第百二十六話 『救出部隊』
――――翔英とレランカが本部を訪れる、数時間前のこと。
本部では、ある大きな事件が起こっていた。
「――――大変です!! ヴァナベールさんっ!!!」
「どうしたんじゃ? そんなに慌てて」
息を切らしながらヴァナベールの元へと走って来た人物。
聖鳳軍四軍のサツヤ・グルだ。
「……ミネカさんが病室から姿を消しています!!!」
「……なんじゃと!!?」
ミネカが消えていた。
彼女には常に誰か一人が付きそうようにしていたにも関わらず。
サツヤはその者と交代で警護を行っていた。
時間になったので病室へと向かうサツヤだが、そこには誰もいなかった。
その付き添いをしていた人物も一緒に消えてしまっていたのだ。
ヴァナベールはすぐに軍全体にこの事態を共有した。
そして、報告を受けたマーノ・ジャッロが病室付近を調べた結果、何者かが侵入していた痕跡が発見された。
その痕跡は東の方角に続いていた。
マーノは「おおよその場所は特定できる」と宣言。
これを受けたヴァナベールは、ミネカの後を追うために、少数精鋭の救出部隊を結成した。
大人数にしなかったのは、ただ数を増やせばいいというものではないこともあるが、敵の正体が分からない以上、本部をがら空きにするのは危険と判断したからだ。
ただし、救出部隊のメンバーは確実に任務を達成できるだろう顔ぶれとなった。
まず、『ヒナノ・スエリア』
事態を耳にした彼女は、すぐにメンバーに名乗りを上げた。
これ以上、ミネカを危険に晒すわけにはいかない。
愛弟子は自らの手で、必ず助け出すと誓った。
救出部隊のリーダーを任されたヒナノは、信頼する人間たちに声を掛けていった。
少数精鋭ということなので、声を掛けたのは四人。
まず、互いに唯一の同期で親友でもある、聖鳳軍一軍、『ティローナ・カルダート』
事態を聞いた当時ティローナはヒナノと一緒にいたこともあり、彼女はすぐに向かうことを決める。
自身に並ぶ実力者の同行に、ヒナノは期待を寄せた。
さらに実妹、『ソル・スエリア』
ヒナノがティローナと同じぐらい信用している自慢の妹だ。
ソルは話を聞いたときはひどく驚いていた。
しかし、ソルはすぐに同行を望む。
いつもなら自信がないと断っていたかもしれないが、ミネカの危機とあってはそんなことは言ってられない。
『あの戦い』に、ソルは後からの参戦になってしまった。
「私がもう少し早く行っていれば」
そう思わなかった日はない。
だから、「今行かないでいつ行くの」とソルは決断した。
また、ヒナノから戦力として声を掛けられたことも、ソルの闘志を滾らせた。
次に、現在は二軍に昇格している、『リュノン・アーリー』
ヒナノがリュノンを選んだ理由。
それは、一人で数人分もの働きが見込めるからだ。
性格的にもリュノンがいるのは心強い。
そして、同じく二軍、『フェルフラム・ボンバ』
偶然、近くにいたこともあり、この男にも声を掛けた。
突出した力はないが、ヒナノは彼の強さを信頼している。
彼の底力を。
ヒナノを加えた以上五名は、マーノの導きによりミネカが連れ去られた場所へと向かった。
※※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「――――じゃあ行くわよ……!! みんな……!!」
メンバーに声を掛けるヒナノ。
他の四名の戦士たちは頷き、前方にいる二人が重苦しい色合いをした扉に手を掛ける。
「よし、開けていいわよ。リュノン、フェルフラム」
中心の女性に指示を出された二人は、響くような鈍い音を立てながら扉を開いた。
そして、五人は建物の中へと足を踏み入れていく。
中には、何もない。
何もない空間が広がっている。
一番向こうには真っ赤なドア。
侵入者たちは、ミネカがいるのはさらに上の階だと感じ取った。
「――――気を付けてね、何があるかわからない」
ここは敵地だ。
チームのリーダーとして、注意を促すヒナノ。
「……あそこから上にいけるかもしれないっすね。よし、俺が先行します」
メンバーでは最もスピードに自身を持っているリュノンが駆け出した。
一刻も早く、ミネカの無事を確認するために。
だが、
「うわっ!!」と、リュノンが声を挙げる。
ドアの向こうから、見るからに弱そうな魔物が一体顔を見せたのだ。
――――速攻。
リュノンは、短剣で敵に一撃。
攻撃はクリーンヒットし、魔物は地に崩れた。
と、思いきや、倒れた魔物はすぐに立ち上がり、リュノンを入口へと投げ飛ばす。
「……ちっ……!! 浅かったか……!!」
「大丈夫!? リュノン!」
「もちろんですよヒナノさん……!!」
再びメンバーに合流するリュノン。
五人は、立ちはだかる魔物に戦意を向けた。
「悪く思わないでね。ゆっくりしている時間はないから」
五対一。
だが卑怯とは言わせない。
五人は一気に戦闘態勢へと移り、目の前の魔物に敵意を向けた。
――――しかし、
「――――おいおい!! 暴れるのはまだ早いだろ!? 聖鳳軍の諸君……!!」
そんなヒナノたちに対して、上空から声が聞こえてきた。
だが、姿は見えない。
その声の主は、
「――――まずは、いらっしゃいと言わせてもらうよ。『僕の家』に」
と、ひどく元気な様子で告げた。




