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ヴェルソレクト  作者: 高野翌
第六章
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第百二十六話 『救出部隊』

 ――――翔英とレランカが本部を訪れる、数時間前のこと。

 本部では、ある大きな事件が起こっていた。

 

 「――――大変です!! ヴァナベールさんっ!!!」


 「どうしたんじゃ? そんなに慌てて」


 息を切らしながらヴァナベールの元へと走って来た人物。

 聖鳳軍四軍のサツヤ・グルだ。

 

 「……ミネカさんが病室から姿を消しています!!!」


 「……なんじゃと!!?」


 ミネカが消えていた。

 彼女には常に誰か一人が付きそうようにしていたにも関わらず。

 サツヤはその者と交代で警護を行っていた。


 時間になったので病室へと向かうサツヤだが、そこには誰もいなかった。

 その付き添いをしていた人物も一緒に消えてしまっていたのだ。


 ヴァナベールはすぐに軍全体にこの事態を共有した。


 そして、報告を受けたマーノ・ジャッロが病室付近を調べた結果、何者かが侵入していた痕跡が発見された。

 その痕跡は東の方角に続いていた。


 マーノは「おおよその場所は特定できる」と宣言。

 これを受けたヴァナベールは、ミネカの後を追うために、少数精鋭の救出部隊を結成した。


 大人数にしなかったのは、ただ数を増やせばいいというものではないこともあるが、敵の正体が分からない以上、本部をがら空きにするのは危険と判断したからだ。


 ただし、救出部隊のメンバーは確実に任務を達成できるだろう顔ぶれとなった。


 まず、『ヒナノ・スエリア』

 

 事態を耳にした彼女は、すぐにメンバーに名乗りを上げた。

 これ以上、ミネカを危険に晒すわけにはいかない。


 愛弟子は自らの手で、必ず助け出すと誓った。


 救出部隊のリーダーを任されたヒナノは、信頼する人間たちに声を掛けていった。

 少数精鋭ということなので、声を掛けたのは四人。


 まず、互いに唯一の同期で親友でもある、聖鳳軍一軍、『ティローナ・カルダート』

 事態を聞いた当時ティローナはヒナノと一緒にいたこともあり、彼女はすぐに向かうことを決める。

 自身に並ぶ実力者の同行に、ヒナノは期待を寄せた。

 

 さらに実妹、『ソル・スエリア』

 ヒナノがティローナと同じぐらい信用している自慢の妹だ。


 ソルは話を聞いたときはひどく驚いていた。

 しかし、ソルはすぐに同行を望む。

 いつもなら自信がないと断っていたかもしれないが、ミネカの危機とあってはそんなことは言ってられない。

 『あの戦い』に、ソルは後からの参戦になってしまった。

 

 「私がもう少し早く行っていれば」

 そう思わなかった日はない。


 だから、「今行かないでいつ行くの」とソルは決断した。


 また、ヒナノから戦力として声を掛けられたことも、ソルの闘志を滾らせた。

 

 次に、現在は二軍に昇格している、『リュノン・アーリー』

 

 ヒナノがリュノンを選んだ理由。

 それは、一人で数人分もの働きが見込めるからだ。

 性格的にもリュノンがいるのは心強い。

 

 そして、同じく二軍、『フェルフラム・ボンバ』

 偶然、近くにいたこともあり、この男にも声を掛けた。


 突出した力はないが、ヒナノは彼の強さを信頼している。

 彼の底力を。


 ヒナノを加えた以上五名は、マーノの導きによりミネカが連れ去られた場所へと向かった。


※※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ 


 「――――じゃあ行くわよ……!! みんな……!!」


 メンバーに声を掛けるヒナノ。

 他の四名の戦士たちは頷き、前方にいる二人が重苦しい色合いをした扉に手を掛ける。


 「よし、開けていいわよ。リュノン、フェルフラム」


 中心の女性に指示を出された二人は、響くような鈍い音を立てながら扉を開いた。


 そして、五人は建物の中へと足を踏み入れていく。


 中には、何もない。

 何もない空間が広がっている。


 一番向こうには真っ赤なドア。

 侵入者たちは、ミネカがいるのはさらに上の階だと感じ取った。


 「――――気を付けてね、何があるかわからない」


 ここは敵地だ。

 チームのリーダーとして、注意を促すヒナノ。


 「……あそこから上にいけるかもしれないっすね。よし、俺が先行します」


 メンバーでは最もスピードに自身を持っているリュノンが駆け出した。

 一刻も早く、ミネカの無事を確認するために。


 だが、


 「うわっ!!」と、リュノンが声を挙げる。

 ドアの向こうから、見るからに弱そうな魔物が一体顔を見せたのだ。


 ――――速攻。

 

 リュノンは、短剣で敵に一撃。

 攻撃はクリーンヒットし、魔物は地に崩れた。


 と、思いきや、倒れた魔物はすぐに立ち上がり、リュノンを入口へと投げ飛ばす。


 「……ちっ……!! 浅かったか……!!」


 「大丈夫!? リュノン!」


 「もちろんですよヒナノさん……!!」


 再びメンバーに合流するリュノン。

 五人は、立ちはだかる魔物に戦意を向けた。


 「悪く思わないでね。ゆっくりしている時間はないから」


 五対一。

 だが卑怯とは言わせない。


 五人は一気に戦闘態勢へと移り、目の前の魔物に敵意を向けた。


 ――――しかし、


 「――――おいおい!! 暴れるのはまだ早いだろ!? 聖鳳軍の諸君……!!」


 そんなヒナノたちに対して、上空から声が聞こえてきた。

 だが、姿は見えない。


 その声の主は、


 「――――まずは、いらっしゃいと言わせてもらうよ。『僕の家』に」


 と、ひどく元気な様子で告げた。

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