6ー3 迷宮
第4の鍵
《この先には、動くものは無いけどまた大きな空間が有るようよ。そこへ行ってみる?》
「ああ、そうしよう。」
リリアの案内で、その場所へ向かってみると、確かに巨大な空間が見えて来た。驚いたのは、その周りの壁だ。
壁の上へ向かって、居住するための物なのだろうか?窓や出入り口が開いた、部屋らしい場所が幾つも天井辺りまで出来ていた。地下都市と言ってもいいくらいだ。
所々にその部屋へ入る為だろうか、幾つか階段が見える。
この空間だけは、天井から明かりが漏れている。ぼんやりと明るくなっていた。
ここには、魔獣らしき生き物は居ないと言っていた。するとここが終点か?
此処へ入って来た通路以外は、通路が見当たらない。
それをリリアに聞くと、他にも通路は見えると言っている。それでは、どこかに隠し通路が有るのだろうか?
周りに見えている部屋らしい場所は、それぞれが独立しているようだ。部屋から部屋へは移動できない。そう言う部屋が50室くらいあった。
階段は4か所。一つずつ、調べる事にした。一人が一つの階段を上がって行って、その途中にある部屋を覗いて行く。
特徴のある部屋は無いから仕方がない。下から上まで、10の部屋が有った。新太が調べた部屋には何もなかった。
ところが、その最上階を調べ終わった時に、中央の階段を調べていたルネが声を出した。
「アラタさん、助けて!」
何事かと思い、一旦一番下まで戻ってまたその階段を上がっていく。美月も駆けつけて来た。ルネは、出入り口の所で固まっている。
見ると、部屋の土間に隙間がないくらいに、いや2重3重になって黒い蛇が蠢いている。中にはコブラのように、鎌首を上げて威嚇している蛇も居る。
それを見ると、色々な蛇が混ざっているようだった。中には毒を持っている蛇も居るのだろう。そして、その部屋の一番向こう側の隅に、あの石柱が立っていた。
新太がその蛇を踏みながら、歩いて石柱のある場所までたどり着いた。
部屋の大きさは15平米くらい。畳で8枚くらいの広さだった。
蛇は新太の足に絡みつき、咬みついている蛇も居た。そんな事には構わずに、石柱を持ち上げようとしたけれど、石柱は持ち上がらない。この蛇の大群をどうにかしなければだめのようだ。
「ラスボスにはしては、弱くない?」
新太が言うと《ラスボスって何ですか?》とルネが言う。新太はそれには答えずに
「この蛇、どうやって駆除しようか?」
と、独り言のように言った。
すると美月が
「駆除しなくても、全ての蛇をこの部屋から出してしまえばいいのではないでしょうか?よく見てみると、蛇は1匹も この部屋から出ていませんし出ようともしていません。それに、他の場所に蛇は居ません。」
と言う。そうかも知れないと、新太も思って思い切って蛇の群れを一抱えして、窓から放り投げた。
新太の顎の下で蠢く蛇や、顎や首に噛みつく蛇もいて気持ちのいいものではなかった。美月もそれに倣っている。ルネも勇気を出そうとしていたが、無理そうだった。
「いいよ、ルネ。無理しなくても。」
そう言って、二人は次から次へと蛇を抱えて窓から外へ出していった。
普通の人では、まず無理な所業に見える。考えようによっては、今までで一番危険かもしれない。ただ、新太と美月はそれを淡々とこなしていく。
何度繰り返しただろうか。ようやく、土間が見えて来た。何か蛇を入れる器が有ればいいのだけれど、そんな事は想定していない。
根気よく、排除していく。最後の数匹になった。新太は気力を振り絞って、その蛇の群れを掴み取ると窓の外へと放り投げた。
《はぁー》とため息をついた後で、あの石柱に取り掛かる。今度は簡単に持ち上がった。
「終わったー。4本手に入れた。」
新太が叫ぶと、二人とも拍手をしている。それを聞いていたリリアも
《よかったね、アラタ。》
と、シャトルから喜びを共有していた。
すると、何処からともなく、鈍い音がしてきた。
《ギギーっ》と言う音だ。何かの扉が開いたようだ。壁のあちらこちらを見回すと、今までなかった通路が現れている。出口が開いたのだ。
リリアに確認すると、外までは1キロもないという。まさしく出口に違いない、リリアに、その出口の外で待つように依頼した。
4本目の鍵の石柱を持って、シャトルへ戻るとアローまで行く事に決めた。ルネにもアローを共有させたい、と思ったからだ。それにアローなら、風呂もシャワーもふかふかベッドもある。
商都を立って、もう10日にもなっている。体に匂いも着いているだろう。
美味しい日本食にもあり付きたい。
アローに着くと、ルネは目を白黒させている。眼下の半球に見えている惑星が、自分の住んでいる惑星だとも理解できない。
部屋の設備も、便利な機械類も何一つ見た事もない。それでも、新太を信頼していたし仲間も出来た。新しい楽しみが出来たと喜んでいる。
ルネは美味しい食事を楽しみ、綺麗なベッドで横になれる幸福感を味わっていた。
2日はアローで過ごした。体力を充分に戻すと、いよいよあの場所に行く事にした。
