1-2(5)車上激戦!③
「はいはい………」
右耳の通信機のボタンを押し、起動する。
『漆葉君? 一体どうなっているの! 現在の状況を説明して!』
白神が切り込む。黒蜥蜴(偽)は正中線上の斬撃に対して、右足を軸に身体を逸らして避けた。
「自分と白神を含めた隊員と共にゴミ拾い中に黒蜥蜴の襲撃があり白神が応戦中です。乗客は列車後部に避難させてます」
『わかりました。できる限り白神さんのサポートをするように!』
「りょーかいです!」
武器はないし、土地神の力の出し方もわからず更に元の姿に戻ることもできない今できるのは本部との中継のみだ。元の姿に戻れば刀を奪う絶好のチャンスといえばあながち間違いではないが。
「現在碧海北に向かって走行中。早めの応援をお願いします」
開発に便乗して新たに作られたこの鉄道は環状型になっている路線である。碧海市ならどこかしらから応援もはやくよこせるはず。でないとむしろ困る。
『わかったわ。急ぎ周辺及び本部の人間を出撃させます。今回は人命が最優先です、いいわね?』
了解と返事をして黙る。あとは応援が来るまで距離を取るだけだ。と、そんな呑気な気分いた時、電車が川の上の橋に差し掛かった瞬間だった。
「ふん、威勢がいいだけで隙だらけだ!」
白神の連撃をすべてかわした妖魔が白神を再び蹴り上げた。
「く、こいつ──!」
白神は痛みに耐えつつ反撃するが、逆に妖魔から追撃を受けて体勢を崩した。
「落ちろ!」
妖魔が左腕を上げる。片膝をついたまま白神が無防備だった。妖魔はその刹那を見逃さない。奴の左腕が振り下ろされる。
「シラガミっ!」
どうしてそんな行動をしたのか、後になってもわからなかった。
流れすぎる風景が、もう一度スローになる。両足で電車を踏みつけ、前に向かって跳躍する。咄嗟に前に出て白神の腕を掴み、後ろへ放り投げた。
「きゃぁっ」
空き缶でも放ったように白神は後部車両に飛んだ。そこまでは良かった。
本来白神に直撃するはずだった妖魔の左腕が、俺の腹部に直撃。
「なっ」
妖魔の左腕はそのまま空へ向かい、俺の体を上空へ飛ばす。擬態では耐えられない力に抵抗するまもなく、青空に向かって吹き飛ばされた。
「うぉわぁっ!」
一瞬中を浮いたかと思えば、妖魔がサッカーボールよろしく、そのまま俺を虚空に向かって蹴り飛ばし、下の川まで一直線。
「漆葉さん!」
電車との距離が垂直に離れる中、白神の無事は確認できた。
何とかあの偽物を倒してくれ……などと思案しつつ、頭から川へ突っ込んだ。




