レポート56:詰まった時には、息抜きを。抜いたところに、また知識。
ソレカラドシタノ。A.難航。
「だー…まただ。」
「まさかニ属性でここまで難しいなんてね…」
あれから数ヶ月。ほぼこもりきりで修行を続け…1属性なら複数術式を組み込めるようになったため2属性に挑戦してるが。
「なーにが『ノーム型のは簡単で、応用が効く。』
だよ…全く簡単じゃねえじゃねえかよ…」
「あはは…当の本人は?」
「出店がやってるとか言ってたか。出かけたんじゃね?」
「出店かー。どんなものがあるのかな。」
「…行ってみるか?」
「えっ…でもお師匠様は修行って……」
「別に少しくらい抜け出しても文句は言わんさ。出店にほかのノームの作品が出てれば勉強にもなるしな。」
「うーんでも…うーん」
悩む素振りを見せつつ少し腰が浮いているあたりクノムも行きたいのだろう。なら、僕の役割はひとつ。
「さっさと着替えていくぞー」
「あ、ちょっと!」
ノームの町は今日も薄暗く。ちょっと陽の光が恋しくないといえば嘘になる。
少しあるけば喧騒が聞こえる。
其処彼処には店の名前の登りと共に、設営された屋台。
軽く見てみれば各々の技術力の殴り合い。
許可を貰い手にとって見てみるが…
「凄いけど…参考にはならないね。」
「まあプロの技術を真似るのは無理だろうに。」
「おや、2人とも見習いかな?」
柔和な顔つきをした丸メガネのノームの青年(見た目に寄らない可能性もあるが。)が話しかけてくる。
「はい。まだまだですけどね。」
「2属性以上の発動で詰まっててな。」
「あー。やっぱりそこで詰まりやすいよね。2属性を理解したらあと3属性とか複数の術式重ねるとかはスムーズに行くんだけどね。」
「そうなのか?」
発言から察するにやはり2属性は難関ポイントらしい。こういうのって師匠が教えてくれるものじゃないのかなどと思うが…
「基礎でやることは同じだからね。少しの応用でいいから…でも2属性に入る時は感覚を掴むまでは難しいのさ。」
「そうなんですね…やり方の教本みたいなのってないんですか?」
「こればっかりは個人の感覚とかにもよるからね。結果は同じでも術式の形は違ったりもするから。」
「んあ?同じ術式なら形は同じじゃねえのん?」
「んー…強いて言うなら足し算みたいなものでね。
10を作るのに5+5でもいいし1+2+7でもいいように過程はひとによってことなったりするのさ。」
「…なるほど。」
詰まるところ人によって過程は異なる。ということか。確かにそれなら師匠が教えないことにも納得が…まあ行く。なんかこう色々、教え方がわからなかったんじゃないかとか。感覚の言語化ができないんじゃないかとか。今聞いたこういうことって最初に説明すべきなんじゃとか思うがそんなことは1度捨ておくこととして。
「結果が起こればなんでもいいってことですか?」
「そういう訳でもないさ。強いて言うなら…性格とか。人生って言い換えてもいい。」
「人生…ですか。」
「まあ。職人らしい感性だな。」
折角なので優男ノーム(適当名称)の作品を買って別れると他にもいろいろ見て回る。
なるほど、たしかに…起きてる事象が似ているようなものでもその過程が異なる。
一通り技術見学。精神がお腹いっぱいになれば次に来るのは…物理的空腹に決まっていて。
「案外、いけるもんだな。」
「意外でしたか?」
今何を食べているかと聞かれれば答えるしかなく。
土竜である。今ここでドラゴンを思い浮かべた奴は火都のあれに引っ張られすぎである。
土竜と書いてモグラ。土の中を進むあれである。
「ちょっと肉質は固いが…案外食えんことはないな。」
「実は煮込みの方が美味しいんだけどねー。」
「よし。帰りに買っていくぞモグラ肉。」
「このモグラはドラゴンモグラだから焼きの方が美味しいかも?」
「…ドラゴンモグラ?」
「ドラゴンモグラ。」
すまない。先程土竜をドラゴンといったやつも正解だった。ドラゴンなのに土竜なのかよ。モグラ。ドラゴンなモグラ。竜土竜。
「なんでそんな妙な名前に…」
「モグラの仲間には変わりないんだけど鱗とかが発展してドラゴンに見えたからだってさ、」
「はーん…そんなもんなのか。」
「何味にするかはまた後で考えるとして…」
「アタシはスパイス効かせたやつが好きだな。」
「どうせ酒と会うからとかでしょうに。」
「ばれたか。」
しばしの沈黙。聞きなれたガサツな声。
後ろを振り向くと、酒を片手に見慣れた師匠。
「……バレたな。」
「バレちゃったね。」
「2人とも、出店を満喫したようで。」
「……参考にする為だ。」
「実際参考になる意見聞けたもんね。」
「ならよし!!帰ってメシだ!うまい酒買えたぞ!」
「…泥酔したら両手足縛るか。」
「足りない。床下に仕舞おう。」
「お前ら師匠の扱いが雑じゃないか?」
「お陰様で。」
「悔い改めてください。」




