43話 シェフ大室 卵と牛乳スペシャル 後編
「あれ、みんな居るのか。おはよう。どうした?」
食事部屋に入ると、先に入ったジャスタと共に、みんな勢揃いで困惑の表情を浮かべていた。視線を辿ると俺が作った料理が並べられた食卓を見ているようだった。
「これって……全部アキラさんが作ったんですか?」
「そうだよ?」
恐る恐る聞いてきたリントの問いに答えると、皆それぞれ違った反応を見せた。
フィックスは「すげえ!どうりで見たことないもんばっかだ!」と目を輝かせている。
ジャスタはといえば、呆けた顔して無言で料理を見渡している。
「張り切って作りすぎちゃったんだけど、まあ皆で食えばいいよね?」と俺が言ったとたん、二人とも待ってましたとばかりに席に座って料理を取り始めた。
「………いや、見た目だけでは判断できん。味が伴ってこその料理だ」
「………そうですね。見た目だけならどうとでもできますからね」
「なんでお前ら最初から疑ってんの?」
平気で失礼なことを言うシャーレイとフィオナに突っ込んでいるところに、ちょうどマリーも部屋に入ってきた。
「わっ、何これ?これみんなアキラが作ったの?嘘じゃなくて?」
「お前ら揃いも揃って素で失礼な事言うんじゃねえよ」
「「「お前が言うな!!」」」
ちょっと文句を言っただけなのに嫁3人が声を揃えて怒鳴ってきた。ひどい奴らだ。つーか言葉遣い変わってません?
嫁達の態度に心が傷付けられたその時、料理を食べていたフィックスとジャスタの二人を見ると、二人は食べ始めと比べてものすごいスピードで料理をかきこんでいた。
「うめえ!うめえよアキラ!!マジですげえ!荒野の一席にも負けてねえぞこれ!!!」
「ほんとにアキラさんが作ったんですか!?すごいです!ていうかフィックスさん、荒野の一席レベルって本当ですか!?僕行ったことないんでわかりません!!」
わーわー言いながら二人の手は止まらない。荒野の一席レベルとは誉めすぎな気もするがお口に合ったようでなにより。
嫁達は二人のリアクションを見た後にこちらの顔を見てきたので、鼻で笑いながらドヤ顔をしてやったら悔しそうに席に着いて料理を食べはじめた。
「嘘、本当に美味しい……!?」
「くっ、悔しいが確かに私達の料理とはレベルが違う……」
「これ、本当にうちにあった材料だけで作れるんですか……?」
3人とも格の違いを思い知ったようだ。俺の料理でこのリアクションなら日本の名店の料理とか食べたらどうなっちゃうんだろ?
ホントにに料理マンガみたいに服破けたりしない?
「すごいなぁ、カルボナーラに、フレンチトースト……この飲み物はミルクセーキですか?あとこれは……」
「それはパン粥な。パンを牛乳で煮ただけだよ」
「へえ~……なんでこんな料理作れるんですか?カルボナーラとか自分で作れる男の人初めて見ました。もしかして料理人だったとか?」
「公務員だっつってんだろ。お前それ本物の料理人に絶対言うなよ。俺ごときがおこがましいわ」
「その本気度がもう素人のそれじゃないんですけど……」
「いいからお前も食えよ。なんとなく察するに、こっちの世界でこんな料理なかなか食ってないだろ?」
「はい!いただきます!」
俺との会話を切り上げ、リントも嬉しそうに朝食を食べ始めた。久しぶりのカルボナーラに言葉を無くし、初めて食べるパン粥に目を見開いている。
リントがとても嬉しそうにしているのを見て、俺は元の世界で友達に飯を作ってやっていたことや、仕事場での食事作りを思い出していた。自慢になるが、正直料理には多少自信があるし、実際友達からも同僚や上司からも評判だった。
やっぱり自分の料理で人が喜んでくれるのっていいなあ……
リントが喜んでいるのを見て3嫁が悔しさと妬みの波動を俺に浴びせているのを確かに感じながら、俺は窓から顔を出し煙草に火を着けるのだった……




