頷き、また円陣へと戻っていった。いや、だから、相談が俺には丸見えなんだって……。
「本当に来たヨ」
「来たナ」
「でも砂竜船ないナ」
「説明頼むヨ」
「まったく困ったもんだヨ」
砂竜船? 何だろう?
また、代表者らしい1人がこちらへと歩いて来る。
「砂竜船なら昨日出た。片道4日だから、次は8日だヨ」
うん? いや、だから、あの、よく分からないんですけど。説明をお願いします。
『砂竜船とは?』
俺の天啓を受け、また代表者が円陣に戻ろうとする。いや、それはもう、いいからッ!
『あー、手短に教えてくれ』
俺がもう一度天啓を飛ばすと、円陣を組んでいた全員がこちらへと歩いてきた。
「砂竜船、迷宮都市への往復するヨ」
「するナ」
「片道、81,920円(小金貨2枚)だナ」
「でも昨日出たナ」
うーん、どうも、ここで砂竜船ってのに乗れば、簡単に迷宮都市まで行けたのか? でも小金貨2枚はちょっと高い気がするなぁ。ナハン大森林の猫馬車が小金貨1枚だったもんな。
「ここで待つのカ?」
「宿、8日で40,960円(小金貨1枚)、食事有りなら1日5,120円(銀貨1枚)増えるヨ」
いや、泊まらないからね。待つにしても《転移》スキルで帝都に戻るからね。
「それとも姫さまのように歩いて行くカ?」
「東、オアシスあるヨ」
「そこに歩いて行くナ」
姫さま? 誰だろう。いやあ、本当、誰だろうなぁ。思い当たる人が1人しか居ないけど、ホント、誰だろうなぁ。
「姫さま! も、もし、その姫さまは何処に!」
何故かジョアンが食いついた。
「東だナ」
「オアシス行くって言っていたナ」
おー、この蜥蜴人たちは簡単に個人情報を漏らすなぁ。俺らが姫さまを狙っている悪い奴らだったらどうするつもりなんだ。
「ら、ラン!」
はいな。
「歩いてオアシスに行こう! 方向盤なら用意したから、大丈夫だ!」
ふむ。よく分からないけど、そうしますか。
ま、8日待つよりは進んだ方が気分的に楽かな。
よし、ではオアシス目指して出発だな!