《アルカント》と言う漁港の近くに有る、✖印の付いた巨人達がいた場所だ。
シャトルに乗り換え、その洞窟を目指した。
問題は、あの巨人だ。1体倒すのにも苦労した。それが10体も居る。
作戦は二人一組になって、1体ずつ倒していく。
他の巨人に気を付けながら、まずは足を狙う。棍棒には充分に気を付ける。そうして、倒れた所で心臓を刺していく。大まかには、そんな作戦にした。
それでも、想定外の事は起こる。その時の為に、ボーガンや液体窒素弾も用意していく。今まで対処した通りに、あの色々な魔獣たちと闘ったように戦えばいい。
新太とリリア、美月とルネの組にした。
その洞窟に着いた。装備を確認してシャトルを出る。
4人揃って洞窟の中へ入ると、途中で巨人たちが屯っていた。手に手に棍棒を持っている。
まずは気付かれないようにそっと近づき、4人とも、その頭の上を通過する。
新太がリリアの体を抱いて、一緒に空中へと飛び上がる。
そして、巨人の向こう側へと飛び降りた。美月に合図をして、美月たちも浮遊した。うまく行った。気付かれていない。
4人はそのまま、奥へと進む。あの大扉が目の前に現れた。バッグの中から石柱を4本出して、それぞれの紋様を確認しながらその穴に嵌めこんでいく。
4つの石柱が嵌めこまれても、大扉に変化がない。取っ手を引いても押しても、一向に開かない。学習したようでも、功を焦ったようだ。
あの巨人たちを倒さない限り、扉は開かないのだろう。最初に取り決めた作戦を、実行する事にした。巨人たちが屯している場所まで戻ると、美月とルネはその頭の上を飛び越えた。
新太の合図で、最初の一体ずつを倒すべく双方向から同時に仕掛けた。
新太と美月は、刀と剣で近くにいた巨人の足に切りつけた。新太の刀は巨人の足首を切り落とし、美月の剣はそのアキレス腱に突き刺さった。
二体の巨人は、同時に《ぎゃーっ》と言う声と共にその場へ倒れこんだ。
そこへ、作戦通りにリリアとルネの剣が心臓を狙って突き刺しに行く。
二体の巨人は絶命していった。最初はうまく行ったが、それからはそうはいかなかった。
巨人は足元を警戒していたし、棍棒も振り回してきた。棍棒は音を立てて体の近くを通り過ぎていく。それだけで風か巻いて、体のバランスが崩れる。
4人は、一旦洞穴の天井付近まで浮遊して難を逃れた。
巨人が棍棒を振り上げ、ジャンプすると天井が崩れて来る。何とかその攻撃をかわしていたが、何時までも続かない。
ルネは浮遊しながらも、ボーガンに矢を番えて発射した。その矢が巨人のこめかみに刺さった。痛さの為か、その矢を引き抜こうとしている。
その首の後ろを目掛けて、今度は美月が剣を突き刺しに行った。剣は首筋に突き刺さり、巨人は倒れた。
今度はリリアが《離れて!》と叫びながら、液体窒素の銃を構えている。
3人は、また空中へと逃れる。
リリアから窒素弾が発射されて、それに当たった1体と近くにいた1体の動きが止まった。
そこを逃さず、新太は空中から刀を降り下ろし、巨人の首を切り落とし、もう1体の巨人には、ルネが短剣を両手で持つと、真上から脳天に逆落としを掛けた。
短剣は脳天に刺さり、ドサッと言う音と共に巨人は倒れて行った。
巨人はあと5体になった。
4人は揃って地上へ降りると、リリアが窒素銃を撃ち、ルネはボーガンを続けざまに放って行った。洞窟内は急激に寒くなった。
2体の巨人は動かなくなり、他の2体もボーガンの矢を取り外そうともがいている。
その隙を狙って、美月は剣を胸元へ刺しに行き、新太は足首を落としに行く。
こうして4体の巨人も倒れていった。残りは1体のみ。一番大きな個体が残った。またリリアが窒素銃を構えたが、新太はそれを制止した。
この個体だけは、正面から戦って倒したい。そんな気持に溢れていた。それが美月にも伝わったのだろう。
ルネに目配せして、新太に任せよう、という事になったようだ。
巨人は、憎悪の目を新太に向けている。棍棒を振り上げ、一気に新太目掛けて振り落としてきた。新太は、それを左に移動して避けた。
そこへ、巨人の拳が襲う。新太は避けきれずに、まともに拳に打ちのめされた。
壁に打ち付けられ、立ち上がれずにいる新太に、巨人の足が踏みつけて来た。
新太は踏みつけられながらも、その足の裏へ刀を突き刺した。
勢いで刃は刺さったが、根元から刀は折れてしまった。
新太に武器はなくなってしまったが、巨人も足の裏に刀が刺さり起き上がれずに横向きになっていた。巨人は何とか折れた刃を引き抜くと、その足を庇いながらも新太に襲い掛かった。
その時に、美月の長剣が新太の傍に投げてよこされた。新太はその剣を持つと、巨人の肩の上へ飛び乗り、荒れ狂う巨人の後ろ首へその剣を突き立てた。
巨人は目を剥いてその場に倒れ、二度と立ち上がらなかった。
新太は、巨人の体の上で座っていた。
そして右手の親指を立てて、苦笑いをしたのだった。
美月もリリアもルネも、意味が分かったのかどうか、同様に親指を立てていた。
続きは明日。 至宝




