第1話 痛みと出会い
私は今コードを書いている、1番やりたい音楽のコードじゃない、アプリ開発をする為のコード。なんのアプリかって?私が1番欲しかったアプリだよ。
「どうして私の左手は言うことを聞いてくれないの?」
私は市川麗舞、19歳、この4月から大学2年生の女子大生だ。今は普通に大学に通って、授業を受けて、友達と遊んだり、趣味のゲームや音楽に没頭したり、普通の大学生を演じて過ごしていた。
でも最近やりたいことが出来た、アプリ開発、それから作詞作曲。これらをやりたいと思ったのは思いつきだった。入院生活で何が1番苦しかったか考えた時、手術でもなくリハビリでもなく、孤独が1番辛かった。それで今も沢山孤独で苦しんでる人がいるんじゃないかって思った。だから孤独を共有できるようなアプリを作ろうって思った。それから、私は音楽が好きだ。正直音楽が無かったら私はとっくに自殺している。何回病気を恨んだか、何回左手麻痺を悔やんだか、正直もう覚えてない、でもそんな苦しい自分の傍にいつも音楽は居てくれた。そんな音楽を自分でも作りたいと思った。そして、自分で作ったアプリの中で自分の作った曲を聴いてもらえて、アプリを使った人の心を救うことができたらどれだけ素晴らしいことなんだろうと想像したら、私の行動に移す力には十分すぎるほど足りたのだった。
パソコンを右手と動かしずらい左手でタイピングする音が鳴る。
「あっ、またエラー、なんでここ治らないかな」
大学2年生になってから授業が終わった放課後は、こうして大学の図書館に足を運び、1人でアプリ開発を勧めることが日課になった。幸い情報学部に進んでいて、プログラミングには少し慣れていたけど、それでもやっぱり難しい。
「あー疲れた。なんか音楽聴こうかな」
スマホを手に取り、自分の1番好きな曲を流す。
1番好きな曲はOfficial髭男dismのSameBlue。大学1年生の6月、人生で初めてライブに行った。そこで元々好きだったSameBlueを生で聴いた時、そこで私は号泣してしまった。音楽の凄さ、音楽の力、それらが直接身体にぶつかってきて、本当に感動した。正直人生で初めて「生きててよかった」と心から思ったほどだ。それぐらい私の心に響いたライブだった。
SameBlueを聴き終わって、他の髭男の曲を流しながら、またコードを打ち始めた。
「朱音早く行くよー」
「はーい!今行くー!」
私は遠藤朱音、20歳、4月から大学3年生の女子大生。見ての通り普通に大学に通って、友達と次の授業へ向かっている。
「朱音〜、次の授業なんだっけ?」
「経済学だよ、8号館だから早く行こ?」
「サンキューれっつごー」
私は友達に隠していることがある。先天性心疾患、私は生まれつき心臓が弱い。小さい頃手術を何回かしてるけど、完治した訳じゃない、今も尚、疲れやすい、胸が痛くなる、といった症状はあるけど、なんとか頑張って大学に通っている。そんな私には趣味がある。読書。放課後は図書館で小説、または漫画などを読むのが日課になっている。今日は昨日買った最新巻の漫画を読むのが楽しみでうずうずしていた。
ただ、新学期が始まって2週間、毎日パソコンで何が作業をしている女の子が少し気になっていた。2年間図書館に通っている私だけど、見たことない子が新学期になってから、毎日同じ席に座って作業をしているからだ。たまに近くに座ってみたりもした。でも彼女は作業に夢中でこちらに気づいてる素振りは無かった。こちらも話す理由もないので、特に話しかけたりはしなかった。
家に帰ると今日読んでいた漫画がどこにも無いことに気づいた。
「無い、えー図書館に忘れてきちゃったかな、どうしよう、明日忘れ物なかったか聞きに行くしかないかなあ」
翌日
(うう、授業5限まであって図書館行くの遅れた、、)
「すいません、昨日「ささやくように恋を唄う」という本を読んでいたのですが、忘れてしまったみたいで、届いてませんか?」
「あ、こちらの本ですかね?」
「あ、それです!ありがとうございます!」
「あちらに座ってパソコンで作業している子が届けてくれましたよ」
(あ、あの子)
そこに座っていたのは新学期に入ってから毎日パソコンで作業している姿を見ていた女子生徒だった
(よしっ)
「すいませーん、ちょっとお話いいですか?」
イヤホンを外してこちらを振り返る
「えーっと、どうかしましたか?」
「あの!この本!届けてくれたのありがとうございます!助かりました!」
彼女は笑顔で「いえいえ、届いたなら良かったです」と返してくれた。そして私は少し彼女の笑顔に違和感を覚えた、顔が左右対称に笑えてなかったのだ。しかし初対面で聞く訳にも行かないのでそこには触れなかった。
「私、大学3年の遠藤朱音って言います!お名前聞いてもいいですか、?」
「私は市川麗舞って言います、私は大学2年生です」
「麗舞、素敵な名前ですね!麗舞ちゃんって呼んでもいいですか?」
「構いませんよ、遠藤さんってお呼びしますね」
「はい!」
「実は私毎日図書館通ってて、麗舞ちゃんのことよく見かけてたんです。毎日パソコンで作業してるな〜って、何してるとか聞いてもいいですか?」
「ああ、これはですね、ちょっと作りたいアプリ的なのがあって、それ頑張って作ってますね」
「え!凄!アプリ開発なんて出来るんですか!?」
「いやあの全く出来ないです、、笑本読みながら勉強中って感じです」
「でもそうやってやりたい事見つけて、行動に移せるのめっちゃ尊敬しちゃうなあ、ほんと凄いです麗舞ちゃん」
「あ、ありがとうございます。
遠藤さんは普段図書館で何されてるんですか?」
「私は毎日読書してます!本を読むのが好きで、もう図書館で毎日読むようになってから3年目突入ですね(笑)」
「ええ、それ凄いじゃないですか、そうやって1つのこと継続できるの簡単じゃないと思いますよ」
「まあ好きなことしてるだけなので(笑)そんな凄くないですよ(笑)」
「私も結構本読みますよ、ラノベか漫画ですけど(笑)」
「えほんとですか!?どんなジャンル読まっ」
図書館のチャイムが鳴り響いた
「閉館時間となりました、まだ残っている生徒は速やかに帰宅してください」
「あっ、もうこんな時間、話しすぎちゃいましたね(笑)」
「あの麗舞ちゃんさえ良ければまたこうやってお話しませんか?麗舞ちゃんと話すのとっても楽しくて、また話したいなって、あっでもアプリ開発もしたいだろうし、嫌なら全然大丈夫ですからね」
「いいですよ、お話しましょ、私も楽しかったです」
「ほんと!?やった、じゃあ図書館で見かけたら声かけますね!今日はありがとうございました!」
そう遠藤さんは言い残し、帰っていった
「私も帰るか」




