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ヴェルソレクト  作者: 高野翌
第五章
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第百八話 『解放の時』

 ――――ユウビ登場。

 そして彼の手は、レランカが探していた『薬』を握っている。


 「――――はい、ジュン君。これ、大切なものなんでしょ?」


 ユウビはその薬をジュンに手渡した。

 その様子を見ていたレランカは、驚きを表情に表す。


 「……お前、何でこいつを持ってきてくれたんだ……? ……全く読めねえぞ」


 レランカが疑問の声を挙げた。

 

 見知らぬ少年が薬を取り戻してくれたこともそうだが、この町は全員スリーラに付いていると思っていたから。

 スリーラの邪魔をする人間なんて、一人もいないと思っていたから。


 そんなレランカに対して、ユウビは簡潔に説明を始める。


 まず、ユウビは先ほどのジュンの様子を陰から見ていた。

 大人たちに囲まれながらも、必死に泣き叫ぶ彼の姿を。


 会話の中で、あの袋がジュンの大切にしているものだと知ったユウビ。

 そんなユウビは、ジュンに対して『ある気持ち』があったことから、彼のために袋を取り返したいと考えた。


 偶然にも、袋を持って行った人間は、ユウビの父親だった。

 彼の父親は自宅に薬を置くと、一旦そこから目を離した。


 当然だ。

 誰かが入ってくるのを見張っている必要なんてない。

 ジュンがこの家に入ってくるわけがないし、この家に薬を持ち出す人間なんているはずがないのだから。


 ――――しかし、いた。


 放置されていた薬をユウビは回収。

 誰かに見つからないように、ジュンの元へと送り届けたのだった。


 「――――ありがとうユウビ!! 本当にありがとう……!!」


 「いや……僕の方こそ、ありがとう……」


 「あ……? 何でユウビが俺に礼を言うんだよ」


 「……だって、ジュン君は……初めて僕と遊んでくれたし………それに……僕のためにあんなに怒ってくれたんだもん……!! だから……!! もう一度会って、ちゃんとお礼が言いたかったんだ……!!!」


 ユウビはジュンと別れてからというものの、ずっと頭を悩ませていた。

 

 本心から自分のことを思って感情を爆発させてくれる友達なんていなかった。

 あんな別れ方なんてしたくない。

 

 もう一度、ジュンと鬼ごっこがしたい。女傑シリーズを読みたい。

 もう一度、ジュンと話したい。


 そう思っていたユウビは、ジュンがここを出てしまう前に、彼に礼を言おうと思っていた。

 そんな中見たのが、彼の落ち込む姿。

 

 『友達を助けたい』『会ってお礼を言いたい』


 という思いが込み上げて来たユウビは、彼を助ける決心をしたのだった。


 「――――ジュン、ユウビ……!! お前ら、最高だぜ!!!」

 

 ユウビの敬意を聞いたレランカは、二人を抱き寄せてそう叫んだ。

 

 ジュンとユウビ。

 二人の少年の偶然の出会いが、レランカ達の窮地を救った。

 

 「――――だが、まだ安心はできねえ。こいつを急いで残った奴らに飲ませねえと」


 ユウビが対象外だということも分かった。

 残っているのは十人ちょっと。

 さあ、彼らにどう会おうか。


 と、そこへ何人かの住人たちがレランカの元へ出てきた。

 薬が紛失していたことに気づいたのだ。

 

 そして、レランカが握っている袋に目を向ける。

 その後ろにいる、ユウビの姿にも。


 「――――な、なぜそれを持っているんだ……それになぜユウビがここに…………まさか……!!」


 父親が言葉を言い終わるまでに、レランカが動く。

 彼女はユウビの首を軽く締め、


 「……はっ……!! このガキのおかげで薬が取り戻せたぜ!! このガキを返して欲しけりゃ、薬を飲んでもらうぜ!!」


 と、告げた。

 そして、ユウビに耳元でささやく。


 「……た、助けてみんな……!! この人に殺されちゃうよ……!!」


 ものすごい悪人面をしているレランカにガチでビビりながら、町人たちに助けを求めるユウビ。

 ジュンは唖然としながら二人を見ている。

 

