↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ルニタニアオンライン イオン編  作者: るるゐゑ
冒険
41/86

40.ドラゴンティアー

 天井の斧を回収するため、ノーザに『浮遊』をかけてもらったヤラッサが、平泳ぎで宙を進むのを見て全員が笑った。考えるだけで目的の場所まで移動できる筈だが、彼は『浮遊』で飛ぶのは初めてらしく、空中で頭をかいて照れていた。何故か不意に男性陣の笑い声がぎこちなくなり、途切れて静けさが帰ってくる。


「?」


 妙な空気の場で、普段以上に無表情のチャカが堪えきれず吹き出して、イオンに背を向けた。テスはうつむいて黙ってしまっている。


「あー……イオンちゃん? それ、直した方が?」


 アレスが困ったような顔で、うつむいたままイオンを指差した。イオンの座る球体は透明で、チャージされたMPの量を表しているのか、今はその中に七割ほど液体のイメージが投影されている。そういえば最初は気にかけていたが、ゴーレムの腕が飛んできた時にそんな余裕もなく、慌てて座り直してずっと同じ姿勢だった。


「あ……」


 ワンピース裾が捲れたまま、自分の太股に押さえつけられていた。透明な球体を透して下からは丸見えらしい。真っ赤になって慌てて座り直す。再びホールに笑い声が響いた。


 球体が満たされるのに、もう少し時間がかかりそうだった。イオンの下でアレス達は休息をとっていた。座ったまますることが無いイオンは、脚をぶらつかせながらドラゴン像を眺める。この世界でよく見かけるモチーフで、作中神話の中の創造主であるドラゴン。像の顔を上から眺めるのは初めてだったが、イオンは何かがおかしいと感じた。全体のフォルムは恐竜の立ち上がったような姿に背中の羽根、角のある細長い頭部。全体像はドラゴンと云われて何の違和感もない、写実的で精密なデザイン。でもよくみると耳のような器官が四つ。眼球も四つ。下顎の中間にある盛り上がりは筋肉のこぶではなくて関節かもしれない。薄く開いた口のなかも複雑な構造が再現されているのに、そのわりに前肢の指の爪や表皮の鱗は省略されて像の表面は滑らかになっていた。


「何見てるんだ?」


「ドラゴン? みたいな? 像。」


 半分独り言のようにテスに答える。テスも下から像を見た。


「ドラゴンじゃないのか?」


「顔が変。眼が四つ有るよ。」


「オリジナルな感じを出そうとしたんじゃない? ドラゴンのデザインなんてありふれてるし。」


「上から見たらなんだか……」


 高く透き通った、それでいて柔らかな音がした。大きな音ではなかったが、ホールにいた全員が音のした方を振り向いた。水面に一滴、水滴が落ちるときの、あの音に似ていた。


 イオンの座る球体から、もうひとつ蒼く光る球体が浮かび上がり空中で止まった。小さな球体の表面は、空気の動きに漣を作って揺れて輝いていた。イオンが手を伸ばして触れてみると、輝く球体の一部が指に絡み付こうとするように伸びて、手の中に滑り込んだ。手のひらから零れそうになるそれを捕まえようと、握りしめる。意外な硬い手応えに少し驚いた。球体はイオンの手のなかで姿を変えていた。手を開くと、そこには蒼く輝く泪形の宝石のネックレスが握られていた。


「……ドラゴンティアー」


 ドラゴンの頭上の球体は満たされ、淡く輝いていた。『クエスト』は完了していた。


 イオンは球体から降りて、下にいるテスの横に立った。『ドラゴンティアー』を首にかけてみる。泪の形の小さな宝石は淡く光を発していた。どんな効果のあるアイテムなのかわからない。ひとつだけではなんの効果もないのかも知れない。テスが《識別》で調べてみたが、名称の下に『Bind Item』と表示され、トレード不可のアイテムらしい。それ以外は全ての性能が『?』で表示され何もわからないとの事だった。


「こりゃ高ランクのアイテムかな?」


 テスの《識別》があがるまで、詳しい性能を知ることは出来なそうだ。イオンは自分の胸元にある泪の形の宝石を指でつまんで見た。微かな発光も弱くなり、消えかけて、今はただの小さな宝石だった。








「後はガーゴイルか……」


 全員が集まって座り、ダンジョンから脱出する為の話し合いになった。たった一つ問題は、エントランスのガーゴイルだった。あらためて《識別》スキルで見た時のガーゴイルのスペックを、テスが説明した。チャカの斬撃さえ弾く防御力にリジェネレーション、敏捷性が高く魔法も効きにくい。AIがあまり優秀でなく、自動的にヒットポイントの低いものを襲うだけの行動パターンを繰り返す。テスの説明のあと、アレスが立ち上がって話し始めた。アレスの話によると最初は四体がいたらしい。二体は何とか倒すことが出来たが、アレスパーティーの三名が犠牲になったと云う。


「……」


「……あれしか無いかなぁ……」


「あれか……」


 テスが呟くと、ノーザも思い当たって呟き返した。チャカも何か気が付いたがピクッと身を震わせて何も云わない。三人を見てイオンは、今自分が思い付いた事とテスの考えが違うものであればいいと、思ってしまった。アレス達はなんの事かわからず怪訝そうな顔をしている。テスは少し顔色が悪い。イオンの方を向いて、一言ずつ噛み締めるように話し出す。苦渋の選択だと顔に書いてある。


「イオン、あの銃、まだ材料ある?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。