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ミミックボランティア 留年妖魔と偽りの土地神少女  作者: ムタムッタ
Chapter 1 留年妖魔の帰郷

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1-1(2)天敵・白神夕緋②



(なっ…………)


 無理やり一歩踏み出すと、強制的に二歩後退させられる。そのままズルズルと捨てた缶の位置で止まった。再び缶を拾うと、脱力した。


(なんだ、なんなんだ? ゴミ拾わないと動けなくなる呪いか!)


 状況はまったく掴めないが、解決のヒントは提示されている。しかし………このまま片手に持ち続けるのも嫌である。


(うーん……)


 あんぐりと口を開け、缶を口の中へ入れる。丸のみはせず、強靭な顎と歯で噛み砕く。味はなく、粉々にしたところで呑み込む。


(なんか複雑)


 擬態を長くしていたからか、普段ヒトが口にしないものを食べるというのは奇妙に感じる。……まぁ、妖魔もアルミ缶なんて食わないけど。ただ食べたところで周囲を見渡すとまだ缶以外のゴミがチラホラ。結局身体はまた重くなった。


(チッ……こうなりゃやってやるよ!)


 解決の糸口がとりあえず見つけられたのは確かなので、手っ取り早く目に見えるゴミを貪り始めた。土まで食っていると、パトカーのサイレンのような警報音が接近してきた。やがて音は公園の近くで止まり、人の気配が多数。そしていつの間にか、俺がライトアップされた。


「こちら対策班Aチーム、通報のあった現場にて妖魔を確認。これより目標を対処にあたります!」


 背後から聞こえたのは若い女の、子供の声。振り返った先、蒼い金属の鎧を身にまとった小柄な人間がこれまた青白い両刃剣を片手に、腰には時代遅れの日本刀を差して現れた。


(やべ、人間じゃん)


 しかも沢山。昼間駅に駆け付けた服装の人間が俺を取り囲んでいた。


「目標を捕捉、黒蜥蜴で間違いありません!」


 間違いないって……確かに妖魔ですけども。昼間の奴じゃないぞ! 弁明しようと両手を上げるが、胸に数発銃弾が撃ち込まれた。鉛弾は空しく地面に転がった。


(なっ……こっちが無抵抗なのになんて失礼な!)


 胸部に残る鈍い感覚を手で払いのけ、正面に視線を直す。蒼い鎧姿の隣に、同じく小柄な、銀髪の少女が煙を立てる自動小銃を構えていた。


「……銃弾が効かない!」

「サナさん、下がって! 前に出ます!」


 蒼鎧が両手で剣を振り上げ、俺に迫る。勢いに押され後退してしまい、間合いまで詰められる。


「もらったぁぁぁぁあ!」


 下から刃が襲い掛かる。右の掌で受け止める。身は裂かれることなく、鉄塊を握り砕く。


(こいつ……昼間に俺を助けた女と同じか!)


 あどけない少女の姿がフラッシュバックする。しかし眼前で構えているのは明確に殺意を持ったヒトだ。


(俺はお前らの敵じゃねぇっつーの!)


 再び両手を上げる。急いでこの場を脱出しようと思案するが、一瞬のうちに両手の手首から先が切り落とされた。


■■■(うっそ)――」


 痛覚はない。腕から黒い液体が溢れる。突然の出来事に呆けてしまう。得物を失ったはずの少女は、否、一つ目の得物をなくした少女は二振り目の日本刀を握りしめていた。


「くらえェッ!」


 月夜に照らされ、刀が鈍く輝く。少女の絶叫とともに、刃が振り下ろされる。


(えぇ────)


 こんなあっさりやられるのかよ!

 頭の中が真っ白になったが、頭の上で甲高い金属音が鳴り我に返る。


「なっ──」

(あれ……生きてるぅ!)


 刀は頭を切り裂くどころか輝きを失って弾かれた。頭を触ってみるが、傷一つついていない。


「土地神様、下がって! 全員撃てッ!」


 サナ、とかいう女が叫ぶ。鎧の少女が跳躍し間合いから離れると、周囲から一斉射撃を浴びる。先刻の斬撃とは打って変わって豆鉄砲だった。


(チャンス、今逃げるしかねえ!)


 銃撃の雨が止む前に、咆哮を轟かせ銃弾の飛来する出どころへ突っ込む。同士討ちを避けるため射撃が止まったところで大きく地面を蹴り上げる。


■■(くそ)■■■■■(なんなんだ)……」


 車が追いかけてきているが、俺が民家を飛び移る方が数段早かった。それにしても、偽物を追っていたらずいぶん災難な目にあってしまった。


(う………なんか胃もたれしそう)


 腹をさすろうとするが、肝心の手がないことに気づく


(久々だからできるかな……)


 両腕に力を込める。すると、コンマ数秒の間に手が完全に復元される。いや、生えたというべきか。


(あーあ。明日から大丈夫か?)


 思考しても疲れるだけか。

 とりあえず考えることをやめ、自宅へ逃走を急いだ。



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