善得寺城に戻ってひと騒動です。
何事もなく、善得寺城へ帰って来たのだが城門で何やら門番が可愛らしい少女ともめていた。
話を聞くと少女が誰かに合わせるように門番に掛け合っているらしく、少女の背後には諦めた表情の数名の男たちが控えている。
その中の1人が少女と門番の間に入り、事情を説明をしようとしていた。
私たち一団は少し離れた所でそのやり取りを見ていたが、どうやら門番が私たちに気付いたようで門番は同僚たちに目配りをした後に少女たちにそのまま待つように告げ、私たちの元にやって来た。
門番の同僚たちは私たちと少女たちの間に陣取り、少女たちをしっかり警戒している。
ちゃんと仕事をしているな……と感心していた。
まあ、普通の事だけど後で酒でも差し入れしよう。
門番の話だと少女たちは私と面会しに来たそうだ。
どこの誰とも知らない者を私に取り次ぐ事は出来ないと告げると少女が名乗ろうとしたが、周りの男たちがそれを止めたのだが、その時に男の1人が【姫】!!と口走ったとの事だ。
その一言でこの少女が身分の高い人物だと思い、どうしようかなと考えていた時に私が現れたそうだ。
少女には見覚えは無い……
今川家臣の娘か??
取り敢えず、少女と話をしてみるか……
柳生 家厳と世鬼 政棟はいつでも斬れる様に警戒している。
大丈夫だと思うが用心に越した事はない。
私が少女に近づくと男たちも警戒する。
私が今川 義元に何の用だ?と尋ねると少女は義元と言う人物が私の夫に相応しいか試しに来たと笑顔で答えた。
その言葉を聞いた男たちは頭を抱えていた。
私たちも一緒に頭を抱えた。
男たちを率いていると思われる男を手招きして呼び寄せ、詳しく話を聞く事にした。
男は【教来石 景政】と名乗った。
景政といったら後の【馬場 信春】の事だよな……
男の正体に驚きながらも表情に出さずに少女の正体は巴姫かと尋ねた所、景政は頷いた。
巴姫!!何でこんな所に来ちゃってるの?
私は取り敢えず、景政に私が義元と名乗ったが景政は家厳たちに目で確認を取る。
家厳たちは皆で頷く……
景政から私に説明が始まるが景政の背後では話に加わろうとする巴姫を他の男たちが大人しくしているように説得している……
景政の話を要約すると、巴姫は自分より弱い男に嫁ぐ気は無い!!
私を嫁にしたければ、私を倒せ!!
との事だ。
景政の背後では巴姫が、僧侶出の公家かぶれなどに誰が嫁ぐものか!!
義元をぶちのめして、この婚姻を破棄させてやる!!
と騒ぎ出した。
景政さん……
だいぶ、オブラートに包んで私に伝えたのに台無しだね。
私はため息をつきながら、巴姫に名乗った。
それを聞いた巴姫は、噂で聞いていたのと印象が違うなと言いながら、修練場に案内してくれと言って来た。
景政たちは必死に巴姫を説得するが巴姫は口を尖らせて文句を言っている。
そんな巴姫を見て、巴姫と立ち合わないと問題は解決しないと思った私は巴姫を修練場へと案内した。
修練場へと向かう途中、景政から話を聞く。
景政と言えば【武田四天王】の内の1人なんだけど、よく考えると私の家臣には武田四天王の飯富 昌景と工藤 元豊の2人がいるんだよな……
武田家はこの先大丈夫だろうか……
まあ、私がそんな事を考えてもしょうがない。
景政の話を聞くと巴姫は幼い頃から武芸に興味を持ち、それを喜んだ武田 信虎が刀、槍、弓、薙刀などを巴姫に教え込んだそうだ。
巴姫も喜んで学び、中々の使い手に成長したらしく、武田家臣も負ける者が続出しているようだ。
巴姫はその自信により、自分より弱い男に嫁ぐ気は無いそうだ。
巴姫がその事を信虎に告げ婚姻を拒否したのだが、信虎は巴姫に自分の目で確かめたら良いだろうと言い放ち私の所にやって来たそうだ。
信虎としても本当に巴姫が自分の目で確かめると思っていなかったので慌てて景政を付けたそうだ。
景政も色々と大変だなと慰めておいた。
そうこうしている内に修練場に着き準備を始める。
巴姫はどうやら刀が1番のお気に入りらしく、木刀を手にするので私も木刀を手にする。
巴姫と向かい合うがそれほど凄みは感じない。
私は木刀を構えながら巴姫の出方を待つと早速、巴姫が動いた。
踏み込みもそれほど速く無い、少女なので力もそれほど無い、刀筋も素直過ぎて簡単に刀筋が読めてしまう。
何回か木刀で受けては隙を見て打ち込み、寸止めする。
それを数回繰り返すと巴姫は肩で息をしながら悔しそうに、私に参りましたと告げた。
巴姫は体力もそれほど無いな。
景政の巴姫の話はちょと話を盛りすぎていたようだ……
話を盛った景政に非難の目を向けると景政たちは唖然とした表情で私を見ていた。
そんな景政を無視し、動き足りない私はそのまま修練を始める。
それと同時に家厳たちも修練を始めた。
やはり身体を動かすのは気持ち良い。
家厳たちとも打ち合いをし、良い汗をかいて満足したところで巴姫たちを放ったらかしていた事を思い出した。
巴姫たちは私たちの修練を食い入るように観ていたらしい。
若干、引いているように見えるが気のせいだろう……
今、修練していたのは私を守る、馬廻りと小姓たちだけなので少し厳しめの修練だ。
修練を観て唖然としていた巴姫だが気を取り直し、私に弟子にして下さいと頭を下げられたが私も人に教えるほどの腕は持っていないのでと、速攻で断った。
せめて、一緒に鍛錬して行きたいと告げられたのでそれは了承したのだが……
巴姫が満面の笑みで喜んでいる。
なんか可愛いかも……
景政たちも一緒に修練する事になり、修練に参加しない者たちは甲斐国へ報告に戻って行った。
巴姫はそのまま私の元に留まるつもりらしく、景政と5人の男たちもそのまま残るとの事だ。
それで良いのか尋ねたが良いそうだ。
巴姫も私たちと一緒に那古野城へ向かうそうだ。
信虎の方は大丈夫なのか?と尋ねたが、大丈夫じゃ無いの?武者修行に出るって使者送ったし!!と平然と言い放った。
景政は大丈夫なの??
えっ!!大丈夫なんだ……
問題も解決したし、那古野城へと向かおう!!
巴姫には聞いていないけど一応、夫として認められたのかな?




