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ルニタニアオンライン イオン編  作者: るるゐゑ
グリーゼの街
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22.システム

 アレスが『開拓団』から帰還するまで、話し合いは中断ということになった。まずシェリルとノーザが帰ると云って席を立った。シェリルはまだ青い顔をしていたが、帰り際にロンサムと後日面談の約束を取りつけると、丁寧に頭を下げて辞去した。

 ノーザは立ち去るシェリルの後ろ姿をみて、何事か考えていたが、テスが近づくとに声をかけてきた。


「彼女はどうして《プレイヤー》の事が?」


「突然そうなったらしい。他にも『仮想現実』とかログインとかいう言葉もわかる。さっきも『クエスト』も『フラグ』も理解してたな。」


「ほかの《NPC》もそうなるのかな?」


「どうだろう? でもシェリルは最初から他の《NPC》と少し違ったな。」


「というと?」


「あれだよ、あの変な違和感。あの感じが元から他の《NPC》より少ないんだ。」


 ノーザはシェリルと話したときの事を思い出してみる。云われてみると確かに彼女は《NPC》達と違うようだ。それでも、彼女の『覚醒』は不思議だ。きっかけや方法がわかれば、うちの《NPC》で試してみたいが、危険な兆候かもしれない。まずは彼女を観察してからだ。ノーザは考えながら、テスに別れを云って歩き出した。









 ロンサムは元の大きさに戻るとイオンに《細工スキル》については訊いてきた。彼はシェリルからイオンの事を聞いて今日ここを訪れたのだった。


「いくつか定規のような物と、コンパス、角度を測定するような物を作って貰えるかな?」


 彼の注文は『現実』の製図用品を、そのまま拡大した用なものだった。定規や分度器は生産ツールの基本形状に目盛りを写し取ってすぐに作ることが出来た。コンパスは流用できるレシピもない為時間がかかりそうだ。巨大な三角定規のセットを作りながら、イオンは幾何学の授業を思い出した。


「いや、ありがとう。建物の影の角度から太陽の距離を測ってみようかと思ってね。」


 ロンサムは自分はこの『仮想空間』の事を調べていると云う。この世界の見えて、聞こえて、知ることの出来るすべてが研究対象だと。


「例えば、この世界の一日は何時間か知ってるかね?」


「『現実』と同じくらい、二十四時間?」


「そう、最初は二十三時間五十六分だった。《付与魔法》に、効果時間がきっちり一分の魔法がいくつかあるだろう? あの時間を元にして砂時計の様なものを作ったんだ。」


「時々測定し直しているんだが、ある日突然一日は約二十四時間一分になった。」


「季節ってあるの?」


「突然変わったんだ。季節はきっと『未実装』さ。だが一日の長さは『パッチが当たって』変更になったらしいね。もっと正確に測定する方法が有ればいいんだが、何か時計のような物を思い付いたら作ってみて欲しい。」


「ひょっとして高い《スキル値》のレシピに使えそうな物があるかな? 全然調べてないわ。」


「まあ急いじゃいないさ。あとこれは面白いね。」


 ロンサムがイオンのランタンを首で指し示した。


「強くスイッチをねじ込むと明るくなる。物理的な力に出力が比例するようになっているね。」


「この発光部は、よく見るとバッテリーの接している面は光ってないね。力とMPを一つの面から入力して、他の面は出力になるようだ。」


 云われてイオンはランタンを一つ手にとって、発光部分のクリスタルを見た。全部で二十四面ある多面体で、スイッチを捻ると確かに亀の云う通り光るのは何も接していない二十三面の様だ。


「こういう『現実』のシミュレーションではないシステムは、意外に単純なルールで作られている事が多いよ。この発光の仕掛けは応用が色々と有りそうだ。」


「?」


「例えば《剣術スキル》が無くても剣で攻撃する事は出来る、当たるかどうかは知らないが。『現実』の世界でフェンシングや剣道でもやっていたら《スキル》が無くてもある程度上手く出来そうだ。これは《スキルシステム》が剣を使うときの身体の動きをアシストしているんだろうね。そのあとの結果は物理学的な演算だな。」


「だけど魔法はどうかな? 『現実』に存在しない物はその仕組みが丸ごと《スキルシステム》によって制御されて、『現実』の世界で持っていた技能や知識は関係ないだろう。こういったものは正しい手順を踏んで行うと、何時も同じ結果を得られるし、手順や条件が間違っていると何も起こらない。その手順や条件は単純な物が多いんだ。まるで我々に『勝手に調べて改良しろ』と云ってる見たいにね。」


「その発光の仕掛けは後者の物だろうね。色々と条件を変えて調べてみたらいい。」


「『システム』ね。そう呼ぶわ。」


 ロンサムの話を聞きながら、イオンは別の事を考えていた。


「何をだい? お嬢ちゃん。」


「《スキル》とか魔法の仕組みを動かすモノ、私達の頭のなかを弄ってるモノ。世界を動かして、少しずつ作り変えているモノ。私達を閉じ込めてるモノ。敵じゃないかも知れないけど、気味が悪い。名前がないと不便だから『システム』って呼んでおくわ。」

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