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ヴェルソレクト  作者: 高野翌
第九章
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第二百八十三話 『駆ける想い』

 翔英が本部へと侵入した頃。


 本部右側にある、『魔子の間』では――――


 今回戦闘には参加していなかったロジェ。

 そして、皆の帰りを待っているファンドル。

 二人が話していた。 


 「…………どうしたの? ファンドル」


 突如黙りこくったファンドルに尋ねるロジェ。

 ファンドルは一点を見つめながら、何かを感じている様子だ。


 「……一人帰って来ましたね……。……この位置は……レウラか……」


 「あっそうなの? 結構早いね」


 渡していたスペアが破壊され、帰ってきたことを感じていた。

 一番左端に戻ってきたことから、使用者はレウラだと分かる。 


 「他の皆はまだ?」


 「……はい。レウラだけですね」


 「……ってことは、向こうではまだ戦ってるってことだよね? ……負傷して戻ってきたって可能性ない?」


 「……あいつのことですから、ただ飽きたって方が高いんじゃないですか……?」


 「……確かにそうだね。……でも、一応心配だから見に行ってくるよ。あっちだよね?」


 「……はい。送りましょうか?」


 「いや、いいよ。歩いてくよ」


 「了解です」


 治療専門のマイヤールはヒナノを止めに出ている。

 いないよりはマシ程度しか回復出来ないロジェだが、念のためレウラの元へ向かった。


 ※※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


 ――――舞台は戻り、中央本部『アビテルム』。


 「……よし、二人はここで休んでて。私は行ってくるから」


 強敵との戦いを終えたばかりのティローナとラフェルを休憩室へと運び終えたヒナノ。

 二人をゆっくり寝かせ、自身も戦場に参じようとする。


 「……ヒナノさん……!! 俺も行くよ……!! 俺も、みんなの役に立ちたい……!!」


 「ありがとう、ラフェル君。でも、貴方はまだ休んでて。魔物の気配もかなり減ってきている。今は、数にこだわる必要はないわ。私一人で大丈夫」


 「…………分かったよ」


 せっかく助けてもらったこの命。

 無駄にすることは決して許されない。

 ラフェルは素直にヒナノの制止を受け入れる。


 「……ヒナノ……。気をつけてね……」


 自由に動くことすら出来ない程の重傷のティローナ。

 顔を持ち上げながら目を向け、飛び立とうとするヒナノを見送る。


 「ええ。また後でね、ティローナ」


 彼女の方を振り返り、ヒナノは言葉を返した。

 必ず、再会する約束を立てながら。


 外へ出たヒナノは、自分が行くべき場所を詮索する。

 

 一つか二つか。

 やはりもうほとんど邪悪な気配はしない。

 ただ、でかい気配がまだ一つだけ残っている。


 「(……あっちね……)」


 その場所。

 東の方に行くことを決めるヒナノ。 

 全力で身体を飛ばした。


 直後。


 「あっ!! ヒナノさん!!!」


 誰かに呼び止められた。

 

 「……貴方……ルンベくん……!!」


 ヒナノを呼び止めたのは、ルンベ・ランだ。


 翔英と別れたばかりのルンベ。

 仲間に情報を伝えようと、誰かを探していた。


 「ヒナノさん!! お伝えしたいことが!!」


 「どうしたの!?」


 ルンベが伝えたのは、敵が移動に使っていた手段。

 それの利用方法。

 そして、翔英が一人、扉を潜り旅立ったこと。


 「……本当なの……!? ルンベくん……!!」


 「……はい……!! まずヒナノさんに伝えられたのは幸いでした……!!」


 「……ショウエイくんが…………。……でも、ありがとうルンベくん。確かに、ここで貴方に会えたのはラッキーだわ」


 ルンベの話を聞いたヒナノは目的地を変更。

 先程まで、ティローナ達が戦っていた場所へと戻ることにする。


 でかい気配と戦っているのはおそらく、ヴァナベールだ。

 あの人なら別に心配いらない。


 むしろ、心配なのは――――


 「(ショウエイくん……!! どうして一人で……!!)」


 彼の方だ。


 だが、彼の気持ちが分からないわけではない。

 むしろ、よく分かる。


 彼は、ミネカを助けるために行ったのだろう。

 彼は、そういう男だ。


 それでも、一人で行かないで欲しかった。

 自分たちを頼って欲しかった。


 「……ルンベくん。私はそれを探しに行くわ。一つ心当たりがあるから」


 「分かりました……!! では私は、他の方にも知らせて来ます……!!」


 別れる二人。

 

 ヒナノはマビュート戦の跡地へ。

 ルンベはヒナノが向かう反対方向へと走っていく。


 ヒナノの目的はもちろん、スペアの回収。

 そして、自らもそこへと飛び込んでいくこと。


 「一人で死んだら許さないわ……!! ショウエイくん……!!」


 目一杯飛ばすヒナノ。

 彼の無事を祈りながら、後を追うための道具を探しに向かう。


 ※※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


 そして、中央本部のある場所。

 小さな戦い。


 リュノンとミワルナ。

 

 「……はぁっ……!!!」


 「……危ねっ……!!」


 変わらずリュノンを削り取ろうとするミワルナ。

 それを紙一重で回避し、反撃の目を狙い続けるリュノン。


 「っっつっ……!!! とっとと死にやがれ!!! カス野郎っ!!!!」


 憎しみを込めた連撃。

 リュノンが回避した場所は、次々と跡形もなく散りになっていく。


 「くそっ……!! これじゃあ町が……!! しょうがねえ……!!!」


 崩壊する景色を見て決心するリュノン。

 回避は続けながら、三体分身を作り出した。


 リュノンが分身魔法を使うのを躊躇った理由。 

 リスクが高すぎるから。


 ミワルナのあの力が人間をも消滅させる場合、分身が一体でも喰らったら即ゲームオーバーになる可能性が高い。

 それに、分身無しでも回避に体力を使う。

 それが数倍になるのは、一気に寿命を縮めてしまう。


 だが、リュノンは分身を解禁した。


 このチマチマとした戦い方では、確実に先に限界が訪れると判断したからだ。


 「……えっ……!? なによそれ……!!?」


 「お前を倒す力だ……!!!」


 四体同時に仕掛けるリュノン。

 それぞれが絶妙な距離を取り、異なる方向から攻撃に向かう。

 一気に全員を視界に入れることは不可能だ。


 「ちっ……!! ふざけた技だわ……!! でも、あたしの前じゃただのつまらない芸ね!!!」


 一番近いリュノンに腕を振り下ろすミワルナ。

 

 だが大体のタイミングは見切っているリュノン。

 難なくそれを回避する。


 「こっちでしょ!!?」


 すぐに別のリュノンに繰り出すミワルナだが、


 「こっちだよ!!」


 「ええ!!?」


 さすがに三体同時攻撃は防げない。


 ミワルナの顔面にダブルパンチを与えた。

 

 「ぎゃっ!!」


 「ここしかねえ!!」


 ミワルナが怯んだ隙。

 短剣を持ったリュノン本体が、ミワルナの胸を突き刺した。

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