魔王をシメる! ②
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魔王をシメました。ボッコボコにしてやった。
大事なグラサンは粉々に、グラサン部下たちのグラサンも粉々に。少し調子にのっていたようなのでちょうどいい罰です。
「「──すいませんでした!」」
魔王および部下たちは全員が反省の態度を示しているので、これで許してやろうと思う。
ここまでボコられるとは考えつかなかっただろう、ざまぁ。
とりあえず家に上げ、茶の間で話をしている。
テーブルを挟んで儂と魔王。その後ろに互いの子分たち。
魔王陣営は入りきらないので、子分たちの大半は縁側に立っている。
「分かればいい。何も命まで寄越せとは言わん。ただ、お前も頑なじゃな。魔王くん」
「畑の件は申し訳ないと思ってますが、神の件は別件だ。オレにどういう付き合いがあろうと、先代に口出しされるいわれはない。魔王はオレだ」
「……言うようになったな、小僧が。もう一回泣かせてやろうか? 本当にちょーしのんなよ?」
「隠居は口出しすんなってんだ。それに、魔王力の無いアンタじゃ、オレには勝てねーよ」
あっ、そんなこと言っちゃうんだ。
死ぬほど手加減してやってるのがわからないのかな? この小僧は。
「吐いた唾は飲めんぞ。そして、ごめんなさいしても許さないからな?」
「上等だ、ババア。こないだも世界を壊しやがって! あの一件の苦情は全部オレんとこに来たんだからな! そのことに文句も言わず、折り菓子持って挨拶に来たのに、──ふざけんな!」
「よし、表に出ろ。二度とそんな舐めた口が聞けないように教育してやる。魔王力なんて無くても、魔王をぬっころすくらい余裕だと思い知らせてやろう! 死んで後悔しろ」
「もう手加減無しだ。いつまでも自分が最強だと思ってんなよ。吠え面かかせてやる」
両陣営とも誰も間に入れない。たとえ、これから世界が引き裂かれるんだとしても。
「やめろ、これ以上はやめろ! めちゃくちゃになった畑を誰が直すんだ? 俺たちだろ! ──それこそふざけんな!」
1人を除いては。
「なんだ。テメェは……」
「勇者、黙ってろ。畑はもちろんお前らが直す。しかし、この小僧も放ってはおけん。だいぶ増長しているようだし口も悪い。割って入ってくる辺りは流石だが……クソ雑魚は黙っとれ!」
メンタルが鋼の勇者は平気で割り込んでくる。
自分たちの仕事を増やされてはたまらないという理由でだ。
「勇者? ……言われてみりゃ確かに勇者力がある。低すぎて気づかなかった。アンタこそどういうつもりだ? 勇者を囲ってどうしようってんだ」
「魔王力の無い一般人が何をしようと関係なくない? いちいち口出ししないでくれる? それとも勇者に倒される?」
「こんな雑魚にやられるか。出来るもんならやってみろ!」
「よし! こいつをぬっころして討伐金ゲットだ。ギリギリまで弱らせるからトドメだけさせ」
「卑怯だぞ! そんなやり方が認められるか!」
これで終わりじゃな。魔王をぬっころして、ここをお菓子の国にしよう。まさに灯台下暗し。
「安心しろ。お菓子の国で雇ってやる。工場長のポストをくれてやろう」
「まさか……こないだのアレを本気にして、勇者に魔王を倒させようなんて思ってんじゃないよな?」
「正解だ。お手頃なヤツを探すつもりだったが手間が省けた。貴様を倒しこの世界を頂く!」
絶えずお菓子を量産する工場からお菓子を供給する。お菓子の国を、お菓子の国らしくするために。
魔王並びに部下たちは工場で働いてもらおう。限りなくブラックな企業だが、儂を怒らせた報いだ。
「──はい、2人ともそこまで。パパはどうせ勝てないんだからやめて。マオちゃんも魔王より魔王みたいになってきてるからやめて。2人とも私に免じて仲良くしてね?」
そんな台詞を言いながら女の子が縁側から現れる。
「「お嬢!」」
女の子は儂と同じくらいの身長。赤毛の女の子。
お人形さんみたいな装いと、人を惑わす魅力を感じさせる女の子。
「誰だか知らないが、今更そんなこと言って止まるわけが……」
勇者が最もらしいことを言う。確かに、この険悪な空気をなだめられるわけがない。
「「──じゃあ、仕方ないな」」
「えー、魔王が2人とも席に戻った!」
「ほら、あなたたちは畑を直しに行って。パパは私が見ておくから。ポチとタマはそこにいてね?」
いつの間にか、手なづけられているポチとタマは大人しくお座りしている。
「どこぞの小僧より娘の方がちゃんとしてるな? どうなのパパ的に? 情けなくないの?」
「マオちゃんもやめてってば! パパはマオちゃんのことになるとすぐにムキになるんだから」
「……えっ。こいつもロリコンなの? 魔王なのに……」
「──紛らわしいことを言うな! サクヤ、わざとだな!」
この娘はサクヤ。この魔王の娘。
前に会った時よりずいぶん成長した。これが成長期か。
「しばらく見んうちにデカくなったな。今日はどうしたんじゃ?」
「えー、決まってるじゃない。マオちゃんに会いにきたん・だ・ぞ?」
参りました。もう降参です。
ズキューンと心をやられました。
「何この子。ちょー可愛い。魔王くん、この子ちょうだい!」
「可愛いのは知ってるが、誰がくれるか。誰にもくれてやる予定は無い。悪い虫は現れる端から消してやる」
その気持ちは分かる。
「……あの子スゴイわね」
「あぁ、スゴイな……」
「「魔王より強い!」」
戦々恐々としていたアンに、スケさんカクさんもサクヤの魅力にやられたらしい。仕方ない。
「それじゃ、2人とも仲直りの握手して。ケンカするためにきたんじゃないんだからね」
「悪かったよ。お前が魔王だ」
「オレこそ。先代の神嫌いは知ってたのに……」
儂らは言われるままに握手する。
サクヤはそれをニコニコしながら見ていて、不意に外に振り返る。
「チョロ……」
「「────!?」」
何故だか勇者たちが驚愕の表情を浮かべていた。儂と魔王は意味が分からず顔を見合わせる。




