表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
53/57

52 ルシオとテセロの探索

 ソフィアの魔法学校が軌道に乗り出した。

 

 今、彼女はカリカピタルで校長として、忙しい毎日を過ごしている。

 ルシオは時々カリカピタルへ行き、彼女の魔法学校を手伝い、その傍らロマゴにいる兄や知り合いのところを回って親交を深めていた。

 ルシオの長兄はやや年老いていた。


 中にはもう亡くなってしまった知り合いもいた。

 野鍛冶の親父は数年前にこの世を去ったそうだ。

 会わない数年の間に寿命が尽きていた。

 これからもそう言う経験があることだろう。少し寂しくなるが、新しい出会いもある。


 神からもらった穢れを浄化する魔法陣は、希望する魔導師達に刻むことができた。

 彼等には子どもができていた。


 例えばレオ魔導師だ。彼はある女性と所帯を持ち、子が出来た。

彼のところへ行ってお祝いを渡すことができ、心は晴れやかだ。


 その子には魔力が感じられる。

 お相手の女性は一般人だが、それでも魔力持ちが生れた。


 魔導師が子を持ちたいと希望するのはまだ少数派だが、それでも新しい一歩だとルシオは考える。


 ルシオとソフィアはまだ子を持つ段階に来てはいない。

 お互い忙し過ぎる。だから、今は無理だと納得している。


 テセロを育て上げるのが、今、ルシオに科された使命だ。

 テセロは四歳になりしっかりしてきてはいるが、まだ十年は手がかかりそうだ。


 異空間へ入り、グランデ大陸の大地溝まで転移する。

ここには以前エルフのために、異空間を定着した洞窟がある。

まずはそこを訪問する。


 洞窟の前の転位陣へ出ると、その少し離れた場所に、異空間の入り口が黒い渦を巻いているのが見える。

 ルシオ達はそこから異空間へ入って行った。


 異空間の中には転位陣を設置していないためだが、エルフには不便はない。彼等は精霊樹を通して行き来出来るからだ。


「ルシオさん!」

 タバが走り寄ってきた。

 彼はここの管理者だ。エルフ流に言えば、精霊国の王様だが、ふんぞり返ったりはしていない。


 ここの湖を囲むようにできている、エルフが作った木の柵は堅固だ。

 獣の侵入を防ぐ役目があり、エルフの木魔法で作られている。


 柵の中へ案内され入っていくと、大きな町が出来上がっていた。

 ハーフリングや、ケットシー、コボルトや小さな妖精、そして獣人達。


 暫く見ないうちに人口が増えていた。ここの異空間は広大だ。何せペケーニョ島と同じ広さがあるのだから。

 幾ら増えても問題はないだろう。


「何か困っていることはないか? 僕でよかったら助けになるよ」

 それとなく、アダ王のことを探ってみるルシオだが、返された答えは意外なものだった。


「実はこの頃、この近くに水の精霊の気配がするんです」

「水の……精霊?」


 タバの話を纏めると、

 彼らエルフたちは時々、獣人たちと一緒に大地溝を見て回っているそうだ。

 その話を聞き、ルシオの心は喜びに満たされる。


 あれほど出不精だった妖精たちが、外の世界実興味を持ち始めたからだ。

 それには魔法鞄が欠かせない。


 ルシオが与えた魔法鞄には時間停止の効果が付与されている。

 その為エルフたちは精霊水を持ち歩けるようになった。

 憂いなく外の世界に目を向けるようになれたのだろう。


 タバは、大地溝の壮大さに布令感激したそうだ。そして見つけた。

 トカゲ獣人だ。

 一緒に見て回っていた猫獣人は「以前山脈で見たトカゲ獣人とは違う」と言った。

 最初の精霊国は、獣人が回りで囲みエルフ達の世話をしていた。彼等は山脈の方からきた山羊獣陣と商取引をしていた経験があり、トカゲ獣人もみたことがあったらしい。

 だが、今回の者たちは”違う種族”だという。


 獣人はたくさんの種族がいるため、ルシオも総ての獣人を知っているわけではなかった。

 タバの話の続きを促す。


「私が感じたのは精霊の気配だけですが、確かにアレは水の精霊の気配でした。小さな島のような離れた土地に池があり、ずっと深い処からじわりとした感覚が伝わってきました」


「それで? 精霊の気配で気になるというのは?」


「……精霊は……私達にとっては母のような者です。しかし、テセロのことから分かるように、エルフ達が過剰に反応してしまう。私は今のこの精霊国が愛おしい。だけどもしここに精霊がいると分かったら……どうなるのか、不安なのです」


「そうか。僕にも心当たりがある場所だ。調べてみるよ。ところで君達、フライトモービル、もっと欲しくないかい?」


 外へ出て行くのならフライトモービルは必要だろう。

 多めに渡しておくことにする。

 ルシオにとっては造作もないことだ。簡単に想像魔法で作れるのだから。


 彼らが、ペケーニョと取引できるようになるまで、まだ暫くかかりそうだ。 だから、それまではルシオが中にたち面倒を見よう。


 ――あれ、ちょっとだけ過保護……カナ。


  ★


 テセロをフライトモービルの前に乗せ、飛び上がった。


 この頃は何時もテセロを連れ歩いているから、テセロも慣れたものだ。

 高く飛び上がると気持ちが良いのか、キャッと一声叫び「もっと高く」

と要求するようになった。


「そうか、ちゃんと掴まっていろよ、それ!」

 調子に乗ってルシオモ空高くフライトモービルを浮かす。

 まあ、万が一テセロが手を放したとしても平気だ。

 ルシオの回りには結界を張っているのだから。


 可愛らしい声を聞きながら、以前見たトカゲ獣人がいた場所に降り立つ。


 そこには確かにいた。

 トカゲのような見た目ではあるが、近くで見ると違う。


 ルシオが降り立つと、その足下の地下から、わらわらと出てきて、取り囲まれてしまった。

 彼等はルシオたちを取り囲み、じっと見ていた。


「注意散漫だったな……調子に乗りすぎた」

「このトカゲさんたち……だあれ?」


 だが、不安は全くない。ルシオには結界があるのだから。

 ルシオの周りを取り囲んだ内、一人が口を開いた。

「お前は何者だ。何故精霊の子を連れている」と言った。


 ――言葉が分かる。彼等は精霊語を話せる種族だ!


 これはどうしたことだろう。

 今までルシオやソフィアたちがグランデ大陸で悩まされてきたのは、言葉の壁だった。


 初めは大陸語を学び、つぎには精霊語、地底人の言葉と、会う種族ごとに違っていたのだ。

 獣人に至っては部族ごとに言葉が違うと言われ諦めたほどだった。

 だが、ここにいるトカゲに似た種族は、精霊語を話している。


 彼等は、テセロをじっと見つめ、どこか物欲しそうに見ている。

 ルシオは緊張し、テセロを異空間へ避難させようとしたが――

 その瞬間、彼等が放った魔法に触れ、魔力から隔絶された感覚が走った。


 初めて出会う魔法だった。


 ルシオは為す術無く捕まって しまい、その後、湖に投げ入れられた。









 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