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43話

 何事にも決まり事、ルールと言う物は存在する。

 例えば、道路を使用する時。大規模に使用するには許可が必要だし、ただ交通する時にでも交通法規という明確なルールが存在する。

 それはここ、異世界でも同じだ。

 いや、この世界でこそ、法やルールを破ってはいけない。

 この世界には神様という絶対的な存在がいる。

 人知の及ばない強大な力を持つ、彼らの決めたルール。それを破るということはそれに対する罰も人知が及ばないということなんだから。

 

 俺は現在、防衛部隊の主任にこっぴどく叱られている。

 さっきまで、キツネの神様と仲良くおしゃべりしていたのに。

 たった数十分で、なぜか地べたに正座させられている。

 要するに、土下座している。


 知らなかったこととは言え、自分のやってしまったことに大変恐縮している。

 本当に本当に申し訳ないと、心から言える。

 たった、一歩。そう、たった一歩の過ちが、未曾有の危機を起こす可能性がある事を知らなかった。

 いや、この世界ではそのたった一歩ですら、人の種としての存続を脅かすことさえあった。

 そう、身近に接していて忘れてしまうが彼ら、神様という途方もない力の象徴が人の過ちさえ赦してはくれないぐらい器の小さな生き物だと、想像していなかった俺が、ひとえに俺が悪い。


 遺跡付近に到着して、説明もそこそこに早速交代要員として前線に出ようと息巻いていた俺を、他の隊員が慌てて止めに入った。

 しかし、俺が踏みしめた場所は、遺跡が最前線と認識する最遠の場所であった。

 

 この遺跡、千曳の岩は女神の呪い千対人千五百人が拮抗するように出来ている。

 主神の言葉と女神の言葉。双方をなぜかそこだけ、正しく認識している。

 そして、この地域には結界が張り巡らされていて、一日の知生体の総数が二千五百という枠が決められている。それを超えると次の二千五百の枠に移行するように作用する。


 話を俺に戻すと、俺を加えて二千五百一となったことで、女神側の呪いが増えた。

 敵が、二千に増えてしまった。

 敵の総数が倍になったのだ。

 千五百で拮抗していた敵の数が、倍に増えた。

 当然、人側は予備の人員を投入して対抗し、この日の襲撃はなんとか抑え込むことに成功した。


 しかし、無理をすればどこかにほころびが生じるもの。

 今日という日を乗り切るために、予備の人員を消費しローテーションは崩壊。

 しかも、予期していなかった事故であるために追加の人員も確保できない状況に陥った。

 明日から、そう遠くない未来に人と言う種は滅亡すると主任に何度も言われた。

 そう、明日にでも人が滅亡するかもしれない。

 がけっぷちだ。

 俺のたったの一歩で人全体が、がけっぷちに立たされた。


 人生とは分からないものだ。

 ただ平凡に生きて来ただけの、俺の一歩が人類を滅亡へといざなうことになったのだ。

 俺の世界への影響力は、今最高潮と言ってもいいだろう。

 良い意味では決してないけど。


 崩壊したローテーションと疲弊した人員での防衛線。

 やってはいけない、思ってもいけないこと。それは、総力戦だ。

 放っておいても、このままでは防衛線の崩壊は必至。

 防衛線が崩壊しては、世界がヤバイ。

 なら、余力のある時に総力戦を仕掛けるのが最善の手だと、誰かが主張した。

 ・・・・・・提案者は心身ともに疲れていたのだろう。

 

 そんな事、普通は通る訳はない。

 何とか戦線を維持して、増援を待つのがきっと、最善手のはずだ。

 しかし、共に戦ってきた仲間たちも疲れていたのだろう。いや、憑かれていたのかもしれない。

 なぜか、悪手に見えるその提案が、通ってしまった。

 もちろん、俺自身はおかしいと思える。

 この流れも、この提案も、この決定でさえも。

 でも、この事態を引き起こした俺に発言権など当然なく、明日は人類滅亡の最前線に立つことが決定していた。

 要するに、彼らはこう言いたいのだ。

『真っ先に、お前が死ね』

 と。

 

 うん、俺が悪いことは重々承知している。

 そしてそう言いたい彼らの気持ちも・・・・・・分からないでもない。

 でも、悪いけど俺は死ぬつもりもないし、人類滅亡の責任も取りたくはない。

 しかし、前からも後ろからも命を狙われる状況になってしまった。

 間違っても引いてはいけない。

 引いたら間違いなく、女神の呪いを含めた三千以上の殺意が俺に向けられる。

 では、俺は死ぬしかないのだろうか?

 いや、活路はある。


 前へ、どこまでも前へ。

 そう、進むしか道はない。

 当然、向かっていけば俺に殺意を向けたい人も前に赴かなければならない。

 絶望的な状況に憑かれた人たちなら、是非とも俺に一撃は加えたいだろうし。

 そうすることで、少なくとも前から襲ってくる悪意は分散して一人頭の割り当てが少なくなるだろう。

 

 そして運よく千曳の岩に到達できれば、俺の勝ち。

 人類ではなく、俺の勝ちだ。

 この地で、一身に悪意を引き受ける俺が勝つには、それしか無い。

 捨て身の特攻。

 それしか、活路はない。

 ・・・・・・本当にそうか?

 いや、そうしかない。

 

 そして、翌朝。

 俺は、自分の未来と人類の明日へのスタートラインに立っていた。

次回投稿は11/24を予定しております。

では、次回投稿で。

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