 レランカは「そんな怖がらなくても」と、内心ショックだ。


 「……まさか貴様……ジュンを脅してその薬を奪ったのか……!! 外道め!!」

 

 「ああ外道でもなんでもいいからさ。さっさと飲んでくれや、これ」


 二人の芝居を真に受けた町人たちに、残りの薬を渡そうとするレランカ。

 騒ぎが聞こえた他の人たちも顔を出し、「なんだなんだ」とやって来た。


 「……なぜだ……!! なぜそんなにそれを飲んでほしいんだ……!!」


 「……だから言ってんだろ。この町の病気を治すためだってよ。こいつを飲めばその病気が治るんだ。悪いもんじゃねえよ。副作用で、少し眠りについちまうみたいだが」


 「……やはり分からない。そこまでして飲ませる意味が……」


 「見てられねえからだよ!! 病気に侵されていくお前らの姿を!!」


 レランカは吠えた。

 その言葉に、嘘偽りは微塵もない。

 その目に、曇りは一つもない。


 ユウビの事もある。


 父親は前に出て、レランカの持つ薬を受け取った。


 「――――分かった。では飲もう。君の言葉を信じるわけではないが」


 口に入れた。

 そして、男は眠りに着いた。


 「ほらほら!! お前らもだ!! 全員受け取りやがれ!!!」


 後ろで見ていた残りの者たちに声を掛けるレランカ。

 断れば無理やりにでも放り込んでやる。

 そんなことを思いながら。


 だが、観念したのだろうか。それとも、レランカを見て思う事があったのか。

 残りの連中は全員大人しくレランカから薬を受け取った。


 そして――――


 この町の全ての住人が、眠りについたのだった。


 「――――よし……!! これで……!!!」


 ひとまず、任務完了。


 仕事を終えたレランカは、協力してくれた二人の少年に声を掛ける。


 「ありがとよ。ジュン、ユウビ。アタシはこれからここを少し出る。お前らは、ゆっくり休んでくれ」


 急いでケバローの元へ行き、現状を報告しなくては。

 レランカは、また洞窟へと向かって行く。


 ジュンとユウビは、自分たち以外の人間が一人も起きていない異常な町に残された。


 「……ねえ……ジュン君。みんなは大丈夫なんだよね……? ジュン君もレランカさんも優しい人なのは分かってるけど、ちょっとこの状況は怖いよ……」


 「うん、大丈夫だよ。俺もよく分からないけど、レランカさんもショウエイもお父さんも、この町のために何かと戦っているみたいだったから。だからきっと、みんなが帰ってきたら、また元に戻ると思う」


 「……そっか。そうだよね……!!」


 自分が取った行動。

 友達のためとはいえ、さすがにこの状況では不安もあるユウビ。


 だが、レランカが言っていたことを信じることにしたようだ。


 「そうだユウビ。お互い一人になっちゃったし、今日は俺と一緒に寝ようよ」


 「え……!? うん、分かった!!」


 二人の少年は、ジュンが泊っている部屋へと帰っていった。


 他愛もない話をした後、二人は自分の意思で眠ることを決めた。

 ユウビは翔英が使っていた布団を借りることにしたようだ。

 布団に入った後もしばらくは談笑していたが、いつの間にか眠りへと落ちた。


※※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


 場面は戻り、全ての住人に薬が服用される少し前。

 メデュン東の洞窟では。


 最強とも評されている大男が、瀕死の状態となっていた。


 「――――ほんっっとうにしぶとい方ですわ!! これだけ攻撃をしてもまだ倒れないなんて……!!」


 ファイティングポーズを取る青髪の少女が、目の前で立ち尽くす男に呆れた言葉を掛ける。


 既に常人なら何回死ぬか分からないほどの連撃を受け続けてきたケバロー。

 彼はもう、声を出すことすらしんどくなっていた。


 「――――ですが、もう限界が近いのはまるわかりですわ!! これで終わりにしましょう!!」


 青髪の少女・スリーラがトドメを刺そうとケバローに迫る。

 しかし、その時――――


 スリーラに異変が起こった。

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