↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
1/13

第0章 変わったのは、なろうだけじゃなかった

ここまで私は、「小説家になろう」という場所と、そこで生まれてきた作品がどう変わってきたのかを、好き勝手に振り返ってきた。


異世界転移が増え、転生が増え、チートが増え。


ゲームのような世界が当たり前になり。


料理をしたり、農業をしたり、内政をしたり。


追放され、ざまぁし、悪役令嬢になり。


気がつけば現代にダンジョンが生え、配信を始め、異世界から帰ってきた元勇者まで普通に街を歩くようになった。


いや、本当にいろいろ変わったものである。


十数年前、まだ異世界へ行くだけでワクワクしていた頃の私に、


「そのうち異世界に行かなくても、近所のダンジョンで魔物を倒しながら動画配信するようになるぞ」


と言っても、たぶん何を言っているのか分からなかっただろう。


そんなことを第一部で散々書いた。


そして第二部では、それらの作品がなろうの中だけでは収まらなくなり、書籍になり、漫画になり、アニメになり、とうとうアニメを見ているだけの人からも、


「またなろう系か」


なんて言われるところまで来た話を書いた。


ずいぶん遠くまで来たものである。


……などと、すっかり昔を知る古参みたいな顔をして語ってきたわけだが。


ここで、ふと思った。


変わったのは、本当になろうだけなのだろうか。


考えてみれば、私がなろうを読み始めてから十年以上経っている。


当たり前だが、その間に作品だけが歳を取ったわけではない。


私も歳を取った。


そして最近、自分が読む作品を振り返ってみると、昔とは明らかに好みが変わっていることに気がついた。


昔なら、主人公が苦労していても読めた。


仲間に裏切られようが、洗脳されようが、闇落ちしようが、


「うわ、ここからどうなるんだ?」


と先を楽しみにできた。


鬱展開だろうが、重い展開だろうが、それも物語の一部として普通に読んでいた……はずである。


ところが今はどうだ。


仲間が洗脳された。


「うわぁ……」


裏切り者が出た。


「うわぁ……」


主人公が何十話も苦しみそうな展開になった。


「これ、しばらく続くやつか……」


先が気になるより先に、疲れるのである。


我ながら、ずいぶん弱くなった。


その一方で、最近よく選ぶのは何かと考えると、


主人公は最初から強い。


大抵の敵には負けない。


周囲から好かれる。


仲間内でドロドロしない。


嫌な奴が出ても、あまり長く引っ張らない。


コメディ多め。


スローライフもいい。


大事件なんて起きなくてもいい。


主人公がご飯を食べて、村を作って、仲間が増えて、みんなで楽しそうに暮らしている。


……それで満足している私がいる。


ただし。


ここで一つ、勘違いしないようにしておきたい。


私は昔、こういう軽く読める作品を嫌っていたわけではない。


主人公が強くて、安心して読めて、仲間と楽しく旅をする。


そういう作品は昔から好きだった。


変わったのは、


「軽い作品を好きになった」


ことではなく。


昔はその外側にある、重い話や面倒な展開まで、もっと広く読めていたことなのかもしれない。


好きな場所が変わったというより。


読める範囲が少し狭くなって、昔から好きだった場所へ戻ってくることが増えた。


今のところは、そのくらいに考えておいた方が正確そうである。


考えてみれば、「主人公最強」に対する見方だって変わった。


昔は、主人公が少しずつ強くなっていく過程も、今より広く楽しめた。


強敵に苦戦し、新しい能力を手に入れ、さらに強い敵を倒し、ついには世界最強へ。


そして物語の最後には神だの魔王だの、それに近い存在にまで辿り着く。


そこまで行けば、もう終わりだった。


これ以上、何と戦うんだという話である。


ところが最近はどうだろう。


最初から最強。


最初から世界最強。


下手をすると、最初から神みたいな存在である。


昔なら物語の終着点だった場所が、今ではスタート地点になっている。


それでも私は普通に読む。


むしろ安心して読む。


「あ、この主人公なら大丈夫だな」


と思いながら読む。


どうやら私自身も、なろう作品を十数年読み続けるうちに、ずいぶん変わってしまったらしい。


それだけではない。


昔は「鑑定」という能力が出れば、どんな能力なのか説明を読んでいた。


今では、その名前を見ただけで大体分かる。


追放。


ハズレスキル。


悪役令嬢。


冒険者ギルド。


そういった言葉から、この先の展開まである程度想像できるようになった。


作品がテンプレ化したという話はよく聞く。


だが同時に、


読者側もテンプレを覚えてしまった


のではないだろうか。


そして十数年の間に。


作品だけでなく、読む側の私も変わった。


好みも変わった。


苦手なものも増えた。


テンプレにも詳しくなった。


読む前から「これは私向きだな」と分かる作品も増えた。


逆に、


「あ、これはたぶん途中でしんどくなるやつだ」


と避けることも増えた。


そんな私が、


「最近のなろうは変わったなあ」


などと偉そうに語っていたのである。


いや。


一番変わったの、私じゃないか?


というわけで今回は、なろう作品そのものの変遷ではない。


十数年なろうを読み続けた結果、読者である私自身がどう変わったのか。


テンプレに慣れ。


最強主人公を以前より選ぶようになり。


重い展開を避けるようになり。


安心して読める物語を求めるようになった。


それでも新しい流行が出れば、また読んでしまう。


そんな一人の読者の変遷を、今回も勝手に振り返ってみようと思う。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。