2-2(5)殻装ができるまで②
「漆葉クンはその事件で台頭して貢献したわけだけど、本部としては『ご苦労様』という程度でね。正直キミのことは当初興味なかったんだよね!」
「そのまま興味なくてよかったのに…………」
「ハハ! 個人的には短期間で妖魔撃破に貢献した青年が気になってね。妖魔出現頻度から見ても調査と殻装の実験を併せて行えるから来たわけだよ。それに、朝緋クンのいた街だし」
「あー、博士も知ってるんすか」
あまり聞きたくない名前に、つい反応してしまう。
「そりゃあそうさ! そもそも殻装のコンセプトは『土地神の負担軽減』だからね。彼女は働きすぎと指摘は何度も受けていたはずだよ! 本来は妖魔対策課の職員ではなく、最初は土地神に…………そしてその後一般職員に着てもらいたかったんだよ。まぁ、結局一番つけて欲しかった妻には来てもらえなかったけど」
白神夕緋は理想の着手だったのか? 身軽さを考えるといらなかった気もするが。
「白神朝緋は、着なかったんですか?」
博士はゆっくり頷く。
「《《可愛くない》》、ってね、断られちゃった!」
なんともメチャクチャな断り方である。
「妻の一件もあって、殻装の普及はボク達親子には急務でね! 一種の使命なんだが、どうにも定着しない。土地神は自分のスペックを過信するきらいがある。身を守り、そして動きを補助する殻装さえあれば助かった土地神の命はいくつもあった!」
急に饒舌になった博士に肩を掴まれる。そしてグラグラと揺さぶられる。
「漆葉クン!」
「は、はい、なんでしょう?」
「今回のテストは殻装の実戦配備には欠かせないものだ! そのためにも白神クンと娘の涼香のこと、しっかり見ててくれたまえ!」
「ど、努力します…………」
みんな、何か忘れていないだろうか?
絶不調なのは土地神もなんだが。
花は芽が出て確実に伸びている。ゴミも相変わらず拾っている。
なのに、力は戻らない。いや、別にこのまま戻らなくてもいいんだが。
と、悩みを逡巡させていると支部内に放送が流れる。
『市内でサルが出現! 手の空いている者は至急現場に急行してください!』
一間置いて、博士の手がスッと離れる。興奮を抑えるためか、コーヒーを一口。
「ともかく、あの二人だけだとバランスが悪そうだからね! 間に入ってうまく取り持ってほしいな!」
ほしい、というよりやってくれだろうに。
なんだが態度を取り繕うのもバカらしくなってきた。
「………はいはい、わかりましたっと」
無理矢理甘ったるくしたコーヒーを一気に飲み干し、耳に通信機を装着する。両頬を一発叩き、気合を入れる。
「はぁ…………やるだけやりますよ、博士」
「頼んだよ、漆葉クン!」
サル退治に向かう前に、とりあえず殻装の指導をしている、受けている二人の少女へ通信を繋いだ。
「白神、涼香────サル退治だぞ!」
今はとにかく白神に調子を戻してもらうしかないか。あの二人、ちょっとは和解したのか?
『涼香さん、見ててください! 今の指導してもらった成果、見せてあげます!』
『期待していますが、とりあえず服を着てください』
あの二人、何してたんだ?




