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COSKILLER (コスキラー)―CKR(シクル)―  作者: 黒薔薇
死刑囚の元コスプレイヤー 久我 誠司(くが せいじ)
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6/6

名もなき告発者

カラン――


スプーンが床に転がる音だけが、

食堂に響いた。


久我誠司は動かなかった。


いや、動けなかった。


「……今、何て言った?」


声が掠れる。


Maskは画面を見つめたまま答えた。


「『久我美咲の件を知っている。もう隠せない』」


一字一句、同じように繰り返す。


沈黙。


久我の喉が上下する。


「……誰だ?」


「まだ分からない。」


「ふざけるな!……」


今度は少し強い声だった。


「誰なんだよ……!」


Dollが立ち上がる。


「久我くん。」


「今さら……今さら出てくるのかよ……!」


久我が立ち上がると

椅子も大きな音を立てた。


目は揺れていた。


怒りじゃない

悲しみでもない

ただ、激しく揺れていた。


「美咲が死んだ時……誰も何も言わなかった。」


「病院も警察も記者も。」


拳を強く握る。


「なのに……どうして今なんだよ……。」


誰も答えない。


答えられない。


すると。


「怖かったんだろ?」


低い声でKnightが言った。


久我が顔を上げると

Knightは静かに続ける。


「組織の中で一人だけ知っているが証拠もなくて

周りは全員黙っている。」


「……。」


「怖い。」


短い言葉だが、

妙な説得力があった。


久我は何も言えない。


Mirageが静かに口を開く。


「そして、

人は一番安全だと思った時に話し始める。」


「安全……?」


「昨日まで、あなたは死刑囚だったでしょう?」


Mirageの声は静かだ。


「でも今、世論が動き始めて

事件に疑問を持つ人が増えた。」


「だから、

この人も……勇気を出したのかもしれない。」


久我は画面を見つめる。


短い文章で名前もないし証拠もない。


それでも――

美咲の名前があった。


今まで誰も触れなかった名前が

そこにあった。


「……。」


久我はゆっくり座り込んだ。


Dollが隣へ来るが

何も言わない。


ただ、そこにいる。


その沈黙が不思議と心地よかった。


そのとき

Heroが口を開いた。


「Mask追えるか?」


「やってみる。」


すぐに指が動くと

モニターが切り替わり

画面に文字列が流れていく。


Jokerが身を乗り出す。


「生きてる?」


「微妙」


「どっち?」


「五分五分だと思う」


「なるほど分からない…」


「いつも…そうだろ?」


いつものやり取りなのに、

今は妙に落ち着く。


久我はそれを見ていた。


やがて

Maskの指が止まる。


「……。」


全員が見ると

Maskがゆっくり顔を上げた。


「一つだけ分かった。」


「何?」


Dollが聞くと

Maskが答える。


「送信場所は病院だ。」


静まり返ると

久我の目が見開く。


「病院……?」


「お前の妹が入院していた病院から送られている。」


今度こそ完全な沈黙だった。


Jokerの表情から笑みが消え

Mirageが目を細める。


Knightが腕を組んで

Heroだけが静かだった。


「まだいる。」


その一言を聞いて

久我が画面を見る。


Heroは真っ直ぐモニターを見ていた。


「知っている人間が、まだあそこにいる。」


久我の胸が大きく脈打つ。


まだ…

まだ終わっていない。


全部消されたと思っていた。


全部終わったと思っていた。


でも――。


「……会えるのか?」


誰に向けた言葉か、

自分でも分からない。


「その人に?」


Heroは答えないで

代わりにMirageが言う。


「分からないわ…

でも。」


少しだけ間を置く。


「会いに行かなければ、

何も始まらない。」


久我は息をのむ。


すると。


「俺は反対だ」


全員が振り向く。


言ったのはKnightだった。


「危険だろ?

警察も動いているし

病院側が証拠隠滅を始める可能性もある。」


Maskが頷く。


「同意だ。

こちらの存在が露見するリスクも高い。」


Dollが眉を下げる。


「でも、この人を放っておけないよ。

証言してくれる人かもしれないんだよ?」


Jokerも珍しく真面目な顔になる。


「しかも、向こうから来たんだ。

助けを求めてる可能性、あるよね?」


Mirageが静かに言う。


「時間との勝負だよ?

動くなら今!」


意見が割れる中

久我は黙って聞いていた。


自分のために六人が話している。


いや――

美咲のために


そう思うと

胸が少し痛くなった。


そのときだった。


全員が同時に口を閉じ

視線が一つの人物へ集まる。


Heroに


Heroはしばらく黙っていた。


そして


「行くぞ!」


短く言った。


Knightが見る。


「決定か?」


「ああ…」


「危険だぞ?」


「分かっている。」


「なら、なぜ?」


Heroは一度だけ久我を見て

そして、静かに答えた。


「誰かが勇気を出して話そうとしている。なら…」


一拍置く。


「俺たちは、それを聞きに行く。」


部屋が静かになる。


久我は、その言葉を見つめていた。


――俺たちは、それを聞きに行く。


昨日から

この六人はそればかりだ。


裁く前に聞く

決めつける前に聞く

真実を知るために聞く


本当に変な連中だ。


そして

少しだけ――羨ましかった。


「……俺も行く。」


思わず、口から出ていた。


六人が一斉に自分を見ると

久我はゆっくり顔を上げた。


「美咲のことだ。」

俺が聞く。」


「俺が……知りたい。」


沈黙。


そして

Heroが静かに頷いた。


「分かった。」


その瞬間

Jokerが立ち上がる。


「よし。」


Dollも立つ。


「準備しよっか♪」


Mirageがタブレットを持つと

Maskが端末を閉じる。


Knightが短く言う。


「十五分後、出発だ!」


全員が動き始める中

久我だけが、まだ座っていた。


胸の奥で

止まっていた何かが

少しだけ、動き始めていた。


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