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32話

 その日、俺の通う高校。棘城(いばらき)県立左河合(さかわい)高校に激震がはしった。

「まったく、俺が既製品を食べてるくらいで大騒ぎしやがって!」

 職員室から出て思わずボヤいてしまう。

 だってさ、「どこから取って来た」とか「盗みを働くぐらい飢えていたのか」なんて言われたら、誰だってボヤキの一つぐらい出るってもんだろ?

 だいたい、クラスの奴らもいきなり職員室に駆けこまなくっても、俺に確認すればいいだけの話だろ?

 登校途中でコンビニ弁当買って持ってきただけで、なんで犯罪者扱い?

 普通、バイト増やしたとかそう言う発想になるだろ?

 それとも、俺の風体ってそんなに怪しく見えているんだろうか?

 ・・・・・・それはそれで傷つくなぁ~。


 よし! 明日からは教室で特製野草スープを堂々と食べてやる。

 匂いなんか気にしないで、、とびっきりのやつを作ってやる。

「やっぱ、この子アホやで。救いようもないアホやで、仕事休ませよか?」

「何を考えていたのか知りませんが、次は警察に赴かなくてはいけなくなりませんか?」

「遅かれ早かれちゃう?」

 げぇ! 教師連中め、保護者にまで連絡したのかよ。

 しかも冤罪ってすぐに証明したのに、本当に教師ってどんな世界でもバカばっかりだな。


 取りあえず、事の経緯を説明し教師たちともう一度話し合うことになった。完全に疑いは晴れたが、どうしても愚痴ぽくなるのは仕方がないだろう。

「そうは言っても、この世界で学業も商売も神様が絡んでいる云わば、『神様による施しの場』だからね。何か起きて神様による処罰が起きないためにも、早い行動と決断が必要なんだよ」

「あの大騒ぎの理由は理解しましたけど、本人の釈明も無しに犯人扱いっていじめと同じじゃないですか」

 今回、保護者として瑠璃男さんが呼ばれ、キツネが介入係として呼ばれた。

 この世界で犯罪を犯し、万が一神様に被害が及ぶと被害を受けた神様の自由裁量で処罰することが可能な状況が、ごくまれに存在する。

 その場合神様の発言が優先されるため、いかなる国家権力でさえ介入が困難になる。

 そのため、行き過ぎが無いように管理神のグループが嘆願するという業務も彼らは行っている。

 今回は、俺が対象であったためキツネが来てくれたそうだ。

 そして、この世界に俺の家族が存在しない。いや、厳密にはこの身体の家族はいるんだけど、それを説明するのはややこしい。なので、学校には保護者として瑠璃男さんを登録させてもらっている。

 瑠璃男さんの家族にこのことがばれてもややこしいが、ま、立場上ね。


「ま、今日の所は早退してもいいそうだから、私の部屋でお茶でもどうだい? おいしいお菓子もあるよ?」

「そこまで子供じゃ・・・・・・じゃあ、少しだけいただきます」

「ま、今回は何にもなくってよかったけど、くれぐれも気を付けてな?」

「分かってるよ」

 はあ、学校も隠れ蓑としては潮時か?

「あかんよ、無理して頼み込んだんやから短気起こさんといてな」

「はいはい」


 瑠璃男さんの部屋から帰る途中、俺は近くの川に訪れた。

 まあ、不意にできた時間を潰すためって言うのもあるけど、食料確保のためでもある。

 河川敷は、今や俺にとって大事な食料保管庫だ。自然なままそこに有る野草(しょくりょう)を持ち帰ることが大事な日課である。

 人目の付きにくい橋脚の下、そこには通年通して採取できる野菜がある。

 クレソン、俺の主食だ。


 たまたま偶然、見知らぬ野草を投げ捨てたら手の届きやすい位置で爆発的に増え始め、これまた偶然食べれることに気が付いて、それから主食に昇格したということになっている。

 いや、そもそもこのクレソンは俺に与えられた神様の贈り物かもしれない。

 だって、定着と成長が異常に速かったからね。

 そうだよ、きっと神様からの贈り物に違いない。

 いい子は間違ってもマネしないことをお勧めします。・・・・・・誰に言ってんだ俺?


 時間があり余っていて、少し取りすぎた気もするがまあ、いいだろう。

 さて、することもなくなったな。

 日暮れまで時間もある。

 さて、何しよう。

 ああ、そうだ。あれの確認でもしておくか。


 さらに人目の付きにくい場所へと、脚を運ぶ。

 あまり人目に晒していいものでもないしな。

 上からは橋が邪魔して、周囲は草木が邪魔をする丁度いい場所を見つける。

 そこで、俺は目の前の物を手に取る。

 手には白刃がきらめく。

 そう、俺の唯一にして最大の攻撃手段、『イチモクレン』

 この魔法なのか、能力なのか不明な不思議の特性を把握しないと。


 前回は使うことは無かったけど、これから使っていくにあたって知らないといけないことが多すぎる。

 あの飲み込まれるような高揚感はこの武器たちのせいなのかとか、なんで今は白い刀身が黒くなるのかとか、あの異常状態までの限界はとか、使い続けたら俺はどうなるのか?

 知らないといけないことが山の様にある。

 さしあたって、今日の所は色の違いについて考えてみよう。


 周囲に集中すると見えている武器たちは、全部が白い。

 色の違いが前に考えた通り、怒りに反応するとしたら、その色の違いって何だろう?

 試しに手にした白刃を振るってみると、切れ味は問題が無いようにも思える。

 決してナマクラではない。

 と言う事はだ。白くても武器としては使うことが出来るんだ。


 じゃあ、なんで色が変わる? 意味がないのかな?

 切れ味が変わるなら理解が早くていいんだけど、そうじゃない別の特性があったりしたら実戦の中で把握しないといけないんじゃないのか?

 それは怖くてやりたくないんだよね。

 血で濡れた手を見るのも怖いけど、何よりあの高揚感は危険な香りがする。

 

 あれも俺の怒りに起因するものなんだろうか? もしそうなら、今は試すことは出来ない。

 幸いにして、怒りを覚える出来事が今日あったばかりけど、それを解放して無関係な誰かを傷つけることになったら・・・・・・流石に誰も庇ってはくれないだろう。

 さて、どうすればいいかな。


 俺は知りたいことが知ることのできないもどかしさを感じていた。

ミントテロ、ダメ、絶対!

次回投稿は11/02を予定しております。

では、次回投稿で。

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