ゴッドが現れた。ぬっころしたい。 ②
♢7♢
ゴッドをどーしても、ぬっころしたい。
儂は魔王だけど世界の平和のために。
こんなロリコンが生きていていいはずがない。
「だからー、ボクが好きなのはキミだけなんだって。他の女の子になんて興味ないよ☆」
そう言いながらゴッドことクソヤロウは、列をなす女の子にサインを書いている。
女の子たちから、キャーキャー、言われている。
死ねばいいと思う。どっちも。
「こちら、ご注文のジャンボパフェになります。どちらのお客様でしょうか?」
「彼女に。ボクはコーヒーだけでお腹いっぱい。胸もいっぱいなんだ」
「──っ! イケメンすぎる。はっ、失礼しました。ごゆっくりどうぞ」
「ありがとう。いつも悪いね。彼女はここしか付き合ってくれなくてね」
「ご贔屓にしていただきまして、こちらこそありがとうございます!」
ここは職業屋の真ん前のカフェ的なところ。この店はテラス席がある。
職業屋の中が大惨事なので追い出された。
クソヤロウのせいで。えっ……儂じゃないよ?
「それ食べないのかい? あーん、ってしてあげようか?」
「スプーン持ってる、指ごと食いちぎってもいいならやってみろ」
「はい、あーん」
「──やんなよ! 躊躇えよ!」
「えー、いいじゃないか。じゃあボクに食べさせて」
ゴッドの言葉を無視してパフェを食べよう。
さっさと食べて、さっさと帰ろう。
──美味しい!
「確認だけど、本当に勇者をぬっころしたのかい?」
「あんな遊び人を寄越してなにを言ってる。儂に出会わずとも全滅に決まっているわ!」
「そうだねー。彼らでは道中で終わっていてもしょうがない」
「流石はクソヤロウ。人の命は数でしかないか。やっぱり死んだ方がいいぞ。お前は」
「ボクは何も強制していないよ? 勇者になったのは彼だし、マオのところに行くと決めたのも彼らだ。勇者は人材不足。猫の手も借りたい状況なんだよ?」
「全部、お前のせいだけどな?」
クソヤロウが界を量産するからだからな。
120の国と地域ではなく、120の世界が存在する。
頭悪い。どうかしてる。ゴッドやりたい放題。
「人間が多いのはいいことだよ? 何ごとも少ないよりは多い方がいいに決まってる」
「ふーん。その分、魔王も増えて勇者足りないとか草生える。人間に詫びて神やめたら? そして儂にぬっころされたら?」
「そう思うなら他の魔王を駆除してよ。マオなら余裕でしょ?」
「その代わりに界がなくなってもいいならいいよ? ここ以外ぜーんぶ、ぶっ壊してもいいならな!」
「ボク、他の神に怒られるよ。それに中央だけじゃ人口を抱えきれないんだよ?」
「だからー、お前が界を増やした結果だろうが! ポンポン、ポンポン作りやがって! 許可とかどうなってんだ!」
なんで、誰もこのバカを止めないんだ?
みんなでぬっころそう?
そうしたら残機減るし、儂も幸せ。
「許可なんて取ってないよ? 全部、事後報告だよ。星を作ってから、他に知らせて世界の出来上がりさ☆」
「……それでいいのか? そんなんばっかなのか神は。もしや、全員お前みたいなクソヤロウなのか?」
「概ねそうかな。あんまり揉めないし、反対もされないからね」
なんてこった……。
神は全員こんなやつなのか。知りたくなかった。
「ただね、魔王たちには手を焼いているね。キミたちは強すぎる。一界では抱えきれないんだ。どうしたって受け皿が必要になる。それが数多の世界なんだよ?」
「──知っとるわ! 何年、魔王やってたと思ってんだ!」
「気になってたんだけど、隠居して中央にいたのに、なんでまた戻ったんだい?」
「畑を作りたくなった。無農薬野菜を作りたい。だだっ広い土地だけはあるし、好きに使っていいらしいからな。あと、クソヤロウの顔を見なくて済むと思ってたのに! 二度と見たくなかったのに! あー、ぬっころしたいわー」
「……意外だ。そんな趣味があったなんて。壊すのが得意なキミが、何かを作りたいなんて……。こんなに驚いたのは久しぶりだよ」
確かに、真顔になるのは珍しい。
勇者が遊び人だったくらいには珍しい。
「そのまま驚きすぎて死ねばいいのに」
「手伝いに行っていい?」
「いいわけねーだろ! 絶対来んなよ! もし顔を見せたら、本当にあの世界ごとふき飛ばすからな!」
「四割くらいダメにしたんだろ。魔王くん泣いてたよ? いくら勇者相手でもやり過ぎだよ」
「……えっ。お前ら連絡とり合ってるの?」
「マオのことは何でも知りたいからね☆ 彼は今や魔王だし、仲良くしていて損はないしね」
こいつきもちわるい。
もうゴッド無視して、パフェ溶ける前に食べよう……。
そしてあの魔王も今度来るって言ってたし、来たらシメよう。
ゴッドと仲良くしてるとか。許されないから、魔王的に。