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35話

「それで? 策っていうのは?」

「それはね・・・・・・一時的に動作不能にできる、としたら?」

 悪戯の神様が言うには、元々何かの時のために(きん)を神様が任意で消し去る機能を遺跡に付けていたそうだ。

 その機能は改良した今でも有効で、触媒に使われている金を消し去ることが出来るそうなのだが・・・・・・。

「長くて20分が限度なんだよね」

 その20分が過ぎると、呼び出された機器は元の機能を取り戻す。

 潜入から制圧までをその中で行わないといけない。

 正直、かなりシビアな時間だ。

 

「中途半端やな。最初っからやらんほうが、なんぼかマシやな」

 キツネの言葉が冷たく響く。

 けど、俺も同意見だ。

 

 仮に20分以内に遺跡に到達できたとして、そこから手間どり後ろから攻撃でもされようものなら、俺には、いや、人間には対処のしようもない。

 今回は残念ながら・・・・・・・。

「待って! お願いだから!!」

「そうは言われても」

 いっそ、神様自身が行った方が・・・・・・。


 そうだよ! 神様相手なら人間には勝ち目がない。

 だったら、遺跡だけ持ってきてもらって、俺が安全になった所で壊す。

 それが一番確実で、安全じゃないか!

 なんで今までそんな事に気が付かなかったんだ。

 いい事想い――

「哲夫君、それも却下や」

「え・・・・・・?」


「考えても見てみい、神様が自分を売り込むために人間に与えた遺跡、なんて言って取り上げんの? 危ないから? だったら何で創った言われへんか? この世界の人らが神様に寄せてる信頼はキミが思うより重いんや」

 え~、それだけの理由で?

 あ、いや、俺が考えてる通りの世界であれば、そんな理由も理由になるか。

「それに万が一があったらそれこそ事やしな」

 ん? キツネが何かを口にしたようだけど、悪戯の神様がうるさくって聞き取れなかった。

 

 けど、実際どうする?

 遠距離で電子兵装と戦って、中距離と近距離で魔法戦。

 そんな相手、俺に対処できるのか? 今見えている武器たちはどれも近距離戦闘用の武器しかない。

 銃器の類はないし、そもそも俺がまともに扱えるのかって話にもなる。

 ライフルで超長距離射撃なんて、憧れるシチュエーションではあるけど。

 まあ、実際に銃器を使ってもハンドガンでさえ扱える自信がない。

 

 っていうか、この中に弓矢さえないのは何故なんだろうか?

 何か縛りみたいなものでもあるんだろうか?

 おっと、今考える事じゃなかったな。

 さて、どうする? 見たこともない可能性のある兵器を相手に戦う方法か・・・・・・?


 ん? 待てよ?

 俺でさえ見た事がない可能性のある兵器?

 それを使うのは・・・・・・この世界の住人。

 あ!

「そうか、そうやったな」

「え? なになに?」

 悪戯の神様は未だに分かっていないみたいだ。

 知らず知らずに攻略法に至っていたみたいだ。


 熟練度が上がる前に乗り込んでしまえば、どんなに優秀な電子機器であれガラクタと同じだ。

 仮にまともに使えたとしても、全員が全員扱えるわけないし。

 人数が多ければ多いほど、フレンドリーファイアの可能性も高くなる。

 もし仲間を攻撃してしまった場合、動揺は必ず出る。

 そして、それに気が付くまで敵は自分が優位であると思い込んでいるだろう。

 単身で乗り込めば、間違いなく取り囲んでくるに違いない。

 それがこちらの狙いだとも気が付かずに。


「なんや、拍子抜けやな」

「だね。あとは敵の場所だけど」

「? 何が抜けてるのか知らないけど、遺跡の場所はあそこだよ」

 悪戯の神様が指さす方角を追う。


 随分と遠い場所にあるみたいだ。

 山も川も無く、街並みだけが広がっている。

 けど、この方角のどこかに占拠された遺跡がある。

「やま? かわ? 違うよ、あの教会にあるよ」

 ・・・・・・。


 ・・・・・・ふぇ?

 な、なんていった? 教会・・・・・・?

「そうそう、アレね。もともとこの地域の中心に位置する建物だから目印にちょうど良かったんだ」

 思わずキツネを見ると、頭を抱えているのが見える。

 良かった。キツネも俺と同じ想いのようだ。


「やっぱり、帰ろうか?」

「いや、そうもいかんやろ。放置したら何が起きるか分かるやろ」

 だよね。今は大人しいけど、その内絶対おかしな行動を起こすに決まっている。

 そうなったら、この街は地獄になる。

 動く者すべてが、敵の的になる。

 下手をすれば、この街どころか周辺まで被害は及ぶだろう。


 20分どころではなかった、もう一刻の猶予すら存在してなかった訳だ。

「くそっ! キツネは住民の保護をよろしく! 行ってくる!!」

 言うが早いか、俺はスーツの力を最大限まで引き出し高台から走り出していた。


 街に着くと、遠くからは気が付かなかったが空に何かが浮んでいるのに気が付く。

 ドローンなのか? カメラと銃座のようなものが取り付けられた何かが不安定にホバリングしている。

 厄介だな。っていうか、空から監視と警備を行うなんてこの世界の住人も侮れないな。

 思っていたより、知恵が働くじゃないか。

 目標の教会まで200メートル。

 身体強化してもあの位置じゃ見つかるよな?

 落としたら、敵対者がいる事を知らせてしまうかな? 

 上手く侵入しても、あれがあったら住人を人質にとられないか?


 動けない・・・・・・。どう動けば安全なんだ? 被害を少なくする選択ってどっちなんだ?

 自分の中には、誰かを守りながら動くという想定はない。

 神様との訓練でも、誰かを直接かばうなんて無かったしな。

 ・・・・・・今は、隠密性を優先した方がいいかもしれない。

 住民の保護は、直接神頼みしてきたしな。


 魔術師は単独行動で任務にあたると聞いていたけど、その場面は思っていたより少ないのかもしれない。

 そんなちょっとした甘い考えが心に浮かんでいた。


 

次回投稿は11/08を予定しております。

では、次回投稿で。

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